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第45話

Vol.4
「そして楊、お前が中国共産党員であることも判っている」
「ち、違う…」
一体奴等は何を話しているんだ…。そして、この俺をどうするつもりでいるのか…。恐らく殺すのであろう。
「楊、言い訳はやめろ。お前が沖縄で誰と会っていたかも既に判っているんだ。何を報告していたのか訊かせて貰おうか」
「………」
俺に対する制裁ではなさそうであるかもしれない。それじゃ何があるというのだ。俺は痛みを堪えながら言葉を投げた。
「是不是能説日語(シ- ブ- シ- ノン シュオ リ- ユ-日本語を話せるか)」
「まだ生きているか。流石だな」
「お前達は何が目的であるんだ。最後にそれを聞かせてくれないか」
数人の部下が見守る中で、その男は目を細め笑っていた。
俺の捜査は今椅子に縛られた、つまりこの俺を襲った楊と松山慎悟との繋がりの深さであった。
中華街の外れで弾かれた後にワゴン車に投げ込まれ、気がつけば現状態であった。
「安心しなさい松原捜査官。アナタの身体の弾丸は抜いてある」
「………」
何故俺の身分が判っているんだ。身分証なる物は一切身に付けていない。
「松原さん、このバカはアナタを何処かのヤクザ組織の人間と思っていたようだ。しかし、それは楊の言い訳であった」
「まさか…」
「そうです。アナタを利用しようと企んだのですよ、中国共産党員として」
ならば何故俺の傷を手当てしたと言うのか…。
「勘違いしてはいけない。弾丸は抜いたが、あくまで応急処置である。そしてアナタは今まだ生きている。結果を言えばアナタにやって貰うことがあるという指示だ」
「だ、誰からなんだ…」
それには答がなかった。何をさせようとしているのか…、そして此処は何処なのか…。只俺が生かされているのは間違いなかった。
同時刻N市コンビニ前。 「貴方達に」そう言いかけた時だった。
「兄弟ヤバイ(危ない)。行くで」そう言うや車に戻り移動し始めた。警察車輛が緩かに巡回に訪れたのである。思わず安堵の息を吐いていた。
「さぁケンちゃんにマー君飲み直そ」
私達は再び腰を下ろしだした。
「お姉さん、慎悟さんの名前出そうとしてたやろ」
「やっぱりバレてた?」
怪訝そうに見つめる警察官を気に止めることなく再び彼等に話の続きを聞こうとした。只私個人の興味本意なのか、検事としての興味本意なのか、恐らく双方であることを拒まない。
それにしても先程の2人のチンピラが警察車輛を見て逃げ出すということは、何等かの疚しさがあるに違いないだろう。
もし何等かの事件で逮捕され、私が担当検事になったあかつきには、ウフフ、覚悟しておくことだわ―――、と一人微笑んでしまった。
気を取り直した私達はまるで学生時代に戻ったようにいた。
「さて、君達の話を聞かせてくれるかな」
「え~っと、どこまで話したっけケンちゃん?」
「そうや、俺等がラーメン屋に行くまでのことやないかな」
そうなんや、俺等はケンちゃんの運転するGTサンパチ(スズキGT380)で銀流会の事務所を逃げるようにかっ飛ばした。まだ慎悟さんと逢うまでは可なりの時間がある中で、「待っとこうや」ということで俺等はT市のラーメン屋に行くことにしたんや。
「ふ~ん、案外殊勝なところがあるじゃない」
「エヘヘ、何せ慎悟さんだから」
大人でも可なり時間にルーズな人達はいるものだ。保釈中や在宅調べの被疑者の検事調べに対する呼び出しに対して、「これが本当に大人なのかしら」
と歯痒さを感じることがある。心理学に於いて私達は服装や持ち物は、自分の本性を隠すためのアイテムと捕らえている。つまり「こう見せたい自分」「人からこう見られたい自分」を演出している。つまりファッション性の服装のだらしなさは、正に人間性そのものであると言ってもいい。事件性に於いても服装との関連性は決して否定できないのである。故に遅刻の常習犯は危機管理のできない社会人失格者なの。だから言い訳は決まっている。「出掛けようとした時に調度電話が入ってしまって」や「電車が遅れたから仕方がなかった」というよに。
つまり、いつも時間に遅れてくる人は、スケジュールの管理が甘い人であり、危機管理のできない人であり、いつも同じ過ちを犯してしまう人と見受けられるのである。そんなことを思いながら再び彼等の話に耳を傾けた。
「何や、あの時の赤チン小僧やないか」
「オッチャン、赤チンって何やのん」
天心ラーメンのオヤジが俺等を覚えてくれていたのか声をかけてくれた。
「何やお前等、赤チン知らんのか?怪我したら赤い液体の薬を塗ったんやが、あの時のニイチャンの顔はワハハハ、赤チンまみれやったさかいにな」

