「星香、今日テンション高くない?」
「え〜?そぉかな〜っ??」
星香のテンションの高さはもはや以上だった。
そもそも彼女がこんな時間に来ること自体が珍しかった。
「ん〜、最後だからさっ」
最後…たしかに私がここの部屋にいるのは今日が最後だ。
「最後…?退院のこと?」
「そーそ♪綾乃さ,スノードロップ好き?」
「うん。小さくて,可愛いよね」
「そっかぁ〜…」
星香の様子がおかしい。
先程までのテンションはどこへいったのだろう。
「ねぇ綾乃。スノードロップの花言葉知ってる?」
「花言葉?知らないよ?」
星香が花言葉に興味があるなんて知らなかった。
ここ2、3年で興味をもったのだろうか
「スノードロップの花言葉は、希望と慰め。」
「そーなんだ、そんな素敵な花言葉があるんだ…」
『希望と慰め』きっと記憶を失くした私にとって大切な言葉だったのかもしれない。
記憶を取り戻す希望
失った記憶を悔やまないようにと慰め
「ありがとう、星香。
そんな意味があったって知らなかったよ」
星香はフフン♪と得意げに笑う。
「でもね、もっと素敵な意味があるのっ」
もっと素敵な意味…。
「どーゆー意味なの?教えて」
「スノードロップは~,贈り物にすると意味が変わるんだ〜っ!」
贈り物にすると意味が変わる。
希望と慰めという花言葉をもった可憐な花はどのように意味を変えるのだろう。
「それはね〜♪……あなたの死を望みます…だよっ?」
そう言った星香の小さなバックから出てきたのは、空に浮かんだ月のように鋭く尖った刃物だった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。