嗣椰『白い壁、白い天井。毎日飽きるほど見てきた景色だ。これはとある実験施設での話だ。どこにあったかは、未だに分からない。』
あの時の俺は中学3年生ぐらいだった。特にクラスでも問題は起こさず、逆に問題が起きても止めに行かなかった、所謂傍観者のような奴だった。そのようなことに関わってこなかったのもあってか、中学校の頃は非常に平和だった。
そんなある日、俺は学校の帰り道に突然攫われ、車に乗せられた。その車が止まった場所は、子供を実験に使い、使い物にならなくなった子供(実験体)は容赦なく廃棄(殺害)するという実験施設だ。
これはあとから知ったが、どうやら彼処の所長は将来起こるであろう戦争に備えて、子どもを人を超えた生物兵器━━つまり俺たちのような半妖魔にする計画を実行していたらしい。
俺はそんな非道な計画を行っている場所に攫われた。
連れ去られたその日から様々な実験の日々だ。薬剤投与、様々な耐性テスト、実戦形式等…とても辛かった。
そんなある日、両親が来た。どうやらここの職員が俺の親に「この実験施設に来い」という手紙を出したようだ。
親にやっと会えた。そう思った瞬間、親が殺された。実に呆気なく、目の前で銃で撃たれたんだ。
その時俺は絶望した。『俺は弱いんだ。弱いから親を守れなかったんだ』と。
恐らくだが、半妖魔というのは生前の負の感情の多さによって力が変わるんだろうな。だから、子供達をあんな目に合わせていたんだ。
そして、そこから大体2年が経過した。俺は数々の実験によってほぼ瀕死の状態だった。だが、この時の実験は耐えられなかった。電撃の耐久テストだ。あれは日を重ねる毎に電力が増すように設定されていて、俺はこの時の電撃に耐えられなかった。
だが、俺はこの時に生きる理由があった。奴ら━━研究員達への復讐だ。俺は死ぬ直前にそのことを強く想った。その時には既に意識が遠のいていった。『あぁ、俺は復讐も果たせずに死ぬのか』そう思ったのを最後に、俺の意識は消えた。
次に俺が意識を取り戻したのは完全に崩壊した実験所の残骸の上で、目の前にフードさんがいた。それと同時に、自分がもう人間じゃないということも悟った。どうやらあの人の言うところによると、俺の能力で実験所の中にあった大量の機械が破壊されたことによる大爆発が繰り返し起こった事で崩壊したらしい。
他の実験に使われた子供、特に完成に近い子供は俺が暴れている間に他の施設に引き渡されたらしい。俺はフードさんを責めた。『なんで止めなかったのか』と。そしたら、あの人は『お前が暴れていて手が出せなかった。そこは俺の実力不足だ。ただし、残された子供は親御さんの場所に帰ってもらったから安心してほしい』と言ったんだ。正直、俺はその言葉で多少安心はしたが、罪悪感もあった。俺のせいで他の子を守れなかったのか、と思った。そんな俺をフードさんは『お前1人救えただけでも万々歳だ。どうかお前の力で他の子供を守っていってほしい。恐らくだが、逃げた研究者もいるだろう。お前の復讐のためにも、どうか力を貸してほしい』
俺は、この人をなんとなく信頼してもいいような気がした。念の為『メリットは?』と聞いた。返ってきた答えは『さっきも言った通り、奴等への復讐と、少々狭いかもだがお前の住む場所だ』
俺はこの交渉を飲むことにした。
嗣椰「そして、現在に至るということだ」
楓音「へぇ、嗣椰さんにはそんなことが…」
嗣椰「フードさん、定への説得は終わりましたか?」
フード「まぁ、なんとかな」
定「あまり喋りたくはなかったけど、嗣椰が話した後に話さないのもあれだからね…といっても、これは私が悪いから、可哀想もなにもないわけだけど…とりあえず、話すよ。私の過去は…」
続く












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。