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第10話

Vol.2
そうなんや、ワシもガキの項は複雑な家庭環境で育ったのや。そんな思いを慰めてくれたのは、松山やったなぁ… 
年月の流れが人を変えると言うが、人が人を変えることが今判った気がする。そうや、松山の背中を忘れとったわ。あの傷痕が言葉語らずとも全てを語っていたわな。そうなんか、ワシは妬んでいたのかも知れんなぁ…

ワシは同僚の守田が勤務中に起こした事故が原因で、給料をカットされたことに腹立て、損害分を賄わせる為にカネを作らせる思いで松山の事務所に守田を連れて行ったことが、結果的に偽装結婚まで踏みきることになってしまったんや。いや、それよりも本来は守田だけを結婚させればよかったのに、カネ欲しさにワシまで偽装結婚をしてしまったんや。バレるとは思ってなかった。バレたのはワシが余計なことに首を突っ込んだからなんや。
「いいか河村。此処で別れても、いつか再会した時が縁の始まりだと思うんだ。クク、その時に人が計れる。その日まで友達だ。けどクククク、その後は自分次第さ」
僻み・妬み…遠い記憶の中に今、年少時代の松山の言葉が甦ってきた。ワシは、その言葉を聞き流していたんや。その答が今なんか…
人は死ぬ間際に回想に耽ると言うが、それならワシは死ぬんかいな?
「クククク河村、人間は何が一番残酷か判るか?」
「そうやなぁ…リンチかいな?」
「クク、クククク。河村、それは残虐さ。いいか河村、生きながら怨みを抱かせることさ。クク、判るか?」
松山は何を背負ってきたのかは全く判らんが、そう言えば松山だけによく教会の人が来とったなぁ――――― 。
どうでもええことや。

「はい。オフィス松山です」
「あの、ワシ河村と言いますんやが松山さん居てますやろか」
ワシは守田に何としてもカネを作らす為、相談がてらにオフィス松山に電話をかけたんや。
「少々お待ち下さい。――会長。是河村先生這个从電話。(ホイ ジャン。シ- ホ- ツン シエン ション ジョ- ガ ツォン ディエン ホア。会長。河村さんと言う方から電話です)」
直ぐに松山は電話口に出てくれた。
「あ、おはようございます松山さん」
「河村か。ククどうした?」
「実は相談ありまして…」
ワシの言い方が不味かったのやろか…耳に宛がう携帯にイ尓,可以已経返回ロ約ニ-,コ- イ- イ- ジン ファンホイ ヤオお前は、もう帰っていいよ)と聞き慣れない言葉が聴こえた。韓国語やろか…
「判ったよ」
そう聞こえるや電話は切れてしまったんや。兎に角ワシは守田を連れてワゴンRを走らせたんや。
「クク2人か。入れよ」
インタフォンを鳴らすと松山の声が流れ開錠の音がカチリとなった。
PM1:05。
「昼飯は済ませたのか」
ワシ等は応接間に通らされた時に松山は気遣ってくれたんや。
守田と言えば、ろくすっぽに挨拶も出来ない気弱な男である。ま、緊張もあるんやろな。
「で河村、相談とは?」
「言いにくい話やねんけどこの守田に50~100万程貸して貰えませんやろか…」
ワシは守田が事故を起こしカネが必要であることを説明したんや。と言ってもワシ等に払うことは伏せていたんや。
松山は煙草に火を点け一息吸うと、そっと紫煙を吐き出しながら言葉を切り出したんや。
「守田君、新規でいきなり50~100は大きいなぁクク。ところで君には河村以外で連保(連帯保証人)を付けられるかな?」
「いいえ、いません…」
松山はワシの目に語ったんや「コイツはダメだな」と。
「守田君、それが無理なら俺のところはダメだな」
そう言いながら松山はポケットから財布を取り出しワシの前に3万をテーブルに置いた。
「クク河村、守田君を飯でも連れて言ってやれよ」
「いや…松山さん…」
「いいよ。初めて訪ねてくれたのに、お前の顔を立てることが出来ずに悪かったな。またクク、何時でも遊びに来てくれ」
「すんません松山さん」
これが守田を会わせた由縁だったんや。