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第21話

Vol.3
「痛っ…」 
切っ先がほんの僅か肌に触れただけで、痛みが深くワシを襲う。「うう…」ワシは1度肌から切っ先を離すと肌に僅かに血が浮かんだ。只刺せばええのやろか…、関を切ったように涙が流れ出してきたのや。悲しみでも恐怖でもない。何て言えばええのやろか…、ガキの頃のワシは苛められっ子やった。だから、何時しかワシは権力に流される性質になっていたのやもしれん。ワシは松山の傷を忘れていたのや。あの傷痕には恐らくワシのガキの頃より深い痛みがあるに違いない筈なんや。人にワシは優しくしたことがあったやろか…、優しくされたことがあったのに、ワシは何をしていたのや。その思いが涙を溢れ出させたのかもしれん。
「ま、松山さん。1つ頼みがありますのや」
「ククク」
「守田のことは堪忍してやってな。そ…それとも…」
ワシは思わず唾を飲み込んだのや。松山を見やると煙草の紫煙を吐き出すと冷たく言い放った。
「ああ、アイツか。ククク、どうもしないさ。何故だか判るか?路傍の石にすぎん」
「それやったら、ワシ…ワシは何ですねん…」
「クク。蛆虫かな」
それ以上ワシは何の言葉も出なかった。蛆虫、蛆虫、蛆虫―――。蛆虫でも何時かは羽根が生えるんじゃ。
「うわー!!」
バサバサバサ―――。振り絞ったワシの呻き声に雉か何等かの鳥が飛び去った。「グハッ…」ワシは自分の眼球が飛び出しているのではなかろうかと思う程見開いていた。
「痛い痛い!た、た、助けてくれなはれ。ま、松山さん、い、医者を……」
ワシは何故か後ろに倒れることが出来ずに横たえながら傷みに堪えること出来ずに、無動作に身体を揺り動かしていた。助けて欲しい。松山、アンタはワシの性根をみせたら助けると言ったやないか。死にたくないねん…。
「河村、流石右翼構成員や。お前の性根を見させて貰ったよ。おい、どうだ?」
「ゴフッ」
な、何や?何で口から血を吐くねん…。松山に問われた男が屈(かが)み、ワシの身体を覗き込んだ。
「無理です。力み過ぎたのでしょう。刃が背中を貫いています」
「…………」
ど、どういうこ、ことやねん…。
な、何が、り、力み過ぎたのやねん…。意識が朦朧とする中で、ワシは松山達の言葉を聞き漏らすまいとしていたのや。助かりたいのは当然やないか。
「そうか、運のない奴だクククク。トラックは解体して処分すればいい」
そう言い残すと松山は歩み始めたのや。何故奴等の足音が鮮明に聞こえるのやろか…。
「ちょ、ちょ…ちょっと待ってえな…。ゴフッ…た…頼むから…助……」
ワシの言葉が吐き出ているのか判らないが、陸地に放たれた魚のように、ワシの口がパクパクしている。あれほどの痛切さが引き潮のように意識が遠退いていくのを感じ始めた。
枝葉の隙間から青空が見える。何処かで見た青空に似ている。何処やったろか…。そうや、少年院やないか。思い返される風景が記憶の彼方に彩る。
そうや、アイツの目はあの時と同じやないか…。
アイツが少年院に入院中に、不慮の事故により父親が亡くなった。同室やったワシは慰めの言葉を掛けようとした時、ワシはゾッとしたことを思い出した。そうなんや。まるで今と同じ冷めた青い炎を宿した目をしていたのや。
「あ…、あの時と同…同じ目をし…して…いた…」

☆澄み渡る青空にそよぐ日の丸に
悔し涙を噛み締め青天に志を誓った
秋篠の青春 学べるものは何もない
孤独に身を縛り 答えは自分で見付けるだけ☆

若き故か 血潮と叫ぶ日の丸に
見えない明日に誰がした 俺達は何処(いずこ)へと向かう
泥臭い青春 振り返るものは何もない
君が代 に吾誇り 行き着く場所は心の中

☆☆大人よりも やりたいことが只多すぎて
そんな中で自分を燃やし続けることが精一杯で
大人に成り行くことを 何処かで拒み続けていた
その答えは何であるのか 責め立てる
それが俺達を追い詰めていることを判らずに
零戦真似て飛ばすバイクはためく日の丸
ゴーグル越しに映る虚像の街 俺の心の爆弾を
何に向けて喰らわせればいいのだろうか
何処に向けて喰らわせればいいのだろうか☆☆

☆☆~☆☆ Repeat

☆~☆ Repeat

叫べ!叫べ!叫べ!叫ぶんだ!!
心に渦巻く ありったけの感情
吠えろ!吠えろ!吠えろ!吠えるんだ!!
変わりゆく日本に 旧き善きことを忘れなかれと
( 日の丸青春謳歌 Words:Wild Chan )

翌日アイツは自作と言い歌っていた。
間違いない。銀流会の…… ゴフッ。
「ま…松…山…。お…お前、ゴフッ。な…何……」