第7話

自分で選んだ道
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2020/09/09 08:25
懐かしい商店街。
美玲とよく歩いた。

お肉屋から香るコロッケの匂い、八百屋の元気な声。

全ての想い出がゆっくり蘇る。

静かな商店街だったけど、いっつも同じ曲が掛かってた。

「自分で選んだ道があるから 間違えても良いんだよ」

誰が唄ってたかは覚えてない。でも今はやけに心に刺さる。

通学路だったから歌詞だって覚えた。

それはいつのまにか、美玲の口癖になってた。

「自分で選んだ道なんだから、間違えたって良いじゃん!死ぬわけでもあるまいっ!」

本当に明るかったなぁ…


正直、ここの道を通るのが怖くて最近は避けていた。

でも、美玲と交わした約束があるから。守らなくちゃいけないから。

「透は笑顔が可愛いんだから、ずっと笑っててよね」

僕はマスクの下で笑った。

家に帰って荒れてしまった片付けをすることにした。

独り暮らしだから元々汚かったけど、その荒れっぷりと言ったら残酷なもの。

割れた花瓶、中のサクラソウはカピカピに乾いている。

二人で撮った写真が入ったフォトフレームもパリッとヒビが入ってしまっている。

何、これ。
 
一緒に砂浜で撮った写真。テスト明けに電車で茅ヶ崎海岸まで遠出。

僕は笑っているのに、彼女の顔だけ原型をとどめていないぐらい、薄かった。

普通は見えない後ろの風車まで見えてしまう。

なんで、なんで__________


僕の前から幸せが、光が消えそうで。

気がつけば夕日が薄暗い雲に隠れてしまっていた。


何時間泣いたのだろう。

鏡に写った自分は自分じゃないみたいに怖かった。

光を失った目、赤く腫れぼったい瞳。ボサボサな髪。

全部、全部信じたくなかった。

何もかもが幻であってほしかった。

僕に降りかかる雨はやむ気配が無かった。

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