私はタロットの結果を見たままボーっとしていると、肩を軽く叩かれた。
振り返ると、葉月さんが立っていた。
……空気を読んで欲しい話題だった。その話でどんだけ、私が傷ついた事か知らないのに。
はぁと大きなため息をつきながら私は早口でそう言った。
そう言った葉月さんは少し寂しそうな顔をしていた。
そう言いながら私は遥先輩を思い出す。
…ま、私としては遥先輩が自己中だと思わないが、那由がものすごく言ってたこともあるのか、遥先輩自身はそのことで悩んでいることをこないだの土曜日の部活の際に、話していた。
その考察はあっている。
私の姉、真栄田花音は現在殺人未遂罪で、裁判にかけられている。
実際は、免罪だ。
しかし…世の中は大きい力に流される。
まず、花音が殺人未遂をしたとされている相手は、「如月 大輝」だ。
そいつは如月財閥の御曹司。
如月財閥がいるからこそ今の日本が成り立っていると言い切ってもいいほどの力がある。
如月大輝と真栄田花音は元恋人だ。
花音は大輝の事を本当に愛していた。
だから、大輝が世の中の感情を自分に好意的な目に向けるように、自分が可哀そうな人にさせるために、花音の想いを利用した。
大輝が花音に対し、「俺はもう辛いんだ。殺してくれ。」と言いながら縄を渡し、それに対して、花音は大輝の思いを優先させるために、縄で大輝の首を絞め始めた。
でも、花音もこの日の大輝の行動が怪しかった為に、すべての会話を録音していたのだ。
そして、大輝は、「通報するから」と言い、彼自身の携帯を取り出した。
…その時、彼は軽く狂ったように笑ったらしい。
それに驚いた花音は焦って外に出ていった。
先ほど葉月の会話に出てきた防犯カメラの映像がこの焦って外へ出た花音である。
その後、大輝は何かをして、警察に花音を逮捕させた。
花音も、証拠を出したのだが、それは警察側でなかったことにされた。
そして、今のところまでくるのだ。
……正直、この話を聞いたとき、私は世の中、警察が信じられなかった。
大きな財閥の如月財閥の方にすべて流されていったことに、驚くより、絶望した。
花音が嘘をついているって?
いいや、嘘なんてついていない。
だって、実際に聞かせてもらったもの。
…先ほどの説明に出てきた、「俺はもう辛んだ。」と大輝が言った所から、逃げてきたところまでの録音を。
………現在、花音は地方裁判所での判決で無期懲役を言い渡された。
しっかり、花音と弁護士さんは控訴をした。
そして、次の裁判となる高等裁判所では先ほどの音源を出す予定だ。
そして、被告人の証人として私が出ることとなった。
一応プライバシーを守ってもらえることを約束してるから。
私が葉月さんの話に何も言わないでいると、葉月さんから話し始めた。
そう言った葉月さんの顔はとても寂しそうだった。
そう言えば、先ほどの水族館で、葉月さんはお土産を買っていなかったが、その理由が一番大きいのだろう、きっと。
そう言った葉月さんの話はあんまり納得がいかなかった。
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。