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第20話

過去にならず、笑えない
 はぁ、納豆系夏焼じゃなくて金剛地先輩と二人で納豆博物館の見学ですか。

 伊織という友人最後の砦を失った先にあるのは、先輩との納豆博物館見学でしたか。
早見悠香
早見悠香
カナ……(友人じゃなければ、デートになるのかな……?)
 デート的なものなら伊織とやったけど、デートはしたことがない。

 っていうか同好会の活動で異性と納豆博物館にいくのをデートと定義するのか、リア充様もどきにすらなれなかった私にはわからんよ。
金剛地零哉
金剛地零哉
早見、俺との外出に緊張するというのであれば、俺にも考えがある
 あ、もしかして見学中止ですか?でしたら大変ありがたいのですが……。
金剛地零哉
金剛地零哉
1か月分のバイト代をはたいて買ったはいいが使いどころがなかったこいつがようやく日の目を見るんだな
金剛地零哉
金剛地零哉
……サングラスだけにな!
 金剛地先輩は嬉々として、カバンからフチもレンズも茶色いオーバルタイプのサングラスを出した。

 どう見ても納豆です。本当にありがとうございました。



 × × ×



 来てしまった日曜日。

 風邪とか言って逃げれば良かったのに、集合時間十分前に待ち合わせ場所にいる私。

 何やってるのカナァ……?
金剛地零哉
金剛地零哉
早見、今更だがお前の家はパン屋やチーズ工房や酒の醸造所だったりしないよな……?
 全身茶色の上に納豆サングラスまで装備した金剛地先輩が、挨拶すらせずそんなことを聞いてくる。

 状況が混沌としていて、いつものカナァすら口から出てこないカナァ……。

金剛地零哉
金剛地零哉
納豆菌は強すぎる故、それらにも強い影響を及ぼしてしまう
金剛地零哉
金剛地零哉
つまるところ奴らは納豆の下位互換だ。完全なる敗北者だ。俺の行動は徳武のような敗者を生み出す
金剛地零哉
金剛地零哉
早見、お前は俺と納豆の覇道についてこれるか?
 しかもなんかわけわかんないこと言い始めたし。いつものことだけど。

 納豆博物館行くのにそんな覚悟が必要なんですか?

 私は口を開かず……っていうか開けずRICEに書き込んだ。
早見悠香
早見悠香
博物館に行きましょうよ
 金剛地先輩は高笑いする。

 格好だけ見るとファッションセンス最悪の芸能人だ。道行く人がこっちに向けて携帯掲げてる!やめて!
金剛地零哉
金剛地零哉
そうか、皆まで言うなという話か。早見、お前は俺のベストパートナーだ
金剛地零哉
金剛地零哉
納豆で言えば醤油やカラシと言ったところか
金剛地零哉
金剛地零哉
しかし豆板醤とうばんじゃんやごま油も捨てがたいな……
 博物館正門にはかの有名納豆ゆるキャラ、ネヴァールさんの銅像が建っていた。

 まさかこんな所でも伊織(が描いた胡乱うろんなゆるキャラ)を思い出させるとは。

 藁をかたどったアーチをくぐり、博物館内へ入った。
金剛地零哉
金剛地零哉
素晴らしいな!これが納豆産業の歴史が綴られた石碑か!
スタッフ
お客様、館内ではお静かにお願いします
金剛地零哉
金剛地零哉
うむ、失礼した
 全身茶色……もとい納豆色の金剛地先輩が、納豆をかたどった石碑に近寄っていく。

 内心帰りたいな、と思いつつ私もついていって石碑に刻まれた文字を眺める。
金剛地零哉
金剛地零哉
……!
 金剛地先輩が両手で口を押さえた。大きく目を見開いて、顔を真っ青にして震えている。
金剛地零哉
金剛地零哉
……早見、俺は先に外に出る。お前だけでも楽しんでいけ
 言うだけ言って、金剛地先輩は足早に館外へでていった。

 その後ろ姿が儚く美しすぎて、私は声をかけることができなかった。カナァ……。

 しかし、これで私の口先の語彙力は回復してゆく。
早見悠香
早見悠香
金剛地フーズ……?
 残された私は仕方なく、石碑の一文を目でなぞる。そこには確かに金剛地フーズと刻まれていた。

 三年生の勧誘の時に「金剛地 検索」で出てきた記事にあった、あの会社の名前。

 あのときの不快感がこみ上げてくる。私は金剛地先輩の後を追い、館外へ出た。