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第7話

判決
11月△□日AM11:00奴の判決が下される。いつもと変わらぬ法廷景色。いや、何故だろう山下判事が美しく感じる。右側に編んだ髪が彼女を少女のように映る。この私でさえ松山慎吾に惑わされ何度夜を戯れたか。 
愛液に絡む自分の指に奴を感じながら。奴は堕天使。愛という『まやかし』で戯れさせ、悪に引き込ませる。奴には恋人いるのだろうか。『何故私は気にする』恋………?あはは、何をバカな。また研修者のあの娘達が来ている。何故?
「おはようございます」
法廷に入廷した奴が山下判事に挨拶を交わした。
「おはようございます」
応える山下判事。そして私に向けた視線に和らげな光が媚びていた。何故なの。
「貴女が決めつけるキャデラック、ククク。この法廷に出してみせることだな」
挑発とも取れる奴の言葉に、私は屈辱を感じた。確かに園田弁護士が証拠提出した書類には確かに信憑性がある。
「ククク。いいですか検事さん。確かに河村が言うように彼と逢っているだろう。しかしククク、警察方の決めつけに落ち度がある」
奴が言うには、数年前にプレジデントを走行中に事故に巻き込まれいる。これは警察の交通課からの資料でも確認されている。その後キャデラックを所有していると頑として主張する。しかし、それが間違っていることを私は知らされた。
「貴女にアドバイスだよ。ククク、交通センターで確認することだな。クク、ククク」
何故それを弁護士に言わない。恐らく調査済みかもしれない。じゃ、何故に?私は奴に問い返した。
「それは何を意味してのことなのか」
「The proof of the pudding is in the eating.それが法三原則の基本ではないか?ククク。Do not waste investigation activity costs pooling」
傍聴席の恩師が頷いた。
確かに奴の言う通りだった。
――PM04:20、 の十字路に於いて徐行中の被害者所有のシボレー コルベット全損事故。
代車用に奴は企業関係者からベンツSLを乗っていたことも調査結果で得ている。「敗けた…」そして屈辱。奴は屈辱を私に味わせたかったのか…
しかし、山下判事がどう捕え判決を下すかだ。無罪なら河村証言は……偽証罪。すると起訴した私達は………
「ククク。 Welcome in game virtual. Your love saves me」
「クスクス。ほら面白いでしょ」
また始まった、奴のお惚けが。それを傍聴席研修生の女学生が俯き笑っていた。けど教えておいてあげる。奴は特別なの。法廷がそんなに甘くないことを今日学ぶことになるから。ヤクザとしては実に惜しい男。何故此方側の人間にならなかったのだろうか。
恩師の顔が頷いた。そして傍聴席後部に腰を下ろす県警本部捜査2課(暴対)係長平野刑事と若き刑事の2人。
「松崎検事、松山慎吾を出来る限り塀の中に隔離しておきたいのが我々の本音なんですよ。期待していますよ」
「平野さん、1つお訊きしていいかしら。何故奴…失礼。その松山慎吾に貴殿方は如何なる理由を以て拘るのでしょうか」
私は平野刑事の了承を得て言葉を返した。
「奴に興味がおありですか?」
「ええ多少なりには。特に気になることが『Blood』ですわ」
「ハハハ成る程。ソコですか。しかし、我々も判りませんなぁ。兎に角松崎検事、宜しく願いますよ」そう言い終わると、頭を下げ検事室から退室した。
一法律家として見合わせれば、河村証言が如何に虚偽性があるのかは誰の見解であれ答えは1つしか有り得ない。私的には奴に対する個人感情を脱げば、求刑は1年6月が妥当であろう。
「松崎君。それではいかんのだよ。2年!!本来は3年を望みたいところだが、それでは如何にも『国策』だと好評するようなものだ。奴の言う車の件など最早関係ない。兎に角2年だ。松崎君、判ったね」
