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第30話

夜にけぶる黄色の光
 っていうかなんか、さっきからずっと金剛地先輩に気圧されているというか、圧倒されている気がする。

 ……なんか、これって、プロポーズらしくないっていうか。
早見悠香
早見悠香
卵かけご飯……
金剛地零哉
金剛地零哉
納豆に卵を混ぜても美味いぞ。納豆は万能だからな
 そうだこの人、基本的には話通じないんだった。

 面倒見の良さと相手の気持ちの理解度は比例しないんだよね。悲しいね。
金剛地零哉
金剛地零哉
あおさを入れても風味が出て良いぞ
 ……ダメだ、このまま金剛地先輩を頭の中でこねくり回しててもどうにもならない!

 出たとこ勝負だ!開け私の口!震えろ私の声帯!
早見悠香
早見悠香
その、結婚は、あ……ちょっと無理です
 本当に出たとこ勝負下手くそだな私。

 金剛地先輩と出会った頃よりはだいぶマシになったとはいえ、やっぱりひどい。
金剛地零哉
金剛地零哉
俺はよりよい未来のために邁進する!お前は将来の安心を手に入れる!
金剛地零哉
金剛地零哉
それの何が無理なのだ!
 なんか、ヒロインを口説こうと頑張る悪役みたいな台詞だ……。

 これでもかというほどの美貌と南風野智昭さん似の美声があるから様になってるし、私も必死にカナ発作を堪えてるんだけど。
早見悠香
早見悠香
あの、なんか、私、乗れない、というか
 私の正気を振り絞って、申し訳程度の返答をする。

 あたりは既に真っ暗だ。遠くで黄色の光がぶれている。

 なんだろ、あれ。すごく見覚えがあるけど、気付きたくないような……。
金剛地零哉
金剛地零哉
早見、目を閉じろ
 目を閉じる間もなく、唇に暖かくて柔らかい何かが触れた。

 至近距離には金剛地先輩のご尊顔。……何が起きた?

 私の唇に触れた暖かい何かが、私の唇を舐めた。
金剛地零哉
金剛地零哉
今はロースカツ味だな
金剛地零哉
金剛地零哉
……いずれは納豆味に染めるつもりだが
 ほわほわと頬が熱くなって、ぽーっとして。

 どうして?私、私の唇……。
徳武伊織
徳武伊織
悠香!
 なんだろう、きこえない。



 × × ×



 全身がリズム良く揺さぶられて心地よい。ずっとこうしていたい。

 私はそんな暖かさと密着していた。
早見悠香
早見悠香
……いおり?
 返事はないけど、私を背負う黒髪ウルフカットの男はどう考えても伊織だった。

 こんな風におぶられたのは小学生以来だけど、あの時と同じように安心する。

 眩しすぎる黄色ペンラが腰のベルトに刺さってる。あたりに人っ子一人いなくて本当に良かった。
徳武伊織
徳武伊織
……悠香の帰りが遅いって藤花ちゃんが
徳武伊織
徳武伊織
けど、余計なお節介だったのかもな
 伊織の声が露骨に落胆する。
徳武伊織
徳武伊織
お前と金剛地先輩はそういう関係になったわけだ
早見悠香
早見悠香
ち、違うし……
徳武伊織
徳武伊織
本当か?なら……
 伊織のためらいが声に乗った。
徳武伊織
徳武伊織
俺が奪っても良いのか?
 理解が追いつかない、伊織が誰の何を奪うって?
徳武伊織
徳武伊織
なぁ、悠香。もっと早くに言うべきだった
徳武伊織
徳武伊織
……いや、違うな
 伊織は我が家の前で私を降ろした。

 そして。
徳武伊織
徳武伊織
もっと態度で示すべきだった
 伊織は私の前髪をかき分け、額にキスを落とした。

 ええっと、これは……、ドッキリかな?

 でも一般人ごときにこんなドッキリ普通しかけないよね。とか余計なことを考えていないと私の心臓は保ちそうになかった。

 真っ正面から受け止めたら、心臓が骨を砕いて皮膚を突き破って世間にこんにちはしてしまう!
徳武伊織
徳武伊織
……また明日な!
 あ、明日?明日もキスするの?

 違うよね!明日学校で会おうって意味だよね!……ね?