私の家。そこは自営業の居酒屋である。
夜遅くまで営業していて、そこそこ儲かっているような居酒屋らしい。
そんな居酒屋の玄関を開けながら私は元気よく挨拶する。
常連客のゆっさんに迎えられながら私は、お店の奥の階段を上っていく。
そこは私の家だ。
自分の部屋に入ってため息をつく。
片道40分の通学路はいつになっても疲れる。
そんな言葉を自分にかける。
普通にこだわるのは、自分の性格なのだろうか。
そんなことを考えながら私服に着替えた私は階段でまた下に降りていく。
そんなことを言いながら卵焼きを食べているゆっさんはほんのり酔っているようだ。
父さんは料理を作りながら私を見た。
苦笑しながら父さんから作ってもらっておいた夕飯を持って上の階へと行く。
本当は居酒屋で食べてもいいが、他の人に迷惑をかけたくないし、たまに同級生が両親と来たりするので、それを回避するために一人リビングで食べる。
作ったばかりであろう料理は暖かく、自分の体を温めてくれる。
迷惑をかけてばかりではいけない。
***
そんな言葉を呟いてみる。
自分はどちらなのだろう。
お弁当を食べながら呟いてしまったので、その言葉は目の前で一緒に食べていた那由にも聞こえていてしまったようだ。
そう言うと、那由は黙ってしまった。
昼休みの終わり、那由がボソッとそう呟いたのが私の耳に届いた。
***
そんなことを言いながら私は帰りの準備をしていた。
そう、今日は寄らなければいけないところ…というか用事がある。
その用事の場所の利用時間が今日は早めということなので、それに合わせて部活を休まさせていただいた。
そう言って普段は一人ではない、まだ日差しが照っている時間に駅へと向かい始めた。
***
そう言われて私はとある場所を出ていく。
自分の事を普通だと思っても私は気になる。
皆、自分が見られる絵画の限界の半分以下しか見ていないのにその部分だけが作品だと思っている。
実際は隅から隅まであってそこも併せて作品になっているのに。
そんなことを呟きながらため息をつく。
現在19時。
夜の空気は冷たい。
でも、私の心よりかは温まっている空気。
またため息をつきながら目の前に来たバスに乗る。
先ほどまでいた場所の最寄りは、バスに20分ほど乗ればつく大きな駅。
バスの中の景色を見るのは楽しい。
乗り始めた時には田んぼなどがあるが、どんどん都会の景色になり、最終的には繁華街の中心である駅に着く。
そんな景色を見ながらボーっとしていると、いつの間にかバスは繁華街の端くれに入った。
端くれにある建物からどんどん中高生らしき男女が出てきている。
皆、輝いた目をしている。
まるで、麗那ちゃんのような目。
まっすぐ未来を見ている目。
そう呟きながらその子たちを見ていると見覚えのある顔がいた。
それは、きょろきょろしながら俯きながら早歩きで帰っている、クラスの中の麗那ちゃんと真逆な私服姿の麗那ちゃんだった。
後ろから来るバスからの視線を感じ、バスが通り過ぎるのを見てみると、バスに私の通う高校の制服を着た女の子がいた。
そんなことを言う私はきっと学校とは別人だ。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!