●赤チン
マーキュロクロム液(マーキュロクロムえき)は、後述するマーキュロクロムの水溶液である。別名メルブロミン液、通称赤チン。暗赤褐色の液体で、皮膚・キズの殺菌・消毒に用いる。通称の赤チンは「赤いヨードチンキ」の意味で、同じ殺菌・消毒の目的で使われる希ヨードチンキが茶色なのにたいして本品の色が赤いことからつけられた。マーキュロクロム液は水溶液なのでチンキ剤ではない。
マーキュロクロム液100ml中に2gのマーキュロクロムを含むため、水銀を0.42 0.56 w/v%含む。マーキュロクロム液に含まれる水銀は有機水銀化合物であるが、皮膚浸透性が低く、濃度が薄い希釈液のために毒性は小さいので、外用剤として使う限りにおいては安全だとされている。
遮光した気密容器に保存する。pHは約8。
マーキュロクロム (C20H8Br2HgNa2O6) は青緑色から帯緑赤褐色の小葉片または粒状の物質。水には溶けやすいが、不溶分が残る事もある。エタノール、アセトン、エーテル、クロロホルムなどの有機溶媒にはほとんど溶けない。マーキュロクロム自体は劇薬であるが、その溶液は劇薬ではない。
「何するんや?」
「いやオッチャン、慎悟さんが来てからでええわ」
「何やお前等、松山さんを待っとるんか、そうかそうか」
そう言い残し離れて行った。それで俺等は煙草を吸いながら通りすがる人達を見ながら話し込んでいたんや。
「ちょっと君達は、その時は未成年なんでしょ」
「またまたお姉さん、デコチンみたいなことを言ってるわ。過去の話。それとも慎悟さんの話辞めとく?」
「それは困る。そうか過去だもんね」
屈託なく笑う2人に私は何時やら好青年を感じていた。人には其々の青春期がある。その青春期という思い出は誰にも咎めることは出来ない筈である。
しかし今私は魅せられたかのように松山慎悟の過去に足を向けようとしている。それは禁断の扉を開けることになるかもしれない。それでも私は足を踏み止(とど)まることが出来なかった。ほんのりとした酔いが心地よく、その為なのだろうか私は松山慎悟という禁断の扉を開け入ろうとしている。やっぱり私は1人の女なのかもしれない。夜空を見上げると一瞬月が雲に隠れ、その雲が薄赤く染まった気がした。
グオーン グボボボ―――確か午後7時40分頃だったかなパールホワイトのC3(コルベット・ステェイングレー)がガンガンにビートを流しながら来たんだ。 

🎵マジョリカな夜

# 俺を付け回す 過去のワダカマリ
仕方ねえだろう 今の愛はcopyだらけ
カネで受け入れて くれる捌け口
そこに見えたのさ 捨てた愛の大きさを #


深夜のコンビニ 雑誌立ち読みの
濃い目化粧の 女(ひと)は何を待っている?
電子money Cardで支払い レジで声落とし 「アレはダメか?」と笑い合う

## ガラリと変わる まるで罪と罰を背負い
今宵 戯れることに 全てを賭ける
マジョリカな夜は 昼の捌け口 朝は癒しのMassage Chair
肌の温もり 感じている俺がいる
肌の温もり 感じている俺がいる ##

##~## Repeat

たった1つだけ 自慢できるモノ
指を折り曲げて 過去に想い 寄せれば
浮かぶ麗しき お前だけだね
駅のガード下 嘘が共鳴 媚びていた

痛みが俺に 何を与えてくれる?
上手くかわせ!! 偽りだらけの巧みな言葉
マジョリカな夜は 昼の捌け口 朝は癒しのMassage Chair
肌の温もり 感じている俺がいる
肌の温もり 感じている俺がいる

