第9話

#8
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2021/01/25 05:50
私はタロットの結果を見たままボーっとしていると、肩を軽く叩かれた。

振り返ると、葉月さんが立っていた。
羽音
……なんですか?
葉月
タロットの月ね…いま朧げな悩みでもあるの?
羽音
…朧げとかではなく、普通にきっぱりとした悩みです。特に他人に言う必要のない、自分で冷静に考えなければいけない内容ですが。
葉月
花音かおんさんのこと…?
羽音
分かってるなら、聞かないでくださいよ。
……空気を読んで欲しい話題だった。その話でどんだけ、私が傷ついた事か知らないのに。
羽音
あんたたちには分からないですよね。こんなにも世の中がクソみたいだって。本当大きい力に流されるだけなんだって。
はぁと大きなため息をつきながら私は早口でそう言った。
葉月
……ごめんね、昔から空気読めなくて。ずっと、そう。そう言われたから、小学生になった時からここに帰りたくなくなったんだ。
そう言った葉月さんは少し寂しそうな顔をしていた。
羽音
………なんで、そんな顔、してるんですか。
葉月
…世の中、結局、空気を読める、自我を隠す人間が一番必要なんだよね。
葉月
でも、私は自我を隠すことが自分のポリシーに反対しているから隠さないで。
葉月
子供の頃は、隠さなくても、少し面倒臭いだけで終わるんだけど…年齢を重ねたら。
羽音
誰にも構われない。孤独になる。孤独は言い過ぎでも、頼れる人がいなくなる。
葉月
…そう。なんで、羽音ちゃんはそんなことを知ってるの?
羽音
部活の先輩に、いるんですよ。その人も、そうやって悩んでいるみたいで。
そう言いながら私は遥先輩を思い出す。

…ま、私としては遥先輩が自己中だと思わないが、那由がものすごく言ってたこともあるのか、遥先輩自身はそのことで悩んでいることをこないだの土曜日の部活の際に、話していた。
葉月
んで、花音さんって本当は悪くないんでしょ?
羽音
…貴方に花音の何を知ってるんですか。
葉月
確かに私は花音さんの事、知らないよ。会ったことがあんまりないし。それでも、なんとなくわかるよ。
葉月
警察側が出している情報をしっかりつなげると、ある不審な点が出てさ。まず、なんで被害者は花音さんにやられたとしたら、普通に出てくるの?
葉月
少なくとも、本当に花音さんが、首を絞めた・・・・・・としたら、走って逃げるのが反応として正しいと思うんだ。
葉月
でも、被害者として出されて走っている防犯カメラの映像をよく見ると、髪の毛が長いんだよね。
葉月
その被害者って男性だったよね、確か。その男性の髪の毛の長さを見てもほぼほぼありえない、肩よりしたら辺まで伸びている髪の毛だったんだよね。
その考察はあっている。










私の姉、真栄田花音は現在殺人未遂罪で、裁判にかけられている。

実際は、免罪だ。

しかし…世の中は大きい力に流される。

まず、花音が殺人未遂をしたとされている相手は、「如月きさらぎ 大輝だいき」だ。

そいつは如月財閥の御曹司。

如月財閥がいるからこそ今の日本が成り立っていると言い切ってもいいほどの力がある。

如月大輝と真栄田花音は元恋人だ。

花音は大輝の事を本当に愛していた。

だから、大輝が世の中の感情を自分に好意的な目に向けるように、自分が可哀そうな人にさせるために、花音の想いを利用した。

大輝が花音に対し、「俺はもう辛いんだ。殺してくれ。」と言いながら縄を渡し、それに対して、花音は大輝の思いを優先させるために、縄で大輝の首を絞め始めた。

でも、花音もこの日の大輝の行動が怪しかった為に、すべての会話を録音していたのだ。

そして、大輝は、「通報するから」と言い、彼自身の携帯を取り出した。

…その時、彼は軽く狂ったように笑ったらしい。

それに驚いた花音は焦って外に出ていった。

先ほど葉月の会話に出てきた防犯カメラの映像がこの焦って外へ出た花音である。

その後、大輝は何かをして、警察に花音を逮捕させた。

花音も、証拠を出したのだが、それは警察側でなかったことにされた。

そして、今のところまでくるのだ。









……正直、この話を聞いたとき、私は世の中、警察が信じられなかった。

大きな財閥の如月財閥の方にすべて流されていったことに、驚くより、絶望した。

花音が嘘をついているって?

いいや、嘘なんてついていない。

だって、実際に聞かせてもらったもの。

…先ほどの説明に出てきた、「俺はもう辛んだ。」と大輝が言った所から、逃げてきたところまでの録音を。

………現在、花音は地方裁判所での判決で無期懲役を言い渡された。

しっかり、花音と弁護士さんは控訴をした。

そして、次の裁判となる高等裁判所では先ほどの音源を出す予定だ。

そして、被告人の証人として私が出ることとなった。

一応プライバシーを守ってもらえることを約束してるから。








葉月
私はね…兎に角今を楽しみたいんだよね。
私が葉月さんの話に何も言わないでいると、葉月さんから話し始めた。
葉月
正直ね、私からすると、羽音ちゃん、今がまったく楽しなさそうだなと思うんだよ。だから、楽しむように、変えて欲しいなぁ。
葉月
花音さんの事、大好きなら、花音さんの事を支えながらも花音さんが無罪だと分かられた時、花音さんが羽音ちゃんの姿を見て安心できるような生活、してたほうがいいんじゃないの?
羽音
……花音がいない中、楽しみたくないんですが。
葉月
いやー、高校三年の私から言うが、高校は、楽しまないと。
そう言った葉月さんの顔はとても寂しそうだった。
羽音
…楽しくなかったんですか。
葉月
そりゃ、お土産を買っても上げる友達、いなんだからだね。
そう言えば、先ほどの水族館で、葉月さんはお土産を買っていなかったが、その理由が一番大きいのだろう、きっと。
羽音
………考えとかなきゃ、ですかね。
葉月
花音さんは誰にでも優しいから自分が悲しいより周りに楽しんで欲しいんじゃないかな。
葉月
じゃないと、自殺幇助ほうじょ…をしないんじゃない?
羽音
……そうですよ、いつも周りの手伝いをして損をしていた人ですから。
葉月
そんな花音さんにとって大事な妹さんが自分のために悲しんでいたら嫌だと思うよ。
そう言った葉月さんの話はあんまり納得がいかなかった。
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作者(惟華)
作者(惟華)
……葉月や羽音、花音の話でわかんない所あったらコメントで聞いてください。

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