狼さん
「もし。森を行く赤ずきんよ」
赤ずきんさん
「この赤ずきんさんに、ご用ですか?」
狼さん
「そう。振り返るな。そのまま前を向いたままで聞いてほしい。なぜ全裸なのだ」
赤ずきんさん
「私が全裸? ご冗談を」
狼さん
「冗談でこんなこと言うものか!」
赤ずきんさん
「ちゃんと赤ずきんかぶってるじゃないですかぁ!」
狼さん
「頭以外隠せてねぇんだよ!」
赤ずきんさん
「はっはっは。これだから田舎者は」
狼さん
「お前も田舎者じゃねえか。って振り返るな!」
赤ずきんさん
「おや。誰かと思えば狼さんじゃあ、ありませんか。あなただって全裸でしょうに」
狼さん
「これはけーがーわ! 人間と一緒にすんじゃねえ!」
赤ずきんさん
「というか二足歩行の時点で狼のコスプレをした全裸の人間にしか見えませんが?」
狼さん
「お前何言ってるの? バカなの?」
赤ずきんさん
「私は正常ですよ」
狼さん
「どこがだよ!」
赤ずきんさん
「あなたにはこの前衛的ファッションが理解できないだけですよ」
狼さん
「前時代的の間違いだろ。筋肉をピクピク動かすな気持ち悪い!」
赤ずきんさん
「ところで、いったい何の用です? 私、これから病気のおばあさまのお見舞いに行かなきゃならないんですが」
狼さん
「全裸のムキムキマッチョがお見舞いに来たら、おばあちゃん昇天するとおもうんだけど」
赤ずきんさん
「ははっ。おばあちゃんも全裸ですから
狼さん
「ダメだこいつ。もういいから森から出てってくれ!」
赤ずきんさん
「はい?」
狼さん
「最近この森に全裸の変態が出るってことで人間が近寄らなくてな。餌が食べられないんだよ!」
赤ずきんさん
「餌って……豚とかですか?」
狼さん
「この会話の流れでなんで豚なんだよ! 人間だよ!」
赤ずきんさん
「私を食べるつもりなんですね!」
狼さん
「お前は食べなーい。おいしくなさそーう」
赤ずきんさん
「おや、見る目がありませんね。私、これでも熟れた食べごろの成人男性なんですが」
狼さん
「やめて。そういうのやめて」
赤ずきんさん
「はっはっは。隙あり!」
狼さん
「うぉ!? ナイフだと!?」
赤ずきんさん
「っち。外したか」
狼さん
「何しやがる!」
赤ずきんさん
「何って。人を襲う狼がいるっていうから退治しに来たんじゃありませんか」
狼さん
「全裸でか?」
赤ずきんさん
「全裸でです」
狼さん
「不意打ちに失敗したら、鎧とかないと危ないって思わないか?」
赤ずきんさん
「はっはっは。大丈夫です。問題ありませんから。出番ですよ!」
赤ずきんさんが腕を上げ、指を鳴らすと、森に銃声が響いた。
狼さん
「ぐはぁ!」
赤ずきんさん
「ぐはぁ!」
狼さんと赤ずきんさんの二人が倒れる。
茂みからガサガサと音を立てて、銃を持ったハンターたちと赤いずきんをかぶった女の子が出てきた。
赤ずきんちゃん
「ようやく変態二人を始末出来たわね」
女の子は肩に銃を担ぎ、ニヤリと笑うと、森を後にした。
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