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第51話

Vol.5
当時、国際通信を独占し巨額の利益を上げる特殊会社KDDについて、捜査の過程で明らかにされたのは、元郵政省高級官僚である板野社長の公私混同・会社を食い物にする経費の使い道であり、世論の怒りは凄まじかった。
また、過去3年間で58億円という巨額であったKDDの交際接待費は、判明分だけで、1億2000万円が郵政族を中心にした政治家190人に対し、パーティ券購入や政治献金としてばら撒かれ、郵政省幹部らに対しても、プライベート海外旅行費等、過剰接待が明らかになった。しかし、政官界への工作状況は、最後まで追及されず、政治家の立件はなされなかった。

当時、浜田幸一衆議院議員のラスベガス賭博事件・鉄建公団乱脈経理事件等、相次いだ不祥事により、大平正芳首相の威信は大きく低下した。1980年5月16日には社会党が提出した内閣不信任案が、自民党反主流派の欠席によって可決され、ハプニング解散となり、憲政史上初めて衆参同日選挙が行われる事態を招来した。これ等は、ほんの一例に過ぎないが、処が今はどうであろうか…、威厳を繕うだけの傀儡ではないか。
「じゃ和代、貴女はどうなの?」内なる私が問いかけるも、私には少なからずも良心の呵責が残っている。私自身のつまらぬエゴの為に招いてしまったのが楊や王達の結末ではないか。異国の地であろうとも、無残にもその魂がこの地上から消滅したのだ。その魂に鎮魂歌を捧げるのであれば、懺悔に抗うように正義を以て立ち向かう場所は、奴の関連を洗い直すことではないだろうか。私はそのように内なる私に答えた。あの事件には、それ程深いものがあったのだろうか…。いや、事件そのものではなく、恐らく奴を取り巻く何かが判れば、全ての解答を得ることができるのではないだろうか。
昨夜私は思い出したように携帯電話のaddress登録者の検索をした。
「あった」
河村の登録を消去するのを忘れていたのであろうか…、直ぐ様発信ボタンを押したものの
―― お掛けになった電話番号は、現在お客様の都合により通話ができなくなっています。お掛けになった電話――――、機械的なアナウンスが私の耳奥に冷たく流れるだけだった。そして昼食時と、今主席検事室に赴く前に掛け直してみたものの、河村に繋がることはなかった。
「主席検事、誠に申し訳ないのですが、本月一杯を以て辞職を願いたく思っています」
「松崎君、気は確かかね?」
笑みが消えた加島主席検事の顔に驚愕の色が明らかに浮かんでいた。
「但し、私自身が抱く疑念だけは、どのような答を得ようとも晴らしたく思っています」
「君か抱く疑念とは何なのですか。また何を君をそこまで動かすのですか」
「懺悔による正義観念です」
「懺悔?正義観念?それは楊のことですか?まぁいいでしょう。但し、これだけは君に言っておきましょう。いいですか、我々にも守るべき者がおり生活があるということを」
「ありがとうございます。処で主席検事、蕎麦処『田庵』にはよく行かれるのでしょうか」
「………」
最後の質問に何の意味があるのか―――、そういう視線が眼鏡越しに冷たく向けられた。その目には既に私に対する憐れみを浮かべていた。もう引き返せないかもしれない。決して私は間違っていない。強く自分に言い聞かせるや、退室の為に一礼を済ませ踵を返した。
🎵I miss you 

I miss you
今宵も ひとり星に包まれ僕は君だけのために
切なさ隠せず 唄うLove song

I miss you
色んな夢を描きながらも
僕が歩みゆく道は
君しか見えない いつもLove need you

君に伝えたい この想いは両手を広げても まだ足りない
☆この地球の裏側に 例え君が居ても
僕の心に微笑む君はMoon light
奪いに行くさ☆

星の数より この想いは
翳りを見せないdiamondさ☆~☆Repeat

I miss you
寂れた想い 夢にもたれて
僕は君だけを望む
愛しさ隠せず 届け I miss you
I Love you

( Words: Wild Chan )

検事職に於ける給与に至っては正・副の違いはあるけれど、年功に応じて基本給は定められており、プラス起訴1件辺りの歩合制となっている。この歩合制に対しても矛盾を感じていたのは確かなの。
「松崎検事、今月一杯で辞めるって本当なんですか」
主席室を退室してから私の持ち場に戻るや、片瀬が驚き様に言葉を投げてきた。
「随分情報が早いのね」
私は嫌味っぽく片瀬に答えた。外はまだ明るさを残している。
「いえ、今しがた総務から電話があって、受理されたと言っていましたから。それよりも松崎検事、前々から気になっていたのですが、何があったのですか」
「そうね…」私は溜め息を交えながら言葉を繋いだ。
「何をどのように説明すればいいだろうか…。強いて言えば検事という生き方に自信が失せたというか、正義の在り方に疑念を抱いたとでも言えばいいのだろうか…」
「………」
「ま、今日は残務整理をこなし少し遅くなるけど、片瀬君、帰り何処かで夕飯を奢るから付き合いよろしく」
そう言い置くと、デスクに積み上げられた幾つかの書類に目を通し始めた。足早に退庁する同僚の挨拶を受けながら、彼等はこの検察官という在り方に何を考えているのだろうか…、何気無く思いが過った。

同時刻―――。
「名無しさんでは失礼かククク。扨て松原さん、先ず一言申し上げておきますよ」
「………」
そう奴が言うと私に煙草を差し出した。しかし私は煙草を吸わないことを理由に断った。
「ククク、いいですか松原さん、既に貴方は犯罪者である。それも残忍な殺人者としてね」
「しかし、それは松山、貴様達の強要ではないか!!」「ククク、松原さん、証拠は?いいですか松原さん、証拠隠滅は貴方方の専売特許ではないですか。それ自体が犯罪と言えませんか」
そう言うと奴はリモコンを手にしテレビを作動した。
「こ…これは…」
「観ての通りですよ松原さん。正気沙汰でない貴方ですよ。そして貴方の目には狂喜に満ちている」
「ち、違う。これは私でない……」
「それでは、今流行りのYouTubeに流しましょうか?ククク」
私は項垂れるしかなかった。