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第4話

初対面で〝結婚〟なんて
豊橋 七海
豊橋 七海
(け、結婚って言った!? 聞き間違いかな……!?)

本能的に、私は体を少し後ろへ引いた。


この先輩、もしかすると関わっちゃいけない人だったのだろうか。


たった数瞬で、このあとどうすべきかをぐるぐると考える。
椿 和泉
椿 和泉
あっ、ごめん、つい!
こういうお弁当を毎日食べたいって思ったら、それしか方法がないかなとか思って……
豊橋 七海
豊橋 七海
な、なるほど

私の反応を見てか、椿先輩が慌ててそう弁明した。


それだとしても、結婚なんて言葉がそう簡単に出てくるものだろうか。


昨夜から何も食べていないことも含め、私の中に強烈な印象を残す。

椿 和泉
椿 和泉
そっか。
毎日作らせようってのも失礼だし、毎日じゃなくてたまにでもいいんだけど……。
ああ、何て言えばいいんだ?
とにかく、俺は君の作る弁当が毎日食べたいくらい好き
豊橋 七海
豊橋 七海
……あ、ありがとうございます。
そう褒めてもらえると嬉しいです

普段から、家族や友達が「美味しい」と言いながら食べてくれるのは嬉しい。


でも、椿先輩の反応は、とりわけ心が躍るような感覚があった。


きっとそれは、初めて会った人にも喜んでもらえるくらい、自分の腕が上達したと褒められた気分になるからだ。

椿 和泉
椿 和泉
あ、お世辞じゃないから。
本心! これマジで!
豊橋 七海
豊橋 七海
大丈夫です、伝わってます

椿先輩が嘘を言っているようには見えないし、気持ちは充分伝わった。


彼は「ごちそうさま」を言って、残りを私の元へと返す。


それを受け取りながら、私は彼の事情を聞いてみたくなった。

豊橋 七海
豊橋 七海
どうして昨夜から何も食べていないのか、聞いてもいいですか?
椿 和泉
椿 和泉
ああ、うん。
昨夜はバイトが忙しくてさ……

先輩は父親と二人暮らしだが、その父は仕事柄出張が多く、一ヶ月の間に数日しか家に帰ってこないとのこと。


家では和泉先輩がほとんどひとりで過ごしていて、自炊もしない。


料理は挑戦してみたこともあるが、あまりにも手際が悪く時間がかかり、ひとりだと食費も無駄にかさばるので止めたらしい。


今はバイト先のファミレスでまかないを食べるか、スーパーのタイムセールで安くなったお弁当を買うかして、食費を浮かせているという話だった。

椿 和泉
椿 和泉
昨夜だけは何でか分からないけどお客さんが多くて、まかないを食べる暇がなかったんだ。
帰ったらもうクタクタで、食べようとかそういう気持ちにもならなくて。
そのまま寝てしまったら、今朝は寝坊したし遅刻もするし、財布まで忘れて災難だよ
豊橋 七海
豊橋 七海
た、大変だったんですね……

想像していた以上にハードな内容だった。


私は毎朝、朝食を抜きたがる弟妹たちに「ちゃんと食べなさい!」と口酸っぱく言っているが、先輩は事情が違う。


普段から栄養をとれていないせいで、先程も倒れてしまったのだろう。


「朝食だけでもとった方がいいですよ」と言いかけて、飲み込んだ。
豊橋 七海
豊橋 七海
(結構大人っぽい感じの人なのに、自己管理が苦手って、すごいギャップ……)

ちょっとだけ、笑ってしまった。



【第5話へつづく】