『Ring! Ring! Ring!』
☆11☆
重「彼女 居ったら、ひとりで来んやろ?行きたい店とか?」
〇「……そ、そうだよね……ふふっw」
勘違いだったんだ!
私ったら、さっきから そんな事ばっかり。
アホみたい。私ww
重「何笑うてん?」
〇「ふふっw 別にww」
重「なんやねん?ひとりモンは、お互い様やろぉ〜?」
〇「ふふっw だから、何でも無いって〜w」
こんな事に不慣れで、かっこ悪い自分が、情けな過ぎて笑えた。
重「なぁ?この辺 地元やろ?」
〇「うん。幼稚園の頃から住んでるよ。」
重「もしさぁ?もし…彼氏が出来たら、連れて行きたいトコない?」
〇「あ〜!あるよ!」
重「そこ行こっ!!!」
〇「エッ!!!」
重「行こ行こっ!なっ?」
〇「で、でも遠いよ?」
重「俺 漕いだるから!なっ?」
その「なっ?」って、チョット上目づかい…
ズルイってぇ〜〜!!!
☆12☆
〇「………しゃーないな…」
私が答えると、ニコッ!っとして私の手首を掴み、進み出した。
〇「へっ?//」
掴まれてる?
私…掴まれてるよっ!!!
心臓が手首に移動したんじゃないかな!
だって、その、そこの、てっ、てっ、てくびの その部分だけ!
手首だけが、めっちゃアツイんだよぉ〜〜!!!
思うがままに引っ張られながら、アワアワしている私を気にもせず、
重「カギ!」
と反対の手を出す。
〇「へ?」
重「チャリの。カギ!」
当たり前のように言うから、思わず…
〇「あ、はい!」
渡しちゃったよね…
どうして私の自転車、知ってんの?
何なんだろうこの感じ…
重「行くぞ!早よ乗れ!」
〇「えっ?」
重「う・し・ろ!」
いつのまにか解放されていた手首が、スースーしていた。
〇「う、うん…」
☆13☆
恐る恐る横乗りしてみると、
〇「きゃっ!」
いきなり走り出した!
重「掴まれよ!」
〇「う、うん!分かった!」
でも、どこを??
私は掴まれるところを探してサドルの下に手を掛けた。
重「俺に掴まれよ。」
〇「え//…い、いいよ//大丈夫。」
重「落ちたら困るやろ!」
私の自転車を漕ぎながら、チラチラ 後ろを見て言うその姿。
重「ほら早く!」
重岡くんのTシャツの、裾の方を握りしめるのが、精一杯だった。
何なんだろう、この感じ…
登り坂に差し掛かると、
重「しっかり掴まってろよぉ〜!バチコーイ!」
そう言うと、立ち漕ぎをし始めた。
私は掴んでたTシャツの裾を離さないようにするのに精一杯で、
〇「っ!チョット!立たないでよ!私 降りるから!」
重「やや!降ろさへん!お前を乗せて…登り切るん……や!」
シンドそうに言う後ろ姿。
〇「しょ〜もな…w」
☆14☆
重「しゃーーーッ!登頂〜!w」
ストンッ!と、サドルに戻ってきた。
重「お前、やっぱ軽いな!助かったw」
ニッコニコの笑顔と、ひたいに薄っすらと汗。
ヤバい…キラキラが…
眩しすぎる…
何なんだろう、この感じ…
さっきから私…
メッチャメチャ楽しいんだけど!!!
重岡くんが、グングン走らせる自転車の風は、私のスカートをハタハタとなびかせた。
Tシャツを握った手が、時折 かすかに体に触れると、重岡くんの体温を感じる。
いま、この世の中で、重岡くんを ひとりじめしてるのは、私なんだ…
何なんだろう…この感じ…
何度も何度も…うずく心…
ホント…
何なんだろう…
急に砂ばんだ道に入ると、下り坂の向こうに…
重「見えたッ!!!」
☆15☆
海と空が青の境界線を引いていて、太陽が照らした水面がキラキラしていて…
それは、重岡くんにお似合いだった。
重「うっひょぉーーーッ!!!」
最後の下り坂を勢いよく下る。
〇「わっ!!!早すぎるよぉーーーッ!!!」
マジ怖いから〜〜(泣)
気付くと…
目をつぶって、掴まっていた…
キキィーーーッ!!!
重「到着ぅ〜〜!……小瀧?」
〇「へっ?」
重「離して?ww」
〇「えっ//!あ、ご、ごめん///!!!」
私の腕が、重岡くんの腰をガッチリとホールドしていた!
〇「ほ// ホントごめんっ!!!///」
重「怖がりやなぁ〜w」
恥ずかしい…
可愛子ぶる女子が、ドサクサに紛れて するやつじゃんっ!!!
あぁぁぁぁぁぁーーーッ!!!
絶対!そんな奴に見られてるよぉ〜!
