第37話

泣いてしまった。
13
2019/11/08 14:53
僕には、書けない。
上手いことなんて言えない。言葉を上手く紡げない。
文才あるよ、十分上手だよ!
そんなの、もう聞き飽きた。思ってもいない癖に。
文才があったら、本当に上手なのならば、こんな事で悩んだりしない。
ただ少し、みんなの知らない言葉を知ってるだけ。
たったそれだけ。
自分のことや自分の意見を言葉にして伝える能力なんて塵程もない。
もっと、もっと上手いことを書かなければ。
もっと上手く伝えなければ。
わかってる。僕には無理だ。
僕には出来ない。
もう、書きたくない。
途中で放り出すのは嫌だ。だけど、やっぱり無理だ。
無理だ、無理だ、絶対無理、出来ない、僕には出来ない。

文を書きたくないなんて、初めて思った。
書けない。書きたくない。
いつの間にか、涙が止まらなかった。
悔しくて、悲しくて、苦しくて、辛くて。
友達に相談しても、誰もアドバイスなんてくれない。
励ましの言葉も、上手いと思うけどなぁ、とか、文才あるよ!、上手だよ!、十分だよ!なんてものばっかり。
そんなものがあって本当に上手なのならば、悩まない。相談なんかしない。

励まして欲しいんじゃない。
上手だなんて言われたくない。
完璧だなんて言わないで。
未完成で、ボロボロで、汚くて、気持ちの悪いこの文を、褒めないで。
心伴い言葉を言わないで。
僕は…。


私は、書きたくない。
私には、出来ない。
上手いわけが無い。
なんで?なんで私なの。
どうして。
もっと上手い子は沢山いるのに。
その子たちにばかり頼むのも良くない、というのも分かる。
だけど、ならばどうして私は二つも書かなければいけないの?
テスト勉強もしないといけない、テスト期間だと言うのに、どうして。
受験生なのに。
一月には私立の受験がある。
十二月なんて本当に大詰めの時期。
それなのに、本番は十二月。
十一月のイベント本番まであと八日。
テストまで、あと十一日。
時間が無い。
能力がない。
足りない、足りない、ダメだ、このままじゃだめだ。やっていけない、どうしようもない、無理だ、不可能だ、そんな力も能力もない、私には。僕には、出来ない。

上手くない、上手くなんてない!
言わないで!
どうして褒めるの?!
こんなに必死に悩んで、相談しているのに、どうして、どうして褒めるの!
私は、褒めて欲しいんじゃない、賞賛の言葉が欲しいんじゃない!
私は!
下手だって言われたい!
ここが駄目だって、こうしなさい、って。
誰も、誰も言ってくれない。

もう、何を伝えたかったのかすらもわからない。それが分からなければ書けないのに。
だからもう、書けない。
出来ない。
私には。無理だ。

泣いたって、叫んだって、喚いたって、何も変わらないけど。
ペンを持って、作文用紙に向かって言葉を綴ることが、怖くなった。
書きたくない、そう思ってしまう。
拒絶してしまう。
そんなこと、今までなかったのに。

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