第49話

Vol.3
7
2019/09/02 13:41
王…梅雨…、確かに彼女に違いないが、彼女の顔はまるで蝋人形のように生気がなく、口に捩じ込まれているものは男性根……。失禁を堪えながら震え気味に私は主席検事に言葉を向けた。 
「ウエッ…。申し訳ありません。だ…誰からなのですか…」
苦し気に流れる涙をハンカチで拭いながら尋ねた。今私が居る場所は何処だろうか。主席室であることは判っている。只感情が排他的に揺らめきを求めている。いや、逃げ出したいのかもしれない。
「日本の裏側。つまりブラジル・サンパウロからですよ。但し差出人は全く判りません。そこにメッセージが書かれていますよ」Throw all if you want to be concerned with a game! But people will confess it to God gradually. The person is non- in God(ゲームに関わりたければ、全てを投げ出せ!!但し、いつしかその者達は神に懺悔をするだろう。人は神で非ず)
「……」
静まりかえるこの主席検事室に於いて、今微かに揺れる時空間が私の心をざわめきさせた。
果たしてこの国は何をもって形成されているのだろうか…。
「いいですか松崎君、確かに我々の職務は正義を乗っ取ってのものである。しかし1の職務に2ないし3までこなす必要がない。言い換えればその結果がこれではないですか。そして君は国家という仕組みをどれだけ把握しているかですね」
「………」
「犯罪に於いては、現実人権軽視があってはなりません。しかし現実はどうでしょうか。正義に惑わされた揚げ句にその奥底に辿り着こうとすれば新たな犠牲者が生まれる。我々が関与することでこのような罪を負わせてしまうということになりませんかね。なりそめ…実に悲しいことですが」
正義という言葉は何を表すのであろうか…。漸く落ち着きを取り戻す中で自分自身の疑念をぶつけてみた。
「それでも主席検事、我々は検察官としての誇りと正義を基本姿勢の基に在り続けるべきではないでしょうか」
確かに正義に犠牲は付き物かもしれない。しかし本当にそれが正しいのであろうか…。
この国には様々な組織がある。検察官という職務に就くことで耳にする組織がある。中には私達がどのように足掻こうが踏み入ることの出来ない場所があることは事実かもしれない。例えば影の内閣の実体。
イギリスでは野党第1党の党首が「His or Her Majesty's Loyal Opposition」の影の首相(Leader of the Opposition)に就任し、党所属国会議員から影の閣僚を任命して影の内閣を組織する。影の内閣は政府・与党の内閣と対する組織として存在し、議場では与党と野党が相互に向き合う形になっている。
健全な議会政治において政権交代と野党の政策立案能力が必須であるという考えに基づき、影の内閣は公職とされ、その運営には予算が計上され、議会内に影の内閣専用の執務室が提供される。
総選挙で野党が勝利し政権を奪取した場合には、影の内閣のメンバーの大部分はそのまま新内閣の大臣に就任することが一般的である。
日本に於いては1990年代以降、野党第1党が影の内閣を模した政策立案機関を組織している。
日本社会党が1991年9月 -1993年8月に組織した「社会党シャドーキャビネット」。
新進党が1994年12月 - 1997年12月に組織した「明日の内閣」。
民主党が1999年10月 - 2009年9月と2012年12月以降に組織している「次の内閣」。
自由民主党が2010年9月 -2012年12月に組織した「シャドウ・キャビネット」。
何故このような組織が必要とされているのだろうか…。
正義…
正義(せいぎ、、、、)とは、倫理、合理性、法律、自然法、宗教、公正ないし衡平にもとづく道徳的な正しさ[要出典]に関する概念である。 正義の実質的な内容を探究する学問分野は正義論と呼ばれる。広義すなわち日本語の日常的な意味においては、道理に適った正しいこと全般を意味する。以下では、専ら西洋における概念(すなわちjusticeないしそれに類似する言葉で示されるもの)を記述する。ギリシヤ語の Δικαιοσυνη(dikaiosynee ディカイオシュネー)に由来するものである。東洋のそれについては義のページを参照。
正義とは、それ自体に鑑みれば、社会における物および人に関する固有の秩序である[要出典]。この概念は、哲学的、法的あるいは神学的な影響の下で、歴史上絶え間なく論じられてきた。正義に関する問題の多くは、西洋における正義概念に依拠している。例えば、「正義とは何であるか」「正義は個人および社会に何を要求しているか」「社会における財と資源の本来的な配分方法(平等主義、才能主義、身分主義)は何か」などである。これらの問いに対しては、政治および哲学に関する多様な観点から様々に答えうる。 正義の概念は、多くの正義論によって極めて重要な概念であるとされている。例えば、ジョン・ロールズは次のように述べている[1]。「正義とは、思想体系が真であることとしての、社会制度の根本的な徳である」。正義は、親切、慈悲、慈愛、寛大さあるいは共感などのその他の徳と区別され、そしてそれらよりもより基本的な徳であると考えることもできる。正義は、とりわけギリシャ哲学やキリスト教においては、運命、輪廻あるいは神の予見のように、自然の摂理や超越的存在によって規律された生ないし生き方と結び付けられることがしばしばであった。しかし、現代の正義論においては、このような宇宙論的・宗教的世界観を離れて、正義を社会制度の根源を為す価値である公正さと結び付けて人間社会の枠組みの問題であると捉える傾向が強い。
John Rawls, A Theory of Justice (revised edn, Oxford: OUP, 1999), p. 3
●報復的正義……
報復的正義(retributive justice)とは、適法に証明された犯罪に対する適切な対応を定め、それによって刑罰が正しく課されそして道徳的に正しいとみなされるところのものである。同害報復(タリオの法)すなわち「目には目を、歯には歯を」もこの報復的正義の一態様として考察されうる。

