ハイパーリア充妹、藤花の巧みな……っていうか強引な誘いで、私と藤花と伊織と金剛地先輩で食卓を囲むことになってしまった。
今日ほど我が家の広さを呪ったことはない。4人入っても余裕でスペースがある我が家のダイニングキッチン。絶対に許さない。
これだからリア充様はよぉ!私たちの間に流れる気まずい空気に配慮するとか一切ない。
っていうか、頭がお花畑すぎて気付いてないみたいだ。
学校だとそこが可愛い、和む、とかって評判になるあたり、この子はやっぱ生まれついてのリア充様なんだよなぁ……。
私は一言もしゃべれなかった。語彙力以前に本当に何を話していいのかわからない。
伊織の「憎い」発言とか、金剛地フーズの件とかが頭の中でカラカラ回ってる。回るだけで明快な解決策は何一つ組み上がらない。頭の出来の悪さを思い知らされる。
こういうとき藤花だったら微笑み一つで全て解決しちゃいそうなのが、本当に腹立たしい。
泣けてきた。なんで私はそうじゃないんだろう。
リア充様は金剛地先輩に振り向いて、微笑みの爆弾を投げた!だが、金剛地先輩には炸裂しなかった。
金剛地先輩がいなかったら、私の胃がストレスでお亡くなりになっていたかもしれない。ありがとう金剛地先輩。
金剛地先輩は納豆色のシャツをたくし上げ、思いっきり腹部を露出した。な、なんてことを!
……皆さん既にお察しかと思われますが、アレだ、自作納豆だ。
でも!でも!そんなことより!うっすらと腹筋が見える引き締まったお腹。
……カナァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!
カナ?カナカナ?カナカナカナ?
……カナ?……カ……ナ……。
× × ×
気がついたら、何かかたいものの上に頭があった。なんだか居心地が悪い。
身体は柔らかいものに沈んでいる。こちらは身体に良くなじんで心地いい。
歌は上手いのに最悪なセンスの歌詞だ。顔の上から聴こえる。あと、耳元で何かがグーグー鳴ってる。
つまり、私の頭の下にあるのは……金剛地先輩の……太もも……。
あなたのせいなんですけど!とは言えなかった。口先の語彙力が死んでる。
場所は私の部屋のソファだった。っていうか!なんで私の部屋なんですか!
ポスター!カレンダー!ポストカード!アクリルスタンド!クッション!抱き枕!……添い寝カバー。
カナグッズだらけの!私の部屋!なんですか!
そして、なんで隣からこんなに不愉快な会話がきこえてくるんですか……?
これは悪夢ですか?
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。