無料ケータイ小説ならプリ小説 byGMO

第9話

シャバ
「クッ、ククク。从那以后是不是三年!?(ツォン ナ- イ- ホウ シ- ブ- シ- サン ニエン!?あれから三年か!?)」
平成2△年4月×日、富士山山嶺の某所に1台の大型トラックに重なるようにパールホワイトのセンチュリー・リムジンが停まっていた。春の陽射しを遮るような風が緩やかに靡(なび)いている。
積み荷を降ろしたか大型トラックの荷台の中には、迷彩服を着た屈強な2人の男に腕を捻られ肩を抑えつけられ、膝を崩し苦痛に顔を歪めた河村安男がいた。
「河村、ククク。本当なら再会を祝している筈だがククク。こういった形を避けたかったよ」
顔に笑みを浮かべながらも、憐れみを宿した目で見下げるように男は言い放った。
「辛抱してくれや。あの時は仕方なかったんや」
哀願する河村の言葉を冷たく足払うように小さく笑い、加えたピアニシモに火を点け、ゆるりと紫煙を吐き出した。微風に煽られた紫煙は直ぐ様山嶺に散り消えた。只見つめる男は3度目の紫煙を吐き出した時に、男は静かに言葉を発した。
「河村。友達とは何だと思う。庇うことが友達としての1つのルールだと思うが、クク違うか」
そい言って再び口にフィルターをあてがい、静かに紫煙を吐き出し言葉を続けた。
「右翼の支部長が、あのくらいの事件で、クク寂しいよな」
「違う、違うんや!!松山さん、確かにワシが悪かった。しかしや、刑事の言う通りにせんと国際事犯として松山さんとこの本部までガサ(捜査)かける言われたんや。そや、公安まで動いてましたやろ」
何が起きているのか?、鳶が弧を描くように空を舞っていた。
「クク、クククク。よくある手だな。だが河村、法廷での証言は不味かったと俺は思うがな」
「………」
「武富士だったか?元会長の言葉。クク、『ヤクザは右翼に強く、右翼は警察に強く、警察はヤクザに強く』クククク、旨く言ったものだよ。ところでだ河村、武士道精神とは如何なるものかを、クク俺は見たいのだが。クク、エセでないのならな」
いつもの陽気な松山ではない。言葉には笑いが含まれているんやが、どう言えばええのやろか…そうや、目が何や氷のように冷たそうに感じるんや。それに迷彩の2人は何者なんや?初めて見る連中やが、ヤクザやない。プロやろか?まさか…………
ワシはどうなるんやろか…何で、こんな時に回想するんやろか…
そうや。確か松山がパクられて間もない頃やった。ワシは後輩の田中の誘いに応じて会ったのが、松山が所属する銀流会の三杉やった。
「河村さん、松山の幹部からも、よう訊かせてもろてま。愛國有和塾の支部長らしいでんな」
居酒屋[呑兵衛]での初顔合わせ時の三杉の言葉やった。
「河村さん、今俺の兄貴分やねん」
「そうでっか。申し遅れまして。ワシ河村安男と言います」
田中の紹介からワシは多少なりの警戒心を抱きながら挨拶を交わしたんや。
「ま、河村さん、堅苦しいことは抜きにして、今後の付き合いの意味も込めてゆっくり呑みましょや」
ワシも酒が嫌いな訳やない。ワシは三杉の勧められるがまま杯を重ねた。
「しかし、ワシ等ヤクザのシノギもきつうなりよったけど右翼団体はどないでっか」
日本酒の2合徳利を手にした田中の酌を受けながら酔いに任せ右翼活動の在り方を説明してたのや。
鯛の造りに箸を伸ばしながら
「ところで河村さん、松山の幹部とはどういった関係でっか?まさか舎弟か何かでっか?」
三杉がワシを覗くように言ってきたんや。
そうや。確か松山がパクられて間もない頃やった。ワシは後輩の田中の誘いに応じて会ったのが、松山が所属する銀流会の三杉やった。
「河村さん、松山の幹部からも、よう訊かせてもろてま。愛國有和塾の支部長らしいでんな」
居酒屋[呑兵衛]での初顔合わせ時の三杉の言葉やった。
「河村さん、今俺の兄貴分やねん」
「そうでっか。申し遅れまして。ワシ河村安男と言います」
田中の紹介からワシは多少なりの警戒心を抱きながら挨拶を交わしたんや。
「ま、河村さん、堅苦しいことは抜きにして、今後の付き合いの意味も込めてゆっくり呑みましょや」
ワシも酒が嫌いな訳やない。ワシは三杉の勧められるがまま杯を重ねた。
「しかし、ワシ等ヤクザのシノギもきつうなりよったけど右翼団体はどないでっか」
日本酒の2合徳利を手にした田中の酌を受けながら酔いに任せ右翼活動の在り方を説明してたのや。
鯛の造りに箸を伸ばしながら
「ところで河村さん、松山の幹部とはどういった関係でっか?まさか舎弟か何かでっか?」
三杉がワシを覗くように言ってきたんや。
はっきり言って、ワシはヤクザができるような男やない。普段はトラック乗りであるし、偶々(たまたま)トラック仲間に政治結社の塾生がいたことからワシは右翼活動に参加するようになったのや。けど三杉は何で執拗に松山を拘るんやろか?

