昼ご飯のあと。
あなたは病室でひとり、薬の入った小さなカップを見つめていた。
毎日飲んでいる薬。
でも今日はどうしても飲みたくなかった。
小さく呟く。
朝から機嫌も悪かった。
検査もあったし、あまり眠れてもいなかった。
薬を見れば見るほど嫌になる。
少しだけなら。
今日だけなら。
そう思った。
あなたは周りを確認すると、薬をティッシュに包む。
そしてゴミ箱へ落とした。
ぽとっ。
本当はよくない。
でも少しだけ安心した。
コンコン。
病室のドアが開く。
神宮寺だった。
神宮寺は笑いながら病室へ入る。
神宮寺は何気なく頷いた。
その時。
視界の端にゴミ箱が入った。
ティッシュがひとつ。
なんとなく気になった。
でも。
『まさかな』
と思った。
あなたは薬が苦手だけど、勝手に捨てるような子じゃない。
神宮寺は病室を出た。
でも。
少しだけ引っかかった。
『気のせいかな』
そう思いながらナースステーションへ戻る。
そこへ紫耀がやってきた。
紫耀はカルテを確認する。
でも神宮寺は少しだけ迷った。
紫耀が顔を上げる。
紫耀の表情が少し変わった。
そう言って立ち上がる。
数分後。
紫耀は病室へ向かった。
ドアが開いた瞬間、あなたの肩がびくっと跳ねた。
その反応だけで紫耀は少し違和感を覚える。
即答だった。
でも目を合わせない。
紫耀は静かに病室へ入る。
あなたはゆっくり顔を上げる。
明らかに様子がおかしい。
紫耀は少し黙った。
そして。
ゴミ箱へ視線を向ける。
ティッシュが見えた。
なんとなく嫌な予感がする。
紫耀は立ち上がった。
ゴミ箱からティッシュを取り出す。
開く。
中には薬がそのままの形で残っていた。
病室が静かになる。
あなたの顔が真っ白になった。
優しい声じゃなかった。
あなたはぎゅっと手を握る。
怖い。
紫耀先生は滅多に怒らない。
だからこそ怖かった。
紫耀は深く息を吐く。
あなたは俯く。
涙が少しずつ溜まる。
その言葉に肩が震えた。
ぽろっ。
涙が落ちた。
いつも優しい紫耀先生。
いつもなら笑ってくれる。
なのに今日は違う。
真剣な顔だった。
こくこくと頷く。
紫耀はしばらくあなたを見つめた。
そしてようやく表情を少し緩める。
そう言ってベッドの横に座る。
あなたは泣きながら近づいた。
次の瞬間。
ふわっと抱き寄せられる。
紫耀の肩に顔を埋める。
ぽんぽんと背中を撫でられる。
紫耀が聞く。
あなたは小さく頷く。
紫耀は小さく笑った。
あなたは紫耀の服をぎゅっと掴みながら、何度も頷いた。
いいねくださいᴖ ̫ᴖ
















編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。