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第37話

ドルオタと、納豆と……
徳武伊織
徳武伊織
悠香とライブデートに行ってからずっと隠れてこの曲を練習していました
徳武伊織
徳武伊織
歌ってオタ芸打って……。まぁ、歌は結局悠香に取られてしまいましたが
 グラウンドからどっと笑いが起きる。なんだこれ、なんだこれ。
徳武伊織
徳武伊織
俺、両親が音楽関係の仕事してるのに、音痴とか芸術のセンスないとかずっと言われてて
徳武伊織
徳武伊織
……本当は音楽なんて大嫌いだったんです
徳武伊織
徳武伊織
でも、悠香が次々オタクコンテンツを教えてくれて、二人でのめりこんで、楽しいねって……
徳武伊織
徳武伊織
それで音楽が嫌いとか、親とか、どうでもよくなって!
 なんかすごくいいこと言ってる感じするけど、私かなり恥ずかしいことバラされてるからね!

 ……ね?だから私、心揺れないで、ね?
徳武伊織
徳武伊織
悠香といると楽しい!
徳武伊織
徳武伊織
大きな夢も格好良いことも言えないし、未来の保証もできない
徳武伊織
徳武伊織
でも、彼女のことをずっと好きで、これからも好きなのだけは本当です!
徳武伊織
徳武伊織
聞いてくれてありがとうございました!
 グラウンドからの拍手はまばらだった。あっ、これ、退かれてますね。

 私の隣にいる金剛地先輩がハンカチで顔を拭いながら鼻を鳴らした。

 屋上は雨の静けさに包まれていた。
金剛地零哉
金剛地零哉
……まとめに入ろう
 金剛地先輩はおなかの納豆を抱くように腕を組みながら、びしょ濡れの伊織の隣に並び立つ。
金剛地零哉
金剛地零哉
諸君、あらためて問う!この金剛地零哉と徳武伊織。どちらの主張がより優れていたか!?
金剛地零哉
金剛地零哉
まずはこの金剛地零哉の主張に心打たれたもの、手をあげよ
金剛地零哉
金剛地零哉
……ふむ、まぁ悪くはないな
金剛地零哉
金剛地零哉
次、徳武伊織の主張こそ優れていると感じたもの!
金剛地零哉
金剛地零哉
ふむ、ふむ……そうか、俺は素直に負けを認めねばならないな
 伊織が驚いた様子で金剛地先輩を見る。何があったの?
金剛地零哉
金剛地零哉
票数はほぼ同じ。ならば俺は負けたと感じたこの心に従う
徳武伊織
徳武伊織
金剛地先輩!俺だって先輩に勝ったなんて思っていません!
徳武伊織
徳武伊織
悔しいけど俺はあなたみたいに明確な未来のビジョンを持つことなんてできていませんから
金剛地零哉
金剛地零哉
ふむ、それも一理あるな。……やはり俺はお前を部下にしたい
金剛地零哉
金剛地零哉
徳武伊織、お前は早見とともに俺の部下となれ!
金剛地零哉
金剛地零哉
……いや、違う。俺が立派な人間となったその時にお前たちを迎えに行く!
 伊織が金剛地先輩に右手を差し出す。金剛地先輩は力強くうなづいて右手で答える。

 グラウンドが沸く。雨に負けない歓声が響く。

 二人がふざけて力を入れあって、小さなケンカになる。

 私は楽しい気持ちと、えも言われぬ不安を抱えながらその様子を眺めていた。



 × × ×



 次の日、ほとんどの生徒が風邪をひいて学校がもぬけの殻になった。

 それなのに私も伊織も金剛地先輩もぴんぴんして、校長先生からのお叱りを受けている。

 本当にすみませんでしたカナァ!



 × × ×



 今日の授業は中止になったので私たちは納豆同好会の集合場所もとい生徒会室に向かった。

 途中、伊織は生き残りであるクラスメイトCちゃんに呼び止められたので、置いてきた。

 ちょっとむかむかする。胸の内をごまかすように米ぬかウォーターをあおる。ちっとも美味しくない。
金剛地零哉
金剛地零哉
しかし早見よ。お前は徳武……いや、伊織にどのような気持ちを抱いているのだ?
 口に含んだ米ぬかウォーターを吹き出しかける。よく踏ん張った、ナイス口輪筋こうりんきん

 と思いつつ飲み込んだらむせた。結局ダメだった。
早見悠香
早見悠香
そ、それを私に聞きましゅカナァ?
金剛地零哉
金剛地零哉
未来の部下の気持ちだ。今のうちにカウンセリングしておいた方が良いと思っただけだ
早見悠香
早見悠香
それって……
金剛地零哉
金剛地零哉
妻は保留だ。だから答えろ
金剛地零哉
金剛地零哉
伊織に黙っておくくらいの配慮は俺にもある
 すごく真剣な目で私を見てくる。その美貌で心がとろけるんですけどぉ……。

 あっ、だめ、口が勝手にしゃべっちゃう!!!!!
早見悠香
早見悠香
伊織のことは、しょの、しゅごく……大切で、えっと……
 ガラッ!
徳武伊織
徳武伊織
こめ~らいす~♪真っ白なあなた~♪
早見悠香
早見悠香
……やっぱり何でもないでしゅカナァ
徳武伊織
徳武伊織
何の話だよ?
 ああ、言うわけない。言えるわけない。語彙力も崩壊寸前だし。

 この胸に灯った黄色い光は、まだ打ち明けなくてもいい。


end.