有線から[ホタル]が流れていた。ワシもホタルかいな…

🎵ホタル

若しも この私の魂が
この地上から消え失せることがあれども
決して誰のせいでもありません
ほんの少し孤独に疲れただけ
誰にも知れずに南の島で
ホ ホ ホタルになりて
貴方の側で灯りたい
( Words: Wild Chan )

「三杉さん、松山さんと反目でっか!?」
酒に酔った勢いではないが、ワシは三杉に意地悪く問い掛けたんや。
「ハハハ 河村さん、それはあらしまへん。ワシも家内も安生(あんじょう)してもらってま」
顔前で手を振りながら三杉は笑い放ったんや。これはこれで1つのヤクザのタイプなんやろな。
「けど河村さん、此処だけ話でっけど」
そこまで言うと三杉は周りを確認するように見渡し、ワシに顔を近づけるように話を続けたんや。
「二代目を意識してか、ワシの兄貴分がええように思ってまへんのや。只、松山の幹部の考えが見えんと言うか…。おっと河村さん、ホンマに此処だけの話でっせ。ガハハハ。こら田中!河村さんに酒注がんか!」
確かに三杉の言うように松山は、ワシから見ても無垢と言うのやろか、そのくせに時々遠くを見てるような……アホなワシには言葉が見つからん。
ところで松山とワシの出会いでっか?年少、つまり少年院ですわ。そう言えば時々教員に呼び出されていたなぁ。何やったんやろか?未だに判らんのや。約20年になるやろか、再会したのが。只驚いたのはヤクザをしていたことにや。ヤクザするような男やなかったんやがなぁ…
しかしや、何でまたこの土地に来たんやろか?何気ない再会の中でワシは松山から名刺を受け取り
「クク。河村、暇なら遊びに来ればいい」
そう言えば、あの小さく鼻で笑うような癖は相変わらず続いていた。
(有)Office 松山
代表 松山 慎吾
事務所―――――
Tel ――――――
風の便りで時折、松山の噂は耳にしとった。
「松山さん、銀流会の二代目候補らしいでんな。けどまた何でこんな片田舎でヤクザなんかを」
「ククク。二代目には興味はない。只、ククク。人生ゲームかもな」

ワシは殺されるんやろか……、そう思うとブルッと背筋震えたのや。
「ククク。悟ったようだな。離してやれ」
松山の言葉で漸くワシの身体は自由になった。けどや、此処が何処かも判らん。ましてや逃げて殺されるより、もしかすればや助けてくれるかも…
「河村、煙草持ってるなら吸えばいい。そしてクク、あの事件の経緯を思い出すんだな河村」
ワシはもそりとハイライトを胸ポケットから取り出した時、松山がジッポーライターの火を差し出した。
「すんまへん…」
「コーヒーでも飲むか?おい!」
するとや1人の兵士が荷台から飛び下りリムジンに向かい、後部ドアを開けて半身を押入れた。運転席にはスーツを着た若い男が行儀よく待機している。
程なく戻ってきた兵士の手から別の兵士は缶コーヒーを受け取りカチリと栓を開けワシに差し出してくれたんや。
「すんまへん」
表情を崩さない兵士はさっと離れ、ポットから湯煙たつ紅茶をカップに注ぎ松山に手渡した。ワシの缶コーヒーも温かった。