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第19話

納豆菌にやられるような私たち
 逃げたい一心でフェンスに背中を押しつける。

 ダメだ!フェンスはガタガタ言うだけで私に都合よく動いてはくれない!

 というか、動かれたら物理的に死んじゃう!カナァ!
早見悠香
早見悠香
やめて本当にどうしたの歌ってって言ったことは謝るからどいて死んじゃう命がなくなる!
 屋上に連れてこられてすぐに、伊織に追い詰められてこの状態フェンスドンになった。
徳武伊織
徳武伊織
落ち着いて俺の質問に答えてくれ
早見悠香
早見悠香
無理無理フェンスから落ちちゃうもん死んじゃうから無理伊織どいて私死んじゃう!
 自分でも何を口走っているのか解らない。ただ伊織とフェンスのガタガタが怖い。
徳武伊織
徳武伊織
わかったよ、俺が悪かった
徳武伊織
徳武伊織
退くけど俺から逃げないでくれよ?
 伊織がフェンスから両手を離して、二歩下がった……隙に逃げようと走り出したら、見事に左腕を掴まれた。

 振り返ると伊織がものすごく睨んでる。ははは、身体が正直でごめんね☆
早見悠香
早見悠香
だってフェンスのガタガタ(と伊織)怖かったんだもん!!
徳武伊織
徳武伊織
それは悪かった。けど……
 伊織が俯いた。捨てられる寸前のペットのような哀愁を漂わせながら。
徳武伊織
徳武伊織
悠香ってさ、俺に何を求めてんの?
徳武伊織
徳武伊織
俺が歌ったりペンラ振るの嫌がるのに、いざやめたら歌ってくれって
徳武伊織
徳武伊織
俺は悠香にどんな態度とりゃいいんだよ
徳武伊織
徳武伊織
わかんない、わかんねーんだよ……
 伊織の頭に犬耳がたれてるように見えてきたよ。もはや一介の萌えキャラだよ伊織。

 そんな態度、伊織に一番似合わないよ。
早見悠香
早見悠香
伊織、その、なんていうか……私に振り回されてない?
早見悠香
早見悠香
前にさ、伊織がここで言ってくれたこと、覚えてる
 俺は、悠香が楽しそうに生きてるほうが嬉しいってだけだ。
早見悠香
早見悠香
今度は私がその言葉を返すよ
早見悠香
早見悠香
けどなんで、私なんかの言葉に左右されるの?おかしいよ
 暖かい風が屋上を吹き抜けてゆく。伊織は俯いたままだ。
徳武伊織
徳武伊織
俺がなんでお前に左右されるかわかるか?
早見悠香
早見悠香
……わかんない
 その方が楽だから、わかんない。

 それを深く考えたら私たちは、オタななじみではいられなくなる。

 そんな予感に心が支配された。
徳武伊織
徳武伊織
俺はお前が憎いよ、悠香
 伊織はそれだけ言い残して屋上から去った。

 暖かい風は吹き続けているけれど、私の心は冷たくてぐちゃぐちゃででろでろだ。

 泣きそうなのをぐっと我慢した。



 × × ×



 翌日、伊織は私に挨拶もしなくなった。RICEでもブロックされてしまった。納豆同好会参謀部からも消えた。

 猛烈に寂しいけれど、怖くて声をかけることができない。

 私たちはもう既に、普通のオタななじみではなくなってしまった。



 × × ×



金剛地零哉
金剛地零哉
徳武のヤツ、俺への断りもなく参謀部を抜け、活動をサボタージュするなど……
金剛地零哉
金剛地零哉
チーズのごとき貧弱さだ!納豆菌にやられるようなヤツなど、俺の会社にはいらない!
 金剛地先輩はお怒りだ。ごめんなさい、全て私のせいです。
早見悠香
早見悠香
カナァ……(どうしよう……)
 でも死んだ語彙力をよみがえらせる気力が今はないんです、本当にごめんなさい。
金剛地零哉
金剛地零哉
……日曜の納豆博物館は俺と早見の二人で向うしかないか
 え?今なんて言いました?え?

 私の聞き間違いであってほしいのですが、え?