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第32話

ドルオタVS納豆、学校頂上決戦 序
 伊織から、唇に、キス。

 ものすごく、ものすごく恥ずかしい……。

 でも幼馴染なんだからやめて、なんて当然言えなくて。
徳武伊織
徳武伊織
これ
 伊織は私にすっとペンラを差しだした。
徳武伊織
徳武伊織
お前が応援してくれるなら俺はいくらでも勇気を出せるから
徳武伊織
徳武伊織
だから、受け取ってほしい
 そんなことしなくても。
早見悠香
早見悠香
私は、その、伊織ってすごく……
 勇敢だと思うって言おうとして、口を噤む。

 今の私が伊織の勇敢さを称えるのは、自分の卑怯さからの逃げだ。

 もっと深いところ……本当の気持ちを少しでも見せないと私は多分一生このままだ。
早見悠香
早見悠香
……ううん、ペンラは伊織が持ってる方が良いよ
早見悠香
早見悠香
私は、そういう伊織の方が、好き
 緩んだ伊織の手からペンラがするりと落ちた。

 腕に引っかけたストラップのおかげで、コンクリートの床に落下することもなくぶらぶら揺れる。
徳武伊織
徳武伊織
今、なんて言った
 伊織が頬を染めながらも、少しかがんで私の顔を覗き込んでくる。
早見悠香
早見悠香
な、何度も言うわけないじゃん!
 私は伊織に背を向けた。屋上を出て、恥ずかしいけど教室に帰った。



 × × ×



 自分がした恥ずかしい叫びの結果に耐えて耐えて耐えて、漸く放課後が訪れた。

 クラスメイト達の好奇の視線は今に始まったものじゃない。

 ……金剛地先輩が教室に来なければここまで加速しなかっただろうけどね!視線痛すぎ!
徳武伊織
徳武伊織
今日は金剛地先輩と二人で話がしたいんだ。……わかるよな?
 伊織は納豆同好会の活動場所もとい生徒会室に来ないでくれと遠回しに告げた。

 だからって自分の身に起きた問題を放置して家に帰るのはさすがにありえない。だから。
金剛地零哉
金剛地零哉
ふん、漸く納豆同好会に帰ってきたか、徳武
徳武伊織
徳武伊織
このペンラに誓って、それはありません
徳武伊織
徳武伊織
これ以上悠香につきまとわないでくださいと言いに来たんです
 立ち聞きすることにした。

 マナーが悪いのは百も承知。今更手段なんか選んでられない。
金剛地零哉
金剛地零哉
つきまとってなどいない、あいつは俺のなっ友だ
金剛地零哉
金剛地零哉
この茨城産藁納豆に誓って、俺は早見を幸せにする!
徳武伊織
徳武伊織
……話が見えません。先輩はなぜ……その、悠香にプロポーズを
 おそらく真っ赤になっているだろう顔を両手で覆う。

 改めて本当に変な状況だよね、今。

 リア充になりたいって言ってたときはなんとなくキラキラした女の子に憧れてただけだったのに、行き着いたのは生徒会長にプロポーズされて、幼馴染には遠回しに……こくはく、されて。
金剛地零哉
金剛地零哉
ふん、決まっているだろう?俺の理想を叶えるためだ
金剛地零哉
金剛地零哉
そしてあいつこそ覇道を行く俺の妻にふさわしい
金剛地零哉
金剛地零哉
そういうことだ
 多分これも世間一般で定義するリア充の一種なんだろうけど、いざそんな立場になると、苦しい。

 南風野さんボイスでこういうこと言われるの、二次元男性からだったら単純に嬉しかった。

 でも、現実でそういうことを言われると、私は萌えることも受け止めることも出来ない。

 伊織の勇敢さを称えるんじゃない、自分が勇敢にならないと意味ない!
徳武伊織
徳武伊織
悠香の気持ちは聞いたんですか!
金剛地零哉
金剛地零哉
……俺があいつを振り向かせれば良い、それだけのことだ
徳武伊織
徳武伊織
金剛地、零哉……!
 伊織の声が震えている。怒りとか悲しみとか、そういった負の感情を堪えるように。
早見悠香
早見悠香
たのもぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!
 矢も楯もたまらず、私は生徒会室に乗り込んだ。