第7話

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2026/06/30 12:47 更新
 昼ご飯のあと。

 あなたは病室でひとり、薬の入った小さなカップを見つめていた。

 毎日飲んでいる薬。

 でも今日はどうしても飲みたくなかった。
(なまえ)
あなた
にがい…

 小さく呟く。

 朝から機嫌も悪かった。

 検査もあったし、あまり眠れてもいなかった。

 薬を見れば見るほど嫌になる。

 少しだけなら。

 今日だけなら。

 そう思った。

 あなたは周りを確認すると、薬をティッシュに包む。

 そしてゴミ箱へ落とした。

 ぽとっ。
(なまえ)
あなた
……よし

 本当はよくない。

 でも少しだけ安心した。

 コンコン。
神宮寺
神宮寺
あなたー?

 病室のドアが開く。

 神宮寺だった。
(なまえ)
あなた
じんくん
神宮寺
神宮寺
調子どう?
(なまえ)
あなた
ふつう

 神宮寺は笑いながら病室へ入る。
神宮寺
神宮寺
薬飲んだ?
(なまえ)
あなた
飲んだよ
神宮寺
神宮寺
そっか

 神宮寺は何気なく頷いた。

 その時。

 視界の端にゴミ箱が入った。

 ティッシュがひとつ。

 なんとなく気になった。

 でも。

『まさかな』

 と思った。

 あなたは薬が苦手だけど、勝手に捨てるような子じゃない。
神宮寺
神宮寺
じゃあまた来るね
(なまえ)
あなた
うん

 神宮寺は病室を出た。

 でも。

 少しだけ引っかかった。

『気のせいかな』

 そう思いながらナースステーションへ戻る。

 そこへ紫耀がやってきた。
平野
平野
あなたちゃんと薬飲んでたー?
神宮寺
神宮寺
飲んだって言ってたよ
平野
平野
そっか

 紫耀はカルテを確認する。

 でも神宮寺は少しだけ迷った。
神宮寺
神宮寺
あのさ
平野
平野
ん?
神宮寺
神宮寺
いや…

 紫耀が顔を上げる。
平野
平野
なに?言って
神宮寺
神宮寺
気のせいかも知れないんだけど
平野
平野
うん
神宮寺
神宮寺
ちょっと怪しかった
平野
平野
怪しいって?
神宮寺
神宮寺
ゴミ箱気にしてたというか

 紫耀の表情が少し変わった。
平野
平野
分かった

 そう言って立ち上がる。

 数分後。

 紫耀は病室へ向かった。
平野
平野
あなた

 ドアが開いた瞬間、あなたの肩がびくっと跳ねた。

 その反応だけで紫耀は少し違和感を覚える。
平野
平野
どうしたの?
(なまえ)
あなた
なんでもない
平野
平野
薬飲んだ?
(なまえ)
あなた
飲んだ

 即答だった。

 でも目を合わせない。

 紫耀は静かに病室へ入る。
平野
平野
ほんと?
(なまえ)
あなた
ほんと
平野
平野
あなた
(なまえ)
あなた
……
平野
平野
こっち見て

 あなたはゆっくり顔を上げる。

 明らかに様子がおかしい。

 紫耀は少し黙った。

 そして。

 ゴミ箱へ視線を向ける。

 ティッシュが見えた。

 なんとなく嫌な予感がする。

 紫耀は立ち上がった。
(なまえ)
あなた
紫耀先生?

 ゴミ箱からティッシュを取り出す。

 開く。

 中には薬がそのままの形で残っていた。

 病室が静かになる。

 あなたの顔が真っ白になった。
平野
平野
…あなた

 優しい声じゃなかった。

 あなたはぎゅっと手を握る。
平野
平野
これはなに?
(なまえ)
あなた
……
平野
平野
聞いてるけど

 怖い。

 紫耀先生は滅多に怒らない。

 だからこそ怖かった。
(なまえ)
あなた
ごめんなさい…
平野
平野
どうして捨てたの
(なまえ)
あなた
苦くて…

 紫耀は深く息を吐く。
平野
平野
苦かったら捨ててもいいの?
(なまえ)
あなた
……
平野
平野
違うよね?

 あなたは俯く。

 涙が少しずつ溜まる。
平野
平野
あなた
平野
平野
先生たちに嘘ついたのもだめ

 その言葉に肩が震えた。
(なまえ)
あなた
ごめんなさい…
平野
平野
先生たちがなんのためにお薬出してると思う?
(なまえ)
あなた
……
平野
平野
あなたが元気になるためでしょ?

 ぽろっ。

 涙が落ちた。
(なまえ)
あなた
ごめんなさい…
平野
平野
本当に分かってる?

 いつも優しい紫耀先生。

 いつもなら笑ってくれる。

 なのに今日は違う。

 真剣な顔だった。
平野
平野
薬飲まなかったら苦しくなるのはあなただよ
(なまえ)
あなた
ごめんなさい……
平野
平野
もうしない?

 こくこくと頷く。
平野
平野
ちゃんと言って
(なまえ)
あなた
しない…
平野
平野
約束?
(なまえ)
あなた
約束…

 紫耀はしばらくあなたを見つめた。

 そしてようやく表情を少し緩める。
平野
平野
よし

 そう言ってベッドの横に座る。
平野
平野
おいで

 あなたは泣きながら近づいた。

 次の瞬間。

 ふわっと抱き寄せられる。
(なまえ)
あなた
んぇえっ…

 紫耀の肩に顔を埋める。

 ぽんぽんと背中を撫でられる。
平野
平野
怖かった?

 紫耀が聞く。

 あなたは小さく頷く。
(なまえ)
あなた
うん…
平野
平野
怒ったからね
平野
平野
でも嫌いになった訳じゃないからね
(なまえ)
あなた
ごめんなさい
平野
平野
うん。薬捨てるのはダメだからね
(なまえ)
あなた
はい…
平野
平野
苦かったら相談すること
(なまえ)
あなた
うん…
平野
平野
勝手に捨てないこと
(なまえ)
あなた
うん…

 紫耀は小さく笑った。
平野
平野
約束だからね

 あなたは紫耀の服をぎゅっと掴みながら、何度も頷いた。

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