「おお!透!久しぶり~!」
何週間ぶりかに登校し、仲の良い椿と会話を交わした。
「元気なさそうだな?どうしたんだよ?」
"美玲がいなくなった"本当はそう言いたかった。
でも、目の前にいる椿に言ったって無駄。
そう思い何もないよと返した。
その日から学校へは通い続けたが、美玲がおらずしんとしている
机を見るのはもう嫌だった。
クラスの奴だって、そんなことどうだって良いんだろ?
クラスメートが一人二人いなくなった、でも、何も思わないだろ?
そんな事を思ってしまう自分が本当にムカついた。
なんで、こんなことになってしまうんだろう。
何もかも、全てを投げつけたくなってしまった。
「これって…」
僕が見つけたのは埃を被った問題集。
難関私立の問題集が載っている。
僕と美玲が放課後一緒に解いたもの。
なんで、こんなところにあるんだ…?
解けなかった問題。
確かあれは、77ページの5番だったかな。
そうやって該当するページを開く。
ねぇ、透、やっと見つけた?
わかりやすいところに置いたんだけどなぁ、
これが私からの暗号だよ。
ちゃーんと解いてよね?
そう殴り書きで書いてあった。
そして、挟まれたひとつの短冊。
雨に濡れて何を書いてあるか全く分からない。
でもここに、彼女からのメッセージがあるんだ。
ぼくはそう思った。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。