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第33話

Vol.3
そっとシャワールームの扉を開けるとボディソープを流している慎ちゃんの背中が浮かんだ。十字架の傷痕から苦悩が流れているように映る。想像を絶するような痛みに、少年の心に何を植え付けたのだろうか…。彰子は思う。きっと異様な程の恐怖心と復讐心をもたげたであろうと窺える。その痛みをほんの少しでも彰子に判るだろうか…。ほぼ誰にも見せることのない傷痕、いや、仮に見たとしても決して慎ちゃんは語ることはしないだろう。その傷痕が癒しを求めているように映る。彰子はその思いに応えようと慎ちゃんの背中に頬を寄せ、母が優しく少年を労るように指で撫でた。慎ちゃんと同化したこの私にも心地好くシャワーが降り注ぐ。 
「慎ちゃん…」
吸い込まれるように私は甘ったるく名前を呼んだのに、そんな彰子を逆に子供をあやすように慎ちゃんは振り向き、濡れた彰子の髪を撫で上げながら言葉を向けた。
「彰子、もうすぐお客がくる。それに今日はお前の誕生日だろうが。その為に今日お前と過ごす1日を綺麗な1日にしたい。判るか」
「憶えてくれていたんだ…」
涙が込み上げてくる。今日逢いにきてよかった。