そう。恩師の頷きは、了承確認であることは今更言うことではない。
――― AM11:27。奴は手錠を外された。もうすぐ奴の判決下る。恐らく1年6月の判決が下るであろう。
AM11:30。
「被告人は前へ」
山下判事の開廷の言葉により法廷は静粛を取り戻した。奴は立ち上がり判事に一礼すると、真っ直ぐ判事を見つめた。流石だと私は感じた。今被告人席に不動の如く立つ姿勢は、何時もの軽さがない。私は奴の目に怯えていたが故に卓上の供述書に目を落としていたが、そろり…と奴に目を向けて感じた。判事に向ける目は透き通っている。実を言うと、私は奴の目がまとわりつくことを避けるように着座していた。何故なら、内なる私が奴を受け入れることを知っていたからだ。だが今奴の目に宿っていりものは……「!?」悲しみ?いや違う。何だろうか…慈しみでもない。触れることさえ赦されない冷たさ。奴の周りだけ凍てついている。ブルッと一瞬私は震えた。充分に暖房がほどかされているのに。一体奴にはどんな過去があるというのだろうか…。太陽と月の二面性に星なる存在を打ち払おうとしているかのような…
『山下判事。貴女にも感じている筈』
そう。決して見下しているのでない。
――――― 私は、深い闇に突き落とされとしているだろうか…
『憐れみ…』
奴の目に蒼き魂を感じた。
1つの事件が解決したからと言って、決して気持ちが休まる訳ではない。
「よくもまぁ、これ程の事件があるものだわ」
現在社会に於ける犯罪傾向が若年化し凶暴性を増している。そして、ストレス性事件傾向に公務員や教職者の破廉恥罪が目につくことに1女性として怒りを感じてならない。当然容赦はしない。奴の判決に不満を抱えながらも上司命令により『検事控訴』を控えることにした。奴だけが犯罪者でない。まるでベルトコンベヤーから流れてくる犯罪者。女検事であることを知るや、横柄な態度をとる被疑者。中には社会生活に順応出来ずに隔離を求めて事件を犯す被疑者の顔は起訴されると嬉々としている者さえいることに驚く。覚醒剤事犯に於ける女性被疑者の常習性には呆れてしまう。
「私は□月△日、×××に於いて覚醒剤を購入し〇時頃自宅に於いて覚醒剤を注射器により使用しました。今後は2度としません」
私が口頭したことを隣席の書記官がPCで作成し、プリントした検察調書に氏名指印させて終り。
「貴女、2度としませんじゃないでしょ。これで何度目になるのよ」
こんなおバカな調べばかりなら公判も2回で結審(判決)される。
松山慎吾の判決後の午後からの職務を終え退庁したのがPM7:00前。日中の気温が嘘のように低下し肌に寒さが襲う。途中コンビニに寄り、軽い食材を購入。腕時計の針が7:28を挿していた。
検事。起訴して幾らの世界なの。基本給なんてたかが知れている。検事の仕事なんて、こんなものかと自分を慰めながらレジで会計を済ます。一般企業なら残業手当てがつくものの、私達検事にはつかない。但し、検事ならではの特典がある。しかし、それは公開が出来ない。
「結婚でもしようかな…」
休日以外、向き合う男は犯罪者ばかり。同僚に「この人なら」と思わせる男もいない。イケメンと言うのかしら?若者の犯罪者には確かに中々の男と思わせる男もいるけれど、当然犯罪者に気持ちが揺れる筈がない。
『筈がない?』
内なる私が問いかけてきた。『…』松山慎吾…違う!アレは視姦されたのよ。誤解しないでくれる、内なる私。
押し寄せる感情を掻き消すような寒空に身を任せた。
そう言えば私が結婚を意識したのは法務資格試験に2度目の不合格を喫した時なんだ。
「3度目の正直。この試験に受からなければ、結婚しよう」
と自分に言い聞かせ受けた試験に見事合格した訳。諦め混じりに挑んだ試験に合格したのだから皮肉なものだ。とは言え、念願の検事職に就けたのだから本当は喜ぶべきなのに、寒空の中、誰も迎えてくれない部屋はやはり寂しいものだ。