🎵Blue Net Blue

#一見 自由に映る街さえも(Blue Blue Blue ×4)
空から見れば水槽じみている(Blue Blue Blue×4)
誰を釣り上げようか
朝から晩まで監視だらけの毎日(Blue Blue Blue×4Net Blue)#

## 剥き出した醜さ
何度色を塗り替えてもムダさ(Blue Blue Blue×4)
Borderlineぶっ壊す
欲にかられた悪魔が爪を研ぐ(Blue Blue Blue×4)
虹の架け橋それはダメなのかい!?(Blue Net Blue)##

##~## Repeat

朝から流れるNEWS暗すぎる(Blue Blue Blue×4)
誰かを欺き 繋ぐ手拒まらす(Blue Blue Blue×4)
愛を惑わす支配者
電波ジャックで街は交通渋滞(Blue Blue Blue×4Net Blue)

#~# Repeat

( Words : Wild Chan )

「君の言いたいことは当然のものではありますが、我々も組織という枠組みで生かされている一人間であるということですよ。つまるところ君がいう正義なんてものは組織あってのものであり、強いて申せば正義というものは現状に於ける自分の言い訳にしかあるまい」
それが本音であるのならば我々は何の為の検察官であるのだろうか。
「主席検事、それならば私達は何の為に司法試験に挑んできたのでしょうか…今の私には何が正義であるのか判りません」
感情に押し流されれか、心の現状が涙として現れ頬を濡らした。矢張り私は納得いかない。いつしか拳を握り締めた私に、言葉を拾い数えるかのように
「君はまだ、私の言っていることが判らないのかね。松崎君、君は将来有望なる検察官であることを私は願いたいのですがね。言い換えればもう少し利口だと思っていましたがね」
その言葉に、今私が描いていた正義観念が崩れていこうとしている。そして目眩さえ感じる。誰が言ったであろうか、正義とは権力であると―――。
そうだ、あの人だ。遠い記憶が走馬灯のように甦った。
「僕が何故弁護士を目指すというのはね、決して金儲けだけのものではない。君を悪く言うのではないが、真の正義観念なんてものは組織にはないんだよ。確かに君が言うように検事も決して悪くないだろう。しかし、結局組織の枠から離れることが出来ない。弱者を少しでも救えることが、僕が目指す弁護士の正義観念だと思っているんだ。例えそれが犯罪者であったとしてもね」
まさか大学生当時に交際していた恋人だった彼の言葉が、このような時に甦るなんて、何て皮肉であろか…。
「主席検事、暫く考えさせて下さい…」
そのように、今の私の精一杯の返答であった。
今朝方の私は一体何処へ行ってしまったのだろうか…。思えば、確かに自分なりの正義観念に於ける信念を持っていたではないか。処が今正義に疑念を感じ始めている。いや、これ程に脆いものであるのか…、自分が置かれている世界にさえ疑念を抱き始めた。重苦しいこの場から直ぐ様逃げ出したかった。
「退室します」
よろけるように私は主席検事室から退室に至るしかなかったと言えるだろう。退室時に主席検事が受話器に手を伸ばしていることにすら気づきはしなかったのは言うまでもない。足が重い…、まるで自分の足でないように感じながら降る階段、人生がこのまま転落していきそうな錯覚にまみえてしまいそうである。
「あ、お帰りなさい。……あの、松崎検事、何かあったのですか…」
片瀬の言葉に、かろうじて首を振るのが精一杯だった。

🎵TONIGHT

降りだした雨
Mischievous Fannie cat
裸足で踊っていた
ソーダ水みたいに
TONIGHTグラサン越しに浮かぶ お前

街変わり出す
Wild Cat where I am shy
初めて ときめいていた
シャンパン浴びたみたいに
TONIGHTざわめく街で浮かぶ煌めき

☆幻想に自分を誤魔化していただけの世界
焼き焦がれるような この想いを
お前のKissで Let me drown!
I felt you to be anytime☆

☆~☆ Repeat

探していた夢
I can catch you
シュールな恋はMystery
探していたんだ お前を
TONIGHTざわめく街で浮かぶ煌めき

☆~☆ Repeat

( Words : Wild Chan )

あれから幾日が過ぎただろうか…。どうにか職務をこなしているものの、部屋に帰り着くと苦悶が押し寄せる。
今日まで私が取り扱った数々の事件の中、奴が関わったとされる国際犯罪事犯に於いて、私は意地を張り通す程の事件であったのだろうか…。

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