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第36話

反逆のキュウツー
 伊織は指と指の間全てに黄色ペンラを挟んでいる。

 俗に言うバルログだ。何するんだこのオタななじみ。
徳武伊織
徳武伊織
グラウンドの皆さん、今日は妙な催しに付き合わせてしまって申し訳ないです
徳武伊織
徳武伊織
でもあともう少しだけこの茶番に付き合ってください!
徳武伊織
徳武伊織
行くぜ、ロマンティックマージン!
 は!?伊織お前今ロマンティックマージンっつった?言ったよな??

 それは私の魂の一推し、カナこと夏焼奏君のソロ曲じゃないですか。
徳武伊織
徳武伊織
悠香は俺に楽しいことを沢山教えてくれたんだ!
徳武伊織
徳武伊織
この曲に乗せて、それを伝えてやる!
 伊織が足下に置いた携帯から爆音でロマンティックマージンのイントロが流れる!

 伊織は土下寝のポーズを繰り出す!多分グラウンドからは見えてない!
徳武伊織
徳武伊織
ハイッ!
 かけ声と共に伊織は飛び起き、腕で大きな弧を描くオーバーアクションドルフィンを繰り出す!

 リズム感だけは滅茶苦茶良いな!なんでピッチは取れないんだろうね!
徳武伊織
徳武伊織
あ~~~~~なづがごげっる~~~~~~!
 って、お前が歌唱するのかよ!OADにTKGを混ぜながらブレッブレの歌声をまき散らす。

 空はどんどん曇って、ペンライトの軌道だけが美しくここにある。

 頼むからカナの曲だけは!カナの曲だけは!!
早見悠香
早見悠香
かのうせいぶちまけってー!みちつくってすすむっよーお!
 どうせカナが穢されるなら私が穢してやる!

 伊織が大きく十字架ロザリオを打ちながら一瞬、私を振り返ってにっと笑う。

 ……あれ、もしかしてこれ、計画通りってヤツですか?
早見悠香
早見悠香
こんなことがしたかったーわけじゃないー!なんていうけどー!
早見悠香
早見悠香
ほんとはちょっとちょっとカ・ナ・り!!!うっそっついてるー!
 サビの直前、伊織の長い手足で魅せるニーハイオーハイ、曇天を衝く四度のソイヤがキマる!

 汗を纏いながらもキレの良い動きで8本の光を操る伊織が不意に格好良く見えて、心が跳ねる。

 ……そんな場合じゃない!ここからがサビだ!
早見悠香
早見悠香
どーーーーしーてカ・ナーーー!こころはいつもここにあってー!すなおにおれにかたりかけるのにーー!
早見悠香
早見悠香
こーーーーれでさいごカ・ナーーー!なーんーてーおもえばすこししょうじきに!くちからでてきてくーれーるーカナー!!
 伊織がサビを盛り上げるようにぐるぐるとサンダースネイク、大きく腕を振り回してグングニールを交互に打つ!

 曇りに曇った空は私たちに雨を落としてくる。

 バルログに斬られた雨に黄色い光が灯る!
早見悠香
早見悠香
ああああああああああ!すきだなんてーこぼれたらーしんじゃうけどーぉ!
早見悠香
早見悠香
うううううううううう!こぼれたらーーそれがきっとー!おれらのはじーーーまりーーーーーーぃぃぃ!!!!
 カナを穢しきった。サビが終わる。

 アウトロに合わせて伊織は力いっぱいのOAD、アクセントとしてロサンゼルスを打つ。

 最後に土下寝して伊織のパフォーマンスは終わった。だからそれグラウンドからは見えないから。
徳武伊織
徳武伊織
みんな!ありがとう!!!
 立ち上がって伊織が叫ぶ。雨だというのにグラウンドから聞こえる歓声がすごい。私は賢者タイムに入る。

 もうどこにも帰れないんだな、私。
徳武伊織
徳武伊織
悠香も歌ってくれて嬉しかった!
 あっ、ハイ。そうですか。
徳武伊織
徳武伊織
言葉は余計かもしれない。でも俺のMCにも付き合ってほしい
徳武伊織
徳武伊織
お題は……そうだな、悠香への気持ちだ
 お前アーティスト気取りやめろよ。

 言いたいけどこれ以上事態をややこしくしたくないから黙った。