プリ小説

第7話

6
授業が終わった後、僕の席にまた人がやって来た。

「――ねぇ」

僕は、先程開いたばかりの本を閉じてその人物を見た。

「なんだ」

いつも笑って話しかけてくる市川岬は、この時、深く俯いて黙っていた。

どうしたこいつ……調子狂うな。

「何かあったのか?今なら聞いてやるから、早く言え」

どうして僕は他人のために気を遣っているんだ……。


「……さっき、唯と話してたよね」

「は?……あぁ、そういえば来たな。鈴木唯だったか。それがどう――」

市川岬が顔を上げた瞬間、僕は言葉を失った。


市川岬に「悪意」のこもった目で睨みつけられたからだ。


「……っあたしの名前は、一回も呼んでくれたことないのに」

ボソボソと何かを喋ると、ハッと市川岬は息を呑んだ。

「ごめん……」

僕の横を通過して、市川岬は自身の席へと戻っていった。

僕は視線を手元の机に落とし、茫然とした。


――あいつに初めて「悪意」を向けられた。全身から滲み出る、黒い「悪意」を。

……だが、何故だ……?何故あいつはあんな苦しそうな表情をしていた?

それに……あの「悪意」は、奥底まで全てが真っ黒じゃなかった。

「…………」

密かな決意が、僕の胸に宿った。

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