第19話

ガラスのひび割れ
52
2020/09/18 23:23
一瞬、何が起こったのか本当に

わからなかった。

バスの前方に、右車線を走っていた

トラックが突っ込んだ。

さっきの雨でスリップしたのかも。  

僕は後ろの方に座っていた。
 
後ろの方は大丈夫だろう。そう思っていたが、

みるみる炎が炎上していく。


「後ろの人、真ん中の人は非常出口から!」

先生の叫び声が聞こえる。

幸い後ろには扉があり、炎に包まれたバスから

出ることが出来た。

クラスの大半が出た所か。

美玲はどこ?

集まってざわざわと話している

クラスメートの中に彼女の姿を見つけられる

事が出来なかった。

今回の世界では僕が歴史を変えた。

だから、紗弥加は何もしていないし、

運命だって変わるんじゃないかって思ってた。

そして、隣の席に座っていた紗弥加に問う。

「美玲、みた?、」

「うちの隣に座ってたんやけど、  

先に出て!って言われて手を離しちゃったんよ…」


そう言う紗弥加の目には涙が零れんばかりに

溜まっている。

「折角、美玲が手を握ってくれたのに…」

このループでは歴史が変わったお陰で

美玲と紗弥加にあった実家同士の

いざこざもなかった。

「私、ほんと最低だよ」

そう言い捨ててその場に泣き崩れた。

誰もが他の生徒たちを待っていたとき。

先生と周りの野次馬の大きな声が聞こえた。

「爆発するぞ!!逃げて!」

動揺する生徒ばかりだった。

高速を出来るだけ速く走れと。

僕たちも自分の事で必死だった。


周りは野次馬だらけで、全然進めなかった。

でも。進まなきゃいけない。



そして、後方から大きな爆音が聞こえ、

僕は膝から崩れ落ちてしまった。

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