第12話

気づき始めた思い 「椿編」
31
2019/09/27 07:31
俺は、今学校の屋上で、昼飯を食べながら
空を静かに眺めていた・・・
羽柴 椿
羽柴 椿
モグ、モグ・・・
ガチャ・・・誰かが、屋上のドアを
開けて、入って来た・・・
羽柴 椿
羽柴 椿
あっ!高月先輩・・・
高月 はじめ
高月 はじめ
なんだ、赤髪野郎やろうか・・・
羽柴 椿
羽柴 椿
赤髪野郎って、この髪、地毛なんです
けどね・・・
高月先輩は、屋上の床にドカッと
腰を下ろして、昼寝を始めた。

本当に、この人は、自由だな・・・・

俺は、ばあばの作った弁当を、食べる。
羽柴 椿
羽柴 椿
先輩は、よく、屋上に来るんですか?
高月 はじめ
高月 はじめ
あっ?
余計な事を、言ってしまい
イラつく、高月先輩、恐い・・・
高月 はじめ
高月 はじめ
なんで、お前にそんな事、聞かれ
なくちゃいけないんだ?
羽柴 椿
羽柴 椿
すみません、俺、そんなに高月先輩の
こと、知らないのに、聞いたりして
高月 はじめ
高月 はじめ
・・・
羽柴 椿
羽柴 椿
じゃあ、俺、今から独り言を言います。
関係ない話ですけど、よかったら
聞いてください・・・
羽柴 椿
羽柴 椿
俺、一緒に暮らしてる女の子が
いるんです
羽柴 椿
羽柴 椿
最近よく、その子の事を、深く考えて
しまって、自分でも何をしたいのか
わからなくて
高月 はじめ
高月 はじめ
ちょっと待て!
高月先輩が、ゴロンと俺の方を向く
高月 はじめ
高月 はじめ
お前、女と一緒に暮らしてるのか?
以外にも、くいついてきた・・・
羽柴 椿
羽柴 椿
はい、でも、その子に触れることも
できないんですよ・・・
高月 はじめ
高月 はじめ
当たり前だ、一緒に暮らして
手も出すなんて、そんな奴許せねえ
こんなに長く、不良の高月先輩と
話せる日が来るなんて・・・・

しかも、先輩は、ちゃんと俺の話を
聞いてくれている。
羽柴 椿
羽柴 椿
その子は、俺にしか見えない
幽霊なんです・・・
高月 はじめ
高月 はじめ
はあ?
ギロリと、俺をにらむ高月先輩、
そして、胸ぐらをグイッと掴む。
高月 はじめ
高月 はじめ
話を聞いてりゃ、それは、お前の
くだらねぇ妄想じゃねえか!!
高月 はじめ
高月 はじめ
マジになって聞いた俺が、情けねえ
羽柴 椿
羽柴 椿
先輩は、誰かのことを真剣に
考えた事はあるんですか!
高月 はじめ
高月 はじめ
お前・・・ふざけるのも
俺は、先輩を、バシッと突き放した。
羽柴 椿
羽柴 椿
ふざけてなんか、ないです
羽柴 椿
羽柴 椿
その子が、いつかは、自分の前から
いなくなるって、気づいた時、
すごく悲しい気持ちになって・・・
高月 はじめ
高月 はじめ
・・・・
羽柴 椿
羽柴 椿
なんで、こんな気持ちになるのか、
意味がわからなくて、別に友達でもないのに・・・
俺は、少し眉をひそめた。
何言ってんだよ、俺・・・



高月先輩は、チラリと俺を見て
視線を外すと、静かに話しだした。
高月 はじめ
高月 はじめ
俺にも、1人だけ、いたよ
真剣に考えてた奴が
羽柴 椿
羽柴 椿
えっ・・・
高月 はじめ
高月 はじめ
それが、恋とか、愛とか、俺は、1回も
思わなかったけどな・・・
高月 はじめ
高月 はじめ
気がついたら、そいつの事ばかり
考えて、追いかけて・・・知らない
うちに、好きになってた
高月 はじめ
高月 はじめ
でも、あいつは、俺を選ばなかった。
だからといって、すぐに、この気持ちを
忘れられるわけでもない・・・
高月 はじめ
高月 はじめ
お前が、後悔する道を選ばなきゃ
いいんじゃねえの?
羽柴 椿
羽柴 椿
高月先輩・・・
高月先輩は、「なるべく、俺に近づくな」と
言って、屋上から去っていった。
羽柴 椿
羽柴 椿
俺が、後悔しない道・・・
その言葉が、俺の心に深くささり
こんだ。
羽柴 椿
羽柴 椿
気がついたら、そいつの事ばかり
考えてて、知らないうちに好きになって
たか・・・
羽柴 椿
羽柴 椿
俺は、流花りゅうかの事が、好きなのか?
チャイムが鳴り、昼休みが終った。
羽柴 椿
羽柴 椿
俺は、流花が・・・あ〜!!
考えるな、俺のアホ
その日の授業は、少しも集中できなかった。

そして、頭から、高月先輩の言葉が、はなれる
ことは、なかった。

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