プリ小説

第9話

第9話
それから、私と翔は気まずいままだ。
周りのうるさい男子たちが「夫婦ゲンカだー」とかって小学生みたいな騒ぎ方をしていたけど、私はそれどころじゃなかった。

いつまでたっても晴れない翔の表情。偶然目が合った時も、わざとらしく目線を外される。

どうして私は翔を怒らせてしまったんだろう。謝れば良いような感じの問題ではない気がするのだ。

私の口から叶くんの名前を聞きたくないなんて、どういうこと…??

私は叶くんと関わらない方が良いのだろうか。私はただ、普通に仲良くなりたいなっていうつもりで話してただけなのに…

「美咲さん。」

優しい、なめらかな声。叶くんの声だ。
私は、翔の方を見てしまった。あっちが私の方を見ていなかったら、目が合うことなんてなかったのに。
翔は私の方を見ていた。
慌ててお互い目を逸らす。違う…こんなはずじゃなかったのに…

「ぁ、ぇっと…どうしたの?」

かなり遅れて私はようやく叶くんに目を合わせる。私の表情はそんなに複雑だったんだろうか、叶くんはちょっと困ったような、心配してるような…そんな顔をした。

「あー…ちょっと、良いかな?」

叶くんは教室から出ようとしている。横目に見える、翔の不機嫌そうな顔。
でも…呼び出されてるんだし、別に大したことじゃないんだし、少しくらい大丈夫だよね?

私はそのまま教室の外に出た。無言で叶くんが歩き出すから、私はとりあえず何も聞かずに付いていった。

いくらか歩いた所で、ふと叶くんは足を止めた。

「屋上…?」

「うん。」

今の時間、きっと屋上に人はいないだろう。いたとしても数人だ。
叶くんはそれを知っているのかな?なるべく人がいない所でしたい話なのかな…

「はい、これ。」

「えっ…」

叶くんに差し出されたのは、
あのアイス。
私と翔が大好きな、思い入れのあるアイス…

「っ、美咲さん、?」

「…ぇ、あ…」

私の頬には、大粒の涙が流れていた。叶くんの動揺した顔。私は恥ずかしくて顔を手で覆う。
何で急に涙なんて。

「どうしたの…?」

言えない。
私と翔の事情なんて、叶くんに言えないよ。
翔のことも、叶くんのことも傷つけてしまう。

「……っ、。」

「…へ?」

夏の暑さとは違う、やわらかい温かさが、私をふんわりと包む。
私の頬に当たるサラサラの黒髪。

「…今だけだからね、だから…その、元気出して?」

叶くんの表情は分からない。
都会の男の子って、こんなに簡単に女の子を抱き締めるもんなの…?
たとえ友達でも?

「…アイスもあるし…。」

「ふふっ…」

アイスのせいで泣いてたけど、何だか今は笑えてきちゃうよ。

少しだけ、元気が出たかもしれない。
叶くん、ありがとう。

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三日月🌙
三日月🌙
学校あるんで更新ペース遅いときは超遅いです!ごめんなさい! Twitter→@Mikaduki2ym
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