第34話

きっかけ⑦
20,732
2020/06/13 13:59






『よぉあなたやん』








それはマネージャーのあなたやった










『もう部活やで?何しとるん?』









ボトルの水をくみに来たあなたがここに来るなんて思わなかった



マネに会うとかなんともタイミング悪い










「・・・ちょっと気晴らしみたいな感じや」

「気晴らし?」









言い訳も思いつかなくて思いつきの返事をした





あながち間違ってもない











「侑に気晴らししたい時はなんてあるんだ」

「授業めっちゃ疲れたな思ってな!」









あなたはよっこいしょと俺の隣に腰掛ける










『あんまり部活行きたくない思っとったからここに来た』







なんて言ったら俺のプライドが許さない












『気晴らしなんてほんとは嘘でしょう?』













でも不運にもあなたの勘はよく






あっさりと嘘を見抜かれた










あなたは俺の顔を覗き込んでクスッと笑っている











「・・・嘘つく理由もあらへん」

「またまた、ほんとは部活サボりたかっただけやろ」

「ギクッ」







図星やんとクスクスとまた笑われた














『先輩のことやろ?』











あなたはそう聞くと





真っ直ぐな目で俺を見た









「・・・違う」

「ほんとは結構気にしとるんやろ」

「あほ!!!違うわ!!!!!」








俺の最大限で否定したけどもう既に遅かったみたいだった














『・・・なんで僻まれなきゃあかんのか分からん・・・』











あなたが優しい目で見てきたから




やけに素直になって自然と口が開いてしまった















『俺だって努力しとる、でもズルしとるみたいな感じで言われるんがめっちゃ腹立つ』











『それはウザイやんな、侑は上手いからなぁ』










『別に上手くないでこんなん』








『やけに謙虚やん』













誰かに打ち明けられることがなかったから






なんか心に溜まっとったものが軽くなった気がする










「だから行きたくないんや」

「で、でも!!!あんなんどーでもええし!!!!!!気にしとらん!!!!!」

「侑プライド高いから言えんのやろ」








毎度毎度優しい笑顔で笑ってくるからめっちゃ心が温かくなる












『辛かったら誰かに頼ってええんやで?』












『侑も人間やろ?傷つくことくらい普通やで』



















やけにこいつ俺を素直にさせる

















『・・・じゃあたまに頼るわ』















その時からあなたをただのマネージャーとして見れんくなった

















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