ショボン…
☆16☆
ショボン…としている私を見て、
重「小瀧って、オモロイなw 表情がコロコロ変わるんやな?w」
オモシロがられてるし…
私のショボン…引き続きだわ…
ん??//
〇「な//なに?//」
重「ふ〜んww」
私の顔をじっと見ては、意味ありげに言う。
〇「えっ//な、なによ〜//」
重「ふふっw 何でもな〜いww」
からかう様に言いながら、クルッと振り返ってスタスタ進み出した。
〇「あっ!ちょ、待ってぇ!」
そんな状況に気を取られて、置いていかれた私は、重岡くんの後を追うように後ろに着いて歩いたが…
ドンッ!!!
〇「チョット!急に止まらないでよ!何してんの?」
急に止まってかがんだと思ったら、
両手で靴を持って、砂浜でハシャギだした!
重「うぅお〜!メッチャ気持ちええ〜!小瀧も靴脱ぎや!気持ちええで?」
少年…
私…そんなキラキラ出来ないし…
似合わないよ…
☆17☆
〇「…私は…いいよ…」
重「……どないした?…ごめん、そないイヤやったん?」
〇「えっ?」
重「急に沈んだ顔すんねんな?」
〇「あ、ごめん!そんなつもりは無くて…ただ…私に そういうのは…似合わないって言うか…場違いで怒られそうって言うか…」
重「誰に?」
〇「え、誰って……」
誰だろう??
その時 思い浮かんだのは…
え?ウソ?望??
どうして望?
重「ほなら一度だけでええから〜俺を信じて?なっ?」
まただ!
その「なっ?」って上目づかい。
〇「…分かった。」
私は靴を脱いで、ゆっくりと指先から砂浜へと降ろした。
その日の砂浜は、熱くもなく、サラッと指の間を通り抜けた。
ホントだ…気持ちいいww
重「ほら 行こっ!」
〇「っ!//…へっ///!!!」
笑顔で左手をスッと取ると、波打ち際まで走り出した。
☆18☆
重「ゲームな?先に濡れた方が負けやで?」
〇「エッ!そんなん、絶対 押すじゃん!」
重「あたりまえや!それがゲームやんっww」
と言いながら、繋いだ手を寄せる波へと引っ張る!
〇「ちょ、ズルイ!」
重「ゲームやもん!ww でも、ギリまで待たんとアカンで?」
と、引いた波の後を行く。
波が寄せるのを待つのに、繋がれた手が、ほんの少し緩む。
ふと見ると、波を見つめるその瞳が、キラキラの水面を映し出していて…
ドキドキしないワケがない!
重「キタっ!」
また握り返された手で、我に帰った意識は、一瞬、反応が遅かった。
重「逃げろぉ〜!」
手を引き寄せられ、波からギリ逃げる。
そんな事を何度も繰り返して…
気付くと私達は…
笑い転げていた!
逃げるたびにハグれる左手を、
何度も探しにくる右手…
波の数だけ繋がれたその手の感触は、想像以上に淡くて、くすぐったい。
☆19☆
重「なんやそれ、ズルいや〜ん!」
〇「そっちが先にやってたじゃん!」
私は重岡くんを盾にして波際を待つ。
でも、前に立たれると波が見えなくて…
ヒョッコリ顔を出す。
そんな私を少し上の角度から見下ろしながら、
重「〇〇って呼んでええ?」
〇「えっ?」
名前…知ってたなんて…
どうしよう!
何て答えればいいの?
その隙に、イタズラに波は打ち寄せ、私は逃げ遅れた。
重「〇〇の負け〜ww」
私よりも遠くまで打ち上がった波が引き返すスピードで…
キラキラの笑顔は、私の何かを奪っていった。
〇「っ//…そんなの//……反則だよ///…」
下の名前 知ってたのも…
イイって言って無いのに呼ぶのも…
キラキラオーラの笑顔で近づいてきて、そっと…
キス
するのも…
重「罰ゲームww」
☆20☆
〇「っ//…聞いてないし///…」
私、挙動ってるよぉ〜
めっちゃカッコ悪いよぉ〜
重「…てか……〇〇が可愛い過ぎてな///」
〇「えっ//? か、可愛い?//」
重「…俺、前から見とったんや。〇〇の事。」
な、何を言ってるの?
私を?
見てた?
あの、キラキラオーラの重岡くんが?
重「今日、確信した。かわええ!それに…」
重「誰にも渡したない…〇〇のそのキラキラ…」
…私が…キラキラ……?
強い眼差しで見つめられ、
そんな、思いもよらない言葉。
落ちないワケがない…
重「…付き合うて欲しい。」
何なんだろう…この感じ…
〇「…えっとぉ……」
どした 私?!!!
どぉして「はい」って、言わないの??
重「……あ〜今や無くても ええから…」
なんだか気まずい雰囲気…
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。