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第25話

無邪気に、誰がために
 私と藤花はダイニングキッチンにいる二人に告げず、藤花の部屋に行った。

 可愛いパッチワークの掛け布団に座って、藤花は笑ってんだか泣いてんだかわからないレベルで肩を震わせている。不穏すぎるよ……。
早見藤花
早見藤花
おねえ。おねえってさぁ、いおっちが誰のこと好きか、知らないの?
 藤花の声が震えている。藤花の横顔はキューティクル輝く御髪で隠れているから、泣いてるんだか笑ってるんだかやっぱりわからない。

 私は居心地悪くてドア付近で立ち尽くしている。この部屋自体がThe乙女すぎて居心地が悪いけど、本当に藤花、藤花なんだよ……。

 この部屋で伊織は藤花に押し……推し!推し!ダメだ、考えるだけで顔が火照ほてる!
早見藤花
早見藤花
いおっちね、苦しんでるんだよ。どこかのおねえがバカみたいな態度とるから
早見藤花
早見藤花
知らない?知ってた?あたしね、いおっちのこと好きなんだよ
早見藤花
早見藤花
ずっと、ずっと昔から。お姉が私はオタクだーとか言って、いおっちのこと見てない間も、ずっと
 藤花は肩を震わせて、絞り出すように語り続ける。つやつやの髪がサラサラ揺れて、涙を流す藤花の瞳がちらりと見えた。

 心が痛い。逃げたい。逃げたい逃げたい。

 でも、逃げてどうなるの。幼馴染の伊織からも逃げて、妹の悠香からも逃げる。



 私の人生、逃げるだけで終わって良いの?


早見藤花
早見藤花
おねえなんか大っ嫌い。いおっちのこと振るなら振ってよ!
早見藤花
早見藤花
大っ嫌い!うっ……うっ……うぇぇ……
 藤花がみっともないほど歪んだ泣き顔を私に向ける。……みっともない?どこがだ。

 藤花は私なんかよりずっと立派だ。自分の気持ちに正直に向き合っている。

 私は、私はどうしたいんだろう。逃げたい。そうじゃない。
早見悠香
早見悠香
藤花!
早見藤花
早見藤花
うあぁぁぁぁん!出てってよぉぉぉぉ!
早見悠香
早見悠香
イケボ聴かない?
早見藤花
早見藤花
うう……ひっく……。……は?
 私も……は?って感じだよ。何かをひねり出すにしたって、なんでこのタイミングでこんなの出た。
早見悠香
早見悠香
じゃなくて!その、私、伊織にも藤花にも悪いことしてたなって……
 仕切り直してだいぶまともなことを言った。

 大丈夫だ、これなら意味不明ではないし、私の気持ちも藤花に伝わるはず……。
早見藤花
早見藤花
なにそれ、謝ってるつもりなの?
 藤花はベッドから立ち上がって、私に詰め寄った。

 顔は真っ赤でメイクがぐしゃぐしゃで、一万年に一人の美少女とは思えない状態になっている。

 いくら謝っても謝り足りない。私の煮え切らない態度が藤花をここまで追い詰めたんだ。
早見悠香
早見悠香
あのっ!そのっ!……伊織に自分の気持ち、はっきり伝えようと思う
早見藤花
早見藤花
それって、どんな気持ちよ……
 ……うっ。とてつもなく言いづらい。

 私が視線を泳がせていると、背後からノックが聞こえた。
徳武伊織
徳武伊織
悠香。藤花ちゃん。入って良いか?
 前後不覚。徳武乱入。

 頼むから金剛地先輩まで来ないでくださいね!納豆オムレツ食べててくださいね!