#~# Repeat

( Words: Wild Chan )

「慎悟さんだ!」
俺等は興奮していた。店前にC3を停めた慎悟さんはスリムの黒のレザーパンツが俺等にカッコよく映っていた。
「ククク、やっぱりお前達か。どうした?」
「おはよーございます」
「ククク、ヤクザみたいだな」
そう言い笑いながら慎悟さんは奥のテーブルに腰を下ろした。慎悟さんが座った位置を見て「あれっ?」と思ったのは、この屋台は道路に面して対面でなく横並びなんや。けど慎悟さんは麺類を容れた冷蔵庫を背に道路に対面で座っている。
「クク。こう見えても神経を使っているさ」
「でも慎悟さん、この街は平和でしょ」
「平和か。偽りの平和だから、クク気が抜けないのじゃないかな。ま座ってラーメンで食べようぜ」
そう言いオヤジにスタミナのチャーシュー大盛りを3杯注文してくれたのや。ラーメンが出来上がるまで俺等は何を話せばいいのか判らずにいた。
「可笑しな奴等だよ」
「へへへ」
つい釣られて笑ってしまった。けど何て言えばいいのやろか、ブラウンのレンズから覗く慎悟さんの目には俺等に威圧感を与えることはなかった。 「あの…慎悟さん、俺等急に逢いたくなって」
ケンちゃんがぎこちなく言ったんや。ハッキリ言って俺等は慎悟さんの全てを知っている訳じゃない。けど慎悟さんは、こんな俺達に包み込んでくれるものがあった。
「包み込んでくれるものって」
私はその感情を知りたくて尋ねてみた。確かに松山慎悟の感情を計るには生易しいものでないかもしれない。何せ奴は何が本当なのか判らない。ふだけているようで女を惑わすところがある。只敵意感情の表れがない。それよりも何だろう…、そうだわ、逆的に関わる者に憐れみを宿しているようにさえ感じる。
「ブラッドか…」
「えっ、お姉さん何かいったか?」
「ううん、何でもない。話を続けてマー君」
今夜は本当に良い夜かもしれない。
「いただきます」
そう言えば俺等は、いただきます――― なんて言葉を何時しか忘れていたような気がした。母親が作る食事を当たり前のように食べ、時には不平を溢していた。その慎悟さんでさえ手を合わし出来上がったラーメンを食べているんや。
「以外ですね、慎悟さんが手を合わすなんて」
「ククそうか。何の為に俺達はこうして飯が食えるのか、お前達判るか」
「………」
俺等は慎悟さんの言葉に箸を止めた。
「人有ってのことだ。どうした?」
何故だろう、俺等は何を見て来たのだろうか…。慎悟さんは何もなかったようにラーメンを啜っている。どちらかと言うと俺もマー君も落ちこぼれ組、親は俺等をろくでなしと思っているに違いない。高校も俺等は中退した。慎悟さんを見ていると何故やろか自然に省みせさせるんだよ。親の言いつけに何時しか犯行し、お決まりのレールを歩み、自ら脱落していた。そうやな、学校のカネは親が出してくれていたんやな…。
先にラーメンを食べ終った慎悟さんは煙草を吸っていた。
「マー君早う食べんと」
慎悟さんは只微笑ましく見守っていてくれているようだった。

「それで慎悟さんは君達に、例えばヤクザとして受け入れるなんてことはなかった訳?」
「お姉さんは、アハハまだ慎悟さんのことが判っていないんやね」
マー君がさも可笑しそうに答えた。
「そやそや。お姉さん俺等ヤクザしてる格好に見える?」
確かに言えてる。ニッカポッカと言うのかな、紺地に汚れがある。そうか、あの人はこの子達をヤクザにさせなかっのか。意外。しかし、あの日の法廷には何かある気がしてならなかった。それが何であるのか判らない。