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第17話

Vol.3
ワシはダンマリを決め込んでいたのや。いや、言い替えればや、どこまで話をすればいいのか頭の中が混乱していたのが事実なのや。しかしや、現実に松山の名前が出ているようでは逃げようがないかもしれん。
「どうもお前の話には辻褄が合わん。懲役行くのは河村よ、お前の勝手やが三杉の件でお前は罰金で済むと思っているかも知れんが、偽装結婚で懲役2年ぐらいかの。ま、全てお前次第や」
すかしたり怒鳴ったりの日々の取調べの中で
「他に余罪があると訊いていますから、あるなら全てを明かした方が良いのでは」
松崎検事の言葉を思い返していたのや。
被疑者という者はおかしなもので、留置に戻るや事件のことより漫画本や週刊誌に気が向いてしまうものなんや。笑いたくなるけど、余程の事件でない限り、皆そんなものですわ。中には如何にして事件を免れるかを留置人同士で知恵を出し合う奴等もいれば、六法全書を開いて抜け道を模索する者もいるのや。
「河村、検事が何か言ってたやろ?折角お前ところの会社社長も弁護士つけてくれとるのにの。仮にや、三杉の件で罰金悪くて執行猶予中で別件でパクられては社長に申し訳たたんやろ。この際河村よ、右翼からも足を洗ってや、真面目にやり直した方が良いのではないか」「そうでんな…」 ワシは項垂れながら、そう答えるのが精一杯やった。自分をこのような形で清算することになろうとは…今日までワシは何をしとったのやろか。嫁に逃げられ、いや、それはワシの借金のせいやが、そんな思いに葛藤しながら留置生活が1日1日過ぎ行く中で精神的に追い詰められていた。
「ところで河村、銀流会の会長に何どあったようやが、お前何も訊いてないか」
「いやぁ、何も訊いてませんわ。何かありましたんか」
「ちょっとの。音が鳴ったのやが三杉も判らんと言っとるし」
ワシは何や知れんが、背中に電流が走ったように内心怯えが出ていたのや。

遡ることの8月□〇日AM6:40
「あははは、待てぇ。パンパン」
「バババ、バババ!!」
夏休みの少年達は、朝から元気がええもんや。ワシは日課である柴犬との散歩をしていた時ですわ。そんなもん、いちいち近所のガキの顔なんか覚えてることがないやろが。抗争?何言っとりまんねん。平和そのものでんがな。
「西岡さん、それでも何か思いあたる節はありませんかね」
ワシは怪我人でっせ。所謂被害者や。それより犯人捕まえるのが、アンタ等警察の仕事やろが。
「当然そうですよ。だからオタクの本部にも警戒体勢を敷いているでしょうが。それよりシノギでのバッシングとかは」
そやから何度も言うように、そんなことは何もない言うとるやろが。
「おい、コーヒー出してくれ」
何でワシが被害者やのに、こんな執拗に尋問されんといかんのや。ワシは苛立ちを抑える為に、付人の若い衆に催促した。
「もう1度訊かせて戴きますが、当時の現況を」
だからや、ワシは何時ものよいに銀と散歩しとりましてん。銀言うのは柴犬の名前ですわ。
ワシん家からは、そう離れていない小学校がおますのや。調度夏休みでっしゃろ。朝のラジオ体操がおますのやろ。散歩中に、ほれ何て言いますのかいな、ラジオ体操の音楽が鳴っとりますわ。
そうでんがな、元気なガキや思ってましたんや。そう言えばワシ等もガキの自分、あんなやったんやろうなと懐かしい感じましたんや。刑事はん、アンタも経験ありまっしゃろな。
何人ぐらいいたやろか…うん確か2人が逃げとって、2人が追いかけとったんやないかな?あれは刑事ごっこというやつでっかな。ガハハハ 痛っ!!「それで?」 
よう陽に焼けた子らやと思ってましんてん。確かにワシん家の近隣は当然ワシがヤクザと知っとりまっせ。しかしや、まぁワシの教育からして、若い衆は彷徨(うろつ)かすことはさせません。ところがや、ホンマ憎たらしいガキや。このワシにやで
「ヤクザのオッサン。バン、バン」
としやがるさかいに
「こら!!クソガキ!!」
と踵変えて怒鳴りましたんや。するとや
「パーン!!」
という音がした思ったらや、何やワシの尻(ケツ)が熱痛いや思って尻餅ついて手を当てたら血でんがな。
「ホンマやろな?」
何度訊かれても、これ以上何もあらしませんがな。それよりも大体の調べはつけとりまんのやろな。
「鑑識の結果、ベレッタ M1951 / Beretta M1951の22口径の何れかやということやが詳しい調べとる。しかし子供がね… 」
[ベレッタ M951]
モデル 全長 重量 口径 装弾数 製造国
M1951(M951) 204mm 935g 9mm×19 8+1 イタリア
M952 ?mm ?g 7.65mm×22
1953年にベレッタ社が軍用拳銃として開発した自動拳銃。
ハンマー露出式のシングルアクション撃発機構で、ドイツのワルサー P38に似たショートリコイルと降下式のロッキングブロックが組み込まれている。ベレッタ初のブリーチ閉鎖式の自動拳銃で、1980年まで製造され、M92の元型ともなった。
同社のM1934の後継としてイタリア軍に採用されたほか、エジプトやイラクでもライセンス生産された。
1955年には対テロ用としてM1951Rが開発された。"R"は"Raffica(伊)"の略で、"Burst(英)"の意。
これはフルオート機構を持った機関拳銃で、後にベレッタ M93Rのモデルにもなっている。フォアグリップを付けマガジンを10発に延長しているが、制御が難しく高度な訓練を必要とした。
1963年には市販モデルのM952が開発された。使用弾薬が7.65mmパラベラム弾に改められたM952は、イタリアにおいて軍用弾である9mmパラベラム弾の使用が、民間では禁止されている為に作られたモデルである。

「ところで西岡さん、引退はしませんのか?余りいい噂は出ていませんがね」
「そんなことはアンタらに関係あらしまへんがな」
「例えば、オタクの松山の事件」
「………」

暴力団会長宅近くで発砲音=N県警

8月□〇日午前6時40分ごろ、N県□×市□□□の指定暴力団関西山神会系銀流会会長の西岡学(69)の自宅付近で、「拳銃の発砲音が聞こえた」と、近隣住民からN県警□×署に通報があった。同署員が駆け付けたところ、散歩中の西岡会長の臀部に弾が当たった痕があった。□×署によると、住民は通報の約15分前に発砲音を聞いていたという。

ああ、思い出しわ。そう言えばそんな事件があったわ。確か松山はパクられている最中のことやったな。あれからどうなったか知らんが、ま、ワシには関係ないわ。けどや懲役はかなわんなぁ…