その翌日、星香はお見舞いにまた同じスノードロップを持ってきたが、颯くんは来なかった。
「あ〜! 昨日は颯くん来なかったんだ!」
「そう。…昨日は来なかった。」
「来ない日とかあったんだ〜w」
そう。昨日は来なかった。
彼が来なかったことに対して、少し安心したような…それでいて、心に穴が空いたような気がした。
けれど、颯くんが来なかった昨日はスノードロップはそのままだった。
やっぱり…颯くんが……。
いつも颯くんが来る時間。
けれど彼は来なかった。
もう…来ないのかな…。
でも…なんで突然…。
怖かったはずなのに、会えないとなると寂しくて…あいたくなった。
……会いたいな…颯くん…。
じわりと滲んだ涙が頬を伝う。
そのまま私はまどろみに身をゆだねた。
夢の中で彼の姿を見た。
彼は私を優しい眼差しで見つめ,頭を撫でてくれた。
何を話しているのかはわからない。けれど、優しい彼の姿がそこにはあった。
しかし、またあの冷ややかな表情になってしまう。
なんで…夢なら…夢の中なら幸せなままで…
ガシャーン //
突然、耳をつんざくような音がする。
まだ夢と現実の判断が曖昧な意識の中で、カーテンの隙間に彼の姿を見た。
私の意識が朦朧としているせいで、何を話しているのかは理解できなかった。
だか、彼は冷ややかな表情で何かを話していた。
その足元には
粉々に砕けた植木鉢と、無残に土をかぶったスノードロップ。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!