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第1話

片想いの始まりは。
627
2019/01/28 12:39
 俺の名前は藤枝 仁(ふじえだ じん)。23歳で職業はYouTuber。ピンでやっているわけじゃなくて、俺には相方がいる。
俺の相方の名前は、寺島 大輝(てらしま おおき)。


俺たち2人は、スカイピースというグループ名でYouTubeをしていて、
YouTube内での俺の名前は☆イニ☆ で、相方の名前はテオくん。
テオくんという愛称は呼びやすいので、俺は普段からテオくんと呼んでいる。
と、これは前置き。ここからが本題。
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俺には、好きな人がいる。それは、さっき紹介した相方テオくんだ。もちろん、テオくんは男で、俺自身も男。誰もが思うだろうが、不毛な恋なのだ。到底叶うはずもない、ただの一方通行の恋。
俺はもともと男が好きなんてことはなかった。だけど、テオくんだけは違った。
ここからはしばらく、俺がテオくんに片想いをするきっかけになった話を聞いてもらおうと思う。







それは、スカイピースを結成してから間もない頃のこと。
スカイピース
スカイピース
どーもー!スカイピース いぇい!
テオくん
テオくん
というわけで、今回はですねっ!
テオくん
テオくん
公園に来ております!
じん
じん
はい!
テオくん
テオくん
滑り台を使った企画をやっていこうと思っていたんですが!
じん
じん
んんっ!?ですが!?
テオくん
テオくん
昨日雨だったからけっこう濡れてるんだよね〜
じん
じん
あー、たしかに
テオくん
テオくん
なので!今回はちょっと違った企画をしようと思います!
じん
じん
えー?大丈夫でしょ〜
テオくん
テオくん
いや〜、危ないからね〜
じん
じん
だーいじょうぶだってー!ほら、やろうよ!
テオくん
テオくん
う〜ん、、、
テオくん
テオくん
まあ、じんたんがそこまで言うならっ!
テオくん
テオくん
やっていきやっしょう!!
この日の前日、その公園周辺では雨がたくさん降っていたため、遊具の使用は禁止になっていた。でも、そのときはまだ俺たちの目にはその文字が入ってきていなかった。
しばらくたったころ、俺はあることを思いついた。
じん
じん
あっ!そうだ!
テオくん
テオくん
んー?どうした、じんたん!
じん
じん
今から、滑り台からジャンプして飛びおりマース!
テオくん
テオくん
ええ!?じんたん、さすがに危ないってw
じん
じん
だいじょぶだいじょぶ!
じん
じん
いっきまーす!
テオくん
テオくん
いやっ!ほんとにっ...
ドサッ
飛び降りようとした時、土台で滑って思いっきり地面に叩きつけられた俺。今思えば、ちゃんとテオくんの言うことを聞いていれば、ああはならなかったのだと思う。
じん
じん
いってぇ...
テオくん
テオくん
じんたん!?大丈夫!?
じん
じん
だいじょ...
じん
じん
...
テオくん
テオくん
じんたん!?じんたん!!
この日俺は大怪我をした。大腿骨の骨折だった。さらに、頭も強く打っていたから、救急車で運ばれる頃には、ほとんど意識のない状態だった。
俺は、しばらく入院となり、テオくんは俺のいない間1人でYouTubeをやることなった。



それから、テオくんは動画を1日も欠かさず投稿し、俺のお見舞いにも毎日のように来てくれた。テオくんのYouTubeに対する強い意志と、俺への思いやりをありがたく感じながら病院での日々を過ごした。
毎日毎日弱音も吐かず1人で必死に頑張っていたテオくん。でも、ある日
テオくん
テオくん
じんたんっ...
じん
じん
て、テオくん!?
じん
じん
どしたの??どっか痛いの?
テオくん
テオくん
ちがっ、くて...
テオくん
テオくん
じんたん、
テオくん
テオくん
おれ、お、れ
じん
じん
うん
テオくん
テオくん
ほんとは、
テオくん
テオくん
ずっとずっと寂しくてっ
テオくん
テオくん
じんたんに、はやっ、く、帰ってきて欲しくて
じん
じん
ごめんね、テオくん。
じん
じん
俺が、ちゃんとテオくんの言うこと聞いておけば...
テオくん
テオくん
じんたんは、悪くない。
テオくん
テオくん
悪くないから、気にしないで。
じん
じん
テオくん。ありがと。
テオくん
テオくん
ねえ、じんたん
じん
じん
ん?
テオくん
テオくん
ひとつだけワガママ言ってもいい?
じん
じん
もちろん
テオくん
テオくん
俺、動画頑張るから
テオくん
テオくん
だから、時々でいいから
テオくん
テオくん
じんたんの肩借りて泣いてもいい?
じん
じん
うん、いいよ。
じん
じん
いくらでも貸すし、いくらでも泣いていいよ。
テオくん
テオくん
じんたんっ、ぅぅ、
この日、初めてテオくんは俺に弱みを見せた。いつも明るくて涙ひとつ見せなかったテオくん。本当は寂しかったんだと、俺がそんな思いをさせていたんだと知った。無理して笑っていたんだと痛感させられた。
たくさん泣いたあと、テオくんは俺の肩にもたれたまま眠ってしまった。
じん
じん
ごめんね、テオくん。疲れてるよね。
じん
じん
俺、テオくんに迷惑かけてばっかりで、なんにもしてあげられない。
じん
じん
テオくん、俺を選んでよかったの?
テオくん
テオくん
じんたんしかいないよ。
じん
じん
え?テオくん、聞こえて...
テオくん
テオくん
...
テオくんは、すやすやと寝息を立てて寝ていた。だけど俺は、はっきりとその言葉を聞いた。
じん
じん
ありがとう、テオくん。
じん
じん
でも、もうちょっとだけがんばって。
じん
じん
俺も、すぐ帰るから。
この出来事があってから、テオくんのことを意識するようになった。テオくんの優しさ、強さを改めて知った。そして、同時に俺の中に【恋心】が芽生えた。
じん
じん
俺、テオくんの事好きなのかも。
聞こえていれば終わってしまう。だから、聞こえないくらいの声で、そう呟いた。




これが、俺の恋のきっかけ。俺のテオくんへの見方が、相方から愛方になった話。

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