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第3話

伊織がいて、私がいる(納豆同好会に)
金剛地零哉
金剛地零哉
徳武伊織、なんとか悠香、お前達の名前を納豆同好会名簿に記載させてもらう
 私の名字はなんとかではないんですが。
早見悠香
早見悠香
いい
 口先の語彙力がまだ死んでいる。
徳武伊織
徳武伊織
ゆ、悠香!?
 伊織が立ち上がって、私の両肩を掴んで揺らす。頭の中がかき回されるような感じがした。

 それ以上に、無難な味のジュースが入った胃がかき回される、これはまずい。
早見悠香
早見悠香
う、うっぷ……
徳武伊織
徳武伊織
ゆ、悠香……
 伊織が私の肩から両手を離し、私の背中をさする。本当に何でこういうときだけ察しが良いの。
金剛地零哉
金剛地零哉
さて、早速RICEで連絡をとれるようにしようではないか
 納豆イケメン改め金剛地さんが、滑らか、かつ高貴さを湛えた美声で話を進めていく。何この人、何度聞いても良い声。

 伊織は金剛地さんに鋭い視線を向ける。
徳武伊織
徳武伊織
俺のアカウントだけで良いでしょう?
金剛地零哉
金剛地零哉
何を言っている。そこのなんとか悠香もだ
早見悠香
早見悠香
うっ……い、いい……
 私はなんとかではなく早見悠香です。と言おうとしたはずだったのに、口先の語彙力は未だに死んでいる。

 伊織が信じられない、といった表情で私の顔を覗き込んだ。凄く良い顔が、近い。


 × × ×


 結局、私と伊織は金剛地さんとRICEのアカウントを交換してから帰路についた。

 伊織と二人の帰り道、私の口先の語彙力は回復しつつある。

 もしも明日金剛地さんと会うことになったら、また口先の語彙力が死んでしまうんだろうかと心配していたら、隣を歩く伊織が口を開いた。
徳武伊織
徳武伊織
お前さ、ああいうのが良いの?
 仕方ないと言えば仕方ないけれど、勘違いされてしまったようだ。
徳武伊織
徳武伊織
金髪で、目が青くて、なんか、自分が世界の中心だ、みたいな
 その言葉には神妙さが大量に含まれている。正直ちょっと怖い。
早見悠香
早見悠香
あの、あの、えっと
 語彙力は回復しつつあるとはいえ、伊織の質問にフレキシブルに回答できるほどではない。
徳武伊織
徳武伊織
……わからないでもないけどさ
 夕日は遠く、空は濃藍こいあいに染まりつつある。

 神妙で、どこか寂しげな伊織の声は、近づく夜に飲み込まれてしまいそうだ。

 伊織は私から目をそらして、夜の闇を眺めている。
早見悠香
早見悠香
良い声、だった
 今の口先の語彙力で伝えられるのは、それだけだった。

 伊織が勢いよく私に振り向く。
徳武伊織
徳武伊織
はぁ!?それって……
早見悠香
早見悠香
わかる?
 伊織から先ほどまでの神妙さが消え去る。
徳武伊織
徳武伊織
ま、まぁ、俺も長いつきあいだし?お前の趣味趣向は理解しているし?
 伊織は拗ねたような口調で、私の真意への理解を告げる。

 私と伊織は、対象は違えどずっと昔からのオタク仲間でもある。

 伊織は三次元のアイドルオタク。私は二次元のアイドルオタクで、声フェチ。
徳武伊織
徳武伊織
変なヤツに転んだらどうしようって、本気でびびったけどさ
 そして、ずっと一緒にいてくれた人だ。


 × × ×


 帰宅して携帯を確認すると、早速RICEにメッセージが入っていた。

 恐る恐る内容を確認する。
システムメッセージ
グループ【納豆同好会参謀部】に参加しますか?
 参謀部。さんぼうぶ。サンボウブ。

 一体何の話なんです?