第4話

短い時間
556
2019/01/25 12:55
気付けば陽はすっかり落ちて、約束の時間よりも20分は軽く過ぎていた。

彼の驚きようを見ると、疲れを忘れ、仕事に夢中だったようだ。

集中している姿を見るとふと、好きだなと思う。このことは彼には内緒だ。
と思っていると彼は、全て分かったような眼差しで私を見つめていた。
ジョンウ
僕も終わったし、もう帰れるよね?
あなた

うん。

今のうん。はさっきの反射的に出たものとは違う。私は本当はジョンウと帰るのが楽しみだった。

本心を言ってしまえば、楽になれるだろうか。いっそのこと帰り道で言ってしまおうか。

正直に言えば、私だって、あんなことしてないで、ジョンウとお話ししていたい。
私の話にずっと優しく相槌をうっていてほしい。

きっとジョンウは快く受け入れてくれる。私はそう確信していた。確かな根拠もなく。

確信していても、言えない。


私には勇気が人一倍足りない。


仕事を断る勇気もそう。
けどやっぱり私には今の状態から変わる勇気が桁違いにない。


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