晴々とした空の下、私は学校から急いで家への道を走っていた。
そして、家の裏口から自分で鍵を開けて入りながら大声で言葉を発する。
そう言うと、お店の方から母さんがやってくる。
母さんは長袖のTシャツを七分袖くらいまてたくし上げている。
そして、下には、ふんどしのようなものを見に付けたその姿は私にとって、憧れだった。
自分がやりたいことをそのまま実現しているからだ。
この居酒屋は母さんの小さい頃からの夢を叶えたものだ。
夢を叶えることを私がその頃に好んだのも、母さんがいたからだろう。
そう言って私は家を駆けだす。
目的地は、学校の近くの公園。
公園には既に同じクラスの友達、三人くらいがいた。
そう言って四人で鬼ごっこを始めた。
そう言って、私は三人より早めに公園を出たのだが…
公園に水筒を置いてきてしまった。
水筒は体操の休憩時間に絶対飲むため、ないと困るものだった。
そう言いながら私は急いで公園へと足を向けて駆けだした。
水筒を置いた記憶のある公園のベンチにある事を確認すると同時に近くに先ほどまで一緒に遊んでいた友達が視界の中に入ってきた。
その子たちはベンチで座りながら何か話しているみたいだ。
そう思い、私は忍び足で近づく。
初っ端からそんな話が聞こえた。
二人目がそう言った。
3人目まで言うと、私の目から透明な雫が少しずつ流れてきた。
その時は結局水筒を持ち帰らずに家に戻った。
そう言いながら裏口の扉を開ける。
「お店」と言う言葉を使うのは普段通り、そのはずなのに私にはその言葉が頭の中で黒く渦々と回っていた。
そんな調子のまま、私は習い事へ向かった。
習い事が終わり、家に帰ると、既に姉の花音が帰ってきていた。
そこまで言ったとき、私は思い出した。
「シスコン」と呼ばれた事。確かに、私は姉の花音が大好きだ。
それだからと言って、シスコンと言われていい気分はしない。
ならば、今日から大好きではなく好きか普通くらいの反応にしようとこの瞬間で思ったのだ。
嘘。
「たまには」ではなく、「これからは」が正しいが、流石に花音の前でそのようなことを私は話せなかった。
花音のしゅんとした顔にこっちまで悲しくなったが、もうクラスメイトに陰で言われないようにするためにも、仕方がないと思い、その気持ちをグッと堪える。
そう言って私は部屋に入った。
今までは楽しく姉と話しながらこなす宿題も一人で少し寂しくこなし、終わった後、私はそう呟いてしまった。
その日から私は、家族との接し方を変えた。
おかげさまで陰で言われることもなくなった。
だって、一緒に遊んでいた子たちが「前までは変だなって思ったけど、変じゃなくて接しやすくなった!」と言ってくれたから。
その後に、「陰口を言ってごめん。」とも謝られたし。
でも、家族にはきっと迷惑をかけてしまった。
だからなのだろうか、それともたまたまなのだろうか。
家族との関わり方を変えて、一年くらい経った日の事であった。
その日、私は塾に行っていた。
普段通り、休み時間に教室の中で近くの席の子と話していると、突然事務の人が教室に入ってきて、「真栄田さん!」と呼ばれた。
そんなことを言いながらもとりあえず帰る準備をする。
話していた子やその周りにいた子には羨ましそうな声を上げているが、私はとてつもなく不安になっていた。
父さんが焦った表情をして塾にやってきた。
自分が後ろの席に座ろうと思い、ドアを開けると、既に姉が座って寝ていた。
気持ち良さそうに寝ていた制服を着たままの花音は寝ぼけたような口調のままそう言った。
そうしてお姉ちゃんは姿勢を直す。
車に乗りながら、私は、塾での内容を思い出していた。
お姉ちゃんたちの会話には参加せず。
着いたのは大きな大学病院だった。
そのまま軽く早歩きで病院の中を進んでいく。
私が尋ねると花音がそう返してきた。
ものすごく驚いた。
そう言っても二人は黙ったままだった。
そして、消毒とかのゾーンに来て、入ると、母さんは沢山の電子機器に繋がれていた。
瞼は閉じられたままで。
そして私たちが集中治療室に着いてから五分後、母さんは永遠の眠りについた。
そこから、憧れだった母さんがいなくなった私は精神が崩壊した。
家に籠りっぱなし。
現実逃避をし続けた。
それを続け二年。
流石にやばいと思った私は、中学に入るタイミングで学校に何とか復帰することができた。
でも、悲劇は、続く。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。