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第2話

心の奥にしまい込んだ願望
豊橋 七海
豊橋 七海
そういえば、雷太らいたが「かぼちゃ食べたい」って言ってたな

雷太というのはうちの末っ子で、毎日私の手料理を「美味しい」と言いながら食べてくれる、素直な子だ。
一ノ瀬 大河
一ノ瀬 大河
いいんじゃないか、かぼちゃ
豊橋 七海
豊橋 七海
よし、じゃあかぼちゃの煮付けと……。
鮭の切り身がチラシに載ってたから、ホイル包み焼きにしよう

毎日の献立を考えるのは、結構骨が折れるものだ。


家族みんな好き嫌いがなく何でも食べてくれるので、その点は助かる一方――食材選択の幅が際限なくあるのは、悩みの種でもある。

店員
店員
あ、こんにちは。
いらっしゃいませ
豊橋 七海
豊橋 七海
こんにちは

スーパーに足を踏み入れると、顔なじみの店員さんからにこやかに挨拶をされる。


初めて私たちが買い物をしたときは、店員さんにもお客さんにも、不思議そうに見られたものだ。


制服姿の男女二人がスーパーで買い物をする姿は、一気に近所でも有名になった。


「付き合ってるのかな」「兄妹じゃないの?」と噂されたけれど、事情も広まったようで、今ではすっかり受け入れられている。


目的のものをテキパキと買い物かごに入れ、支払いを終わらせ、袋に詰めたら大河くんと手分けして持ち帰る。


秋は食べ物が一層美味しく感じられる季節だ。


少しだけ楽しみになりながら、二人で我が家へと急いだ。



***



豊橋 七海
豊橋 七海
ただいまー
千波
千波
お帰りー!
雷太
雷太
あっ、かぼちゃだ!

三女の千波ちなみと次男の雷太は、ランドセルをリビングに放置したままテレビアニメを見ていた。


千波は小学四年生で、雷太は小学二年生。


昔に比べたらマシになったけれど、二人とも、まだまだ手がかかる。

豊橋 七海
豊橋 七海
千波、雷太、宿題は終わったの?
金曜日だから多めに出されたでしょ?

宿題を終わらせてからテレビを見るというのが、我が家のルールのはずだ。


二人とも大河くんをちらっと見たかと思うと、にやりと笑った。

千波
千波
大河くんに教えてもらうもん!
雷太
雷太
教えてもらいながらだと早く終わるから!
豊橋 七海
豊橋 七海
またそんな言い訳して。
大河くんがいてもいなくてもできるようにならないと
千波
千波
はぁーい

二人はしぶしぶといった感じで、ランドセルから宿題を取り出し始めた。


私が母親代わり、というほどではないのだけれど、両親はいつも多忙だ。


父は遠方に単身赴任中で、母もフルタイム労働の上に残業が多く、いつも帰宅は夕飯の直前くらい。




長女として生まれた私は、弟妹たちの面倒を見ながら、両親に代わって家事を引き受けるようになった。


それを不幸だとは思わないし、家族だから助け合うのは当たり前。


でも――ほんの少しだけ、周りのみんなが羨ましいとも思う。


私だって、放課後に部活したり、お出掛けしたり、自分の時間を思いっきり過ごしてみたい。


でも絶対に、そんなことは家族には言わないし、言えない。
一ノ瀬 大河
一ノ瀬 大河
じゃあ、あとは俺が見てるから
豊橋 七海
豊橋 七海
うん、いつもごめんね。
ありがとう
一ノ瀬 大河
一ノ瀬 大河
夕飯世話になってるんだから、これくらいしないと。
……いや、これくらいしかできないけど
大河くんが照れくさそうに微笑む。


帰宅後は、私が掃除や洗濯物を、千波と雷太の面倒を見るのは大河くんの仕事になっていた。


千波たちも大河くんに懐いているし、彼の教え方が上手だと絶賛しているので、私も安心して任せている。

雷太
雷太
大河くん、うちにずっといてくれたらいいのに

私がエプロンを着けていると、雷太がそんなことを言い出した。


千波は同意しつつも、「んー」と首を傾げる。
千波
千波
でもそれだと大河くんが困るよ
雷太
雷太
じゃあ、七海お姉ちゃんが大河くんと結婚すればいいじゃん
千波
千波
それは勝手に決めたら駄目だよ!
二人にだって好きな人がいるかもだし

千波の発言に対し、私と大河くんは同時に軽く吹き出した。


確かに、いとこ同士は結婚できるけれど、私たちはそういう間柄ではない。


大河くんと顔を見合わせると、彼は気まずそうに頭を掻いていた。




気を取り直し、まずは買ってきた食材を冷蔵庫にしまう。


次は家族全員分の洗濯物を取り込んで畳み、各々の部屋に持って行く。


朝洗って乾かしておいた茶碗を片付けたら、庭の花壇に水をやってお風呂の掃除。


全部屋に掃除機をかけて、ようやくルーティンは終わり。


疲れからくる溜め息をぐっと飲み込んで、夕食の支度をする前にと、通学鞄から弁当箱を取り出した。
豊橋 七海
豊橋 七海
(不思議な人だったな……)

それを見て、今日の昼休みに出会った先輩のことを思い出す。



【第3話へつづく】