気付けば陽はすっかり落ちて、約束の時間よりも20分は軽く過ぎていた。
彼の驚きようを見ると、疲れを忘れ、仕事に夢中だったようだ。
集中している姿を見るとふと、好きだなと思う。このことは彼には内緒だ。
と思っていると彼は、全て分かったような眼差しで私を見つめていた。
今のうん。はさっきの反射的に出たものとは違う。私は本当はジョンウと帰るのが楽しみだった。
本心を言ってしまえば、楽になれるだろうか。いっそのこと帰り道で言ってしまおうか。
正直に言えば、私だって、あんなことしてないで、ジョンウとお話ししていたい。
私の話にずっと優しく相槌をうっていてほしい。
きっとジョンウは快く受け入れてくれる。私はそう確信していた。確かな根拠もなく。
確信していても、言えない。
私には勇気が人一倍足りない。
仕事を断る勇気もそう。
けどやっぱり私には今の状態から変わる勇気が桁違いにない。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。