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第52話

Vol.6
「我的耳朶…,東西听難越過的…。辞去這个以上(ウオ ダ アル ドゥオ …,ドン シ ティン ナン ユエ グオ ダ …。ツ- チュ- ジョ- ガ イ- シャン)俺の耳が…、物が聴こえにくい…。これ以上は辞めてくれ」
映し出され画面には楊が耳を削がれて喚いている。床には何本かの指が転がっている。記憶をまさぐる―――。そうだ、私は生死をさ迷いながら職務による殉職よりも生への執着に固執してしまった。銃創に岩塩を押し込まれた時に、私は気が狂わんばかりに喚いていた。
「うぎゃぁ――」
「ハハハハ。やはり松原さん生きたいですね」
私は生かされることの条件として楊への拷問を命じられたのだ。そして巧くいけば中国共産党の『◎H作戦』の全貌を知ることが出来るのである。それこそが我が日本国の為ではないか。生への執着に固執しながらも、そこにはまだ職務に対する卑しさが曝けだしていた。それにしても妙だ…。確かに今映し出されている私は否に好戦的ではないか…。うん…待てよ、確か苦痛を和らげる為として鼻腔に何やら吸引した憶えがある。確かに痛みが薄れゆく中で私の脳裏に指示が下された気がする。生への執着による防衛本能がまるで私の人格を変えたような……
「痛っ…」記憶が定かでない。何かを思い起こそうとすると頭痛が記憶を遮る。
「ククク、『BM』つまりBlack:Magicですよ」
「Black:Magic…?うう…痛っ!?」
実際に私が楊を殺害したのであろうか…。しかし画面に映る私に対して
『我が国の機密捜査官による殺戮!!』
なるテロップまで入っているではないか…。
「辞去只那个。
幇助,幇助,不管什麼都因為説…痛苦…痛苦…(ツ- チュ- ジ- ナ- ガ。バン ジュ-,バン ジュ-,ブ- グアン シェン マ ドウ イン ウェイ シュオ … トン ク- … トン ク- …それだけは辞めてくれ。助けて、助けてくれ、何でも喋るから…う…う…)」
「こ…これが、ほ…本当に俺なのか…」
「間違いなく貴方ですよ。楊はショック死に至らせ、ククク、松原さん、見事な書体ですよ」
爛々と輝く私の瞳には最早人間と呼ぶには程遠いものが宿っている。
私の右手には楊のペニスが握られ、胸に『処殺』とナイフで切り刻んでいるではないか…。
うん…この女は誰なんだ?死んでいるのか?そして私はその女の口に楊のペニスを突っ込んでいる。人間ではない……、まるで他人事のように自分を感じていた。
「それで貴様は何を知りたい…」
既にどうでもいいことを口にしていた。
「貴方はこの日本をどのように考えているんだ?」
「ふん、何を言い出すのかと言えば、この日本をだと?強いて言えばお前達のような国家反逆組織の壊滅だ」
「ククク、国家反逆組織ね~。しかし、貴方方の中に国家転覆を企てている組織があるとすれば?」
「まさか!?松山、お前は何者なんだ?いや…私には何が何だか判らん…」
私は深く息を呑み込み、ゆっくりと吐き出した。
「処で、俺の何を探っているんだ公安は」
「ふふ、お手上げだよ。1つは警察内部に於ける裏金。そして2つ目に、何故お前はそのカードを使えるかだ。しかし残念なことに偽造でもない。そしてガードが堅すぎる。言い換えれば国家レベルでないということか…」
「ククク、ゲームのオプション。ククク、アハハハハ。さあ松原さん、俺のアイテムとして生きるか?本当の世界を覗けるかもしれないぜ」
「………」
そうか、奴はゲームのアイテムと言ったな。ということは逆に奴から何等かのアイテムを奪えるということではないか。
奴は冷たく私を見つめていた。
PM7:48。 
「あら?もうこんな時間」
私は大きく背伸びをする。
「松崎検事、ジャスミンティー、熱いものと入れ替えましょうか」
「そうね。じゃ、お願い」
片瀬の申し出に甘んじ少し手を休めることにした。外の景色は暗なずみ外灯に明かりが灯り、窓には小さな月が浮かんでいた。
「ごめんね、こんな遅くまで。あと30分程度で終ると思うわ。その代わり夕飯は好きなものを奢るから、もう少しお願いね」
「本当ですか?それじゃ焼肉でも頼んじゃおうかな」
室内に2人の笑いが広がり「もうイイ頃かな?」と片瀬は言いながらマグカップに新たなジャスミンティーを注ぎ入れた。

🎵 MOONLIGHT(Shoko & sexycrime)

麗しき月が好きだった
MOONLIGHTに揺られ 包まれながら
ボクは 自分を慰めていた

麗しきキミが好きなのに
MOONLIGHTに揺られ 微睡(まどろ)みながら
想い 描いてひとつになれる

☆終りのない夢
キミに愛を伝える勇気があれば
Though I did not greet so sad night and finished it
MOONLIGHT 濡れた眼差し乾かし
MOONLIGHT 錆びた魂解き放し
Make him drunk at the night when I seem to be mysterious☆

素肌を濡らすSense of isolation
MOONLIGHTに染まる jealousyな彩り
出来る ことならば確めてくれ

☆~☆Repeat

君だけに さらけ出したいこの想い
愛は何故に 臆病にするのだろう

☆~☆Repeat

翻訳:孤独感
こんなに切ない夜を迎えなくて済んだのに
妖しげな夜に酔わせてくれ

( Words: Wild Chan )

「どうぞ」
「ありがとう」
デスクに置かれた花柄絵のマグカップに手を伸ばし、香りを楽しむようにそっと口に運ぶ。一口、二口とすすり
「処で片瀬君、以前さ登庁途中で話していたじゃない。ほら、何だっけ?そうそう人間関係の複雑さだっけ」
そう言ってマグカップを置いた。
「そう言えば僕言ってましたよね。また改めちゃってどうしたのですか」
「実はあれから何かと考えさせられたんだけども、今はそれが本当によく判るわ」
「………」
私は構わず話し続けた。
「ねえ片瀬君仮によ、もし君が検事としてある事件の裏側にとんでもないものが隠蔽されていると疑惑を持ったならどうする?」
「そんなことがあったののですか…」
片瀬はどこか深刻そうに答えながらコーヒーを口に運びつつあった。人は抱えた問題に対して、どこまで同調するのか定かではないが、聞かす側は僅かでも同調してくれることに安堵感をもたらすものなんだ。
私も片瀬に釣られたようにジャスミンティーを口に運んだ。
「というか、もしそのようなことがあるとするならば、当然…検事として…」
と言った時、何故かしら急に睡魔が私を襲ってきたのだ。何やら頭の中がどんよりし身体が揺らぐような気がした。風邪かしら―――、そう感じながら目蓋が閉じかけてゆく。身体が揺れる…その時全身の力が抜けるようにマグカップが絡めた指から離れ落ちた。ガチャン―――。その音が床に転げ落ち割れたマグカップのものであるのかさえ判らなかった。そして私は意識が朦朧としながらデスクに前倒れしてしまった。
「松崎検事!」
「…………」
「ちょっと検事、どうしたのですか?松崎検事!」
彼の声が遠退いていく。本当に…どうした…、思いが途切れ、暗闇に引き込まれるように今私は意識が薄れていった。