『体育館あっちですよ』
少しくせっ毛の男の子は指をさしてそう言った
「あ、ありがとうございます・・・!」
「いいえ」
私がぺこぺことお辞儀をするとクスッと笑うその子
不覚にもその笑顔にきゅんとしてしまう
「もしかして稲荷崎の人ですか?」
「そ、そうです!!!」
「やっぱり。見たことないジャージだなと思って」
少し微笑みながら話すその子は
どストライクということは言うまでもない
「でもなんで稲荷崎って・・・」
「ジャージに書いてあるからね」
「!!!!!」
少し意地悪そうに笑ってくる
『それに俺バレー部ですから』
『そ、そうだったんですね!!!』
偶然にもその男の子はバレー部の部員だったらしい
「何年生なんですか?」
「2年生です」
「じゃあタメですよ!!!」
バレー部と知るとなんだか緊張感がほぐれて
自然と私の口数は増える
『赤葦です。セッターやってる、よろしくね』
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。