プリ小説

第2話

世界がうまく回るってこと
私は、小さい頃から我慢をすれば、世界がうまく回るっていうことを知っていた。

だから、本音を隠して、うまく、人付き合いしていたんだ。
自分
…お小遣いが足りない。昨日絵里たちとあわせて、Gジャン買っちゃったからだ。
今は、絵里が好きなアイドルが出ている映画を見るために、海老名の、ある映画館で待ち合わせをしている。
しかし、12月は寒い。風がヒューヒュー吹いていて、体が凍りそうだ。遅れて、面倒くさいことにはなりたくないから早めに家を出て、こうして待っているのだ。
約束は、映画館が開く1時間前の、9時。もう少し遅く来れば良かった、絵里が来るであろう時間まで約25分もある。どこか違うお店に入って待っていようとしても、どこも空いていない。近くにカフェもない、コンビニもない。ただ、上着の袖を伸ばして体を縮こまらせるしかない。
LINEを開く。
自分
楽しみすぎて、早く来ちゃった😆
待ってるねー
えりりん
はっっっや!
えりりん
え、寒くない?
えりりん
まって、まだ服も着てない、ヤバイごめん
自分
全然!今は、風も吹いてないし、気温もぽかぽかしてるよー。あとからちょっと寒くなるらしいけど、その頃にはもう映画館だから大丈夫でしょー
えりりん
そう?
えりりん
よかったー
えりりん
じゃあ9時頃にはいくから、
えりりん
あなたはどこかで時間でも潰しておいてね!
自分
えりはやさしいなー、うんわかった!
ふうと息をはいて、電源をおとしてポケットにスマホを滑り込ませる。

危ないとこだった、早く来すぎだと、引かれたかもしれない。慌てさせてしまったかもしれない。あわてて嘘をついた。さっきよりも寒いのに。
時はたって、8:55。もう少しで来るかと思い、キョロキョロと辺りを見渡す。すると、ポケットがブブッとふるえた。
えりりん
ヤバイーー
えりりん
今日着ていこうと思ってたアクセサリーがない!
えりりん
全然見つからない!どうしよ!
自分
落ち着いて!私の事は気にしないで、探していいよー!
えりりん
マジでごめんね
えりりん
今日ね、リボンのチョーカーをつけてこうと思ったの
えりりん
見つからないっっ
自分
お、おつかれ笑
ビックリした。その驚きが、文面にも現れてしまった。まずい。まだ家なのが一番の驚きだ。それに、チョーカーがなくてはこれないのだろうか。探すなら、私とLINEをする前に探せばいいのに…。それをオブラートに包んで言ったつもりなのに、探す気がないのだろうか。
ダメだ。少しイラッときてしまった。ダメなのに。絵里がいなくなったら、クラスからおいてかれる。クラスで権力のある絵里についていけば、うまくいくのに。イラッとなんてしては、だめなのに。
またまた時はたった。9:13。絵里にもう一度連絡を取ってみる。
自分
えりー?笑
だいじょぶー?
すぐに返事は来なかった。絵里がお買い物をする時間がなくなる。慌てて、もう一度LINE。
自分
おーい、お買い物する時間なくなるよー?
えりりん
え、だからちょっと待ってってば、
えりりん
お買い物はすぐできるから。
えりりん
ちょっと待てる?あと30分くらいで行くから
自分
ごめん。えっと、今なにしてるの?
えりりん
髪巻いてまーす☆
自分
あー、いつもかわいいもんね笑
あり得ない。寒い、寒い、寒い。映画館は開いてない。もちろん他のお店も。それより、絵里、少しおこり気味だった気がする。文面だと顔が見えないから怖い。髪を巻いている?今までなにしていたんだろうか。
9:20
9:29
9:34
9:40
9:44。絵里が遠くから歩いてきた、と思ったらよく似た違う人。スマホが鳴いた。
えりりん
ごめん😜化粧中
えりりん
てへぺろっ
えりりん
もう少しでいく!
えりりん
映画、間に合わなかったら
えりりん
見ておいてね☆
自分
わかったよー!ゆっくりでいいからね
自分
もし私が映画見ちゃってたら、映画館の中央の大きな柱で待っててね!
バカらしい。と思ってしまう。悪気がないのは知ってる。だから私は我慢した。

また時はたち、9:50。映画は、10:10からだ。私は先に見ることに決めた。
ーーーーーーーーーー
映画は、本当に泣けた。絵里は、もともと私の影響でこの映画に出ているアイドルを好きになった。だから、私の方がファン歴長いのである。隠していたが。かっこよすぎて、さっき外で待っていた寒さは吹き飛び、心も暖かくなった。
私は急いで映画館の柱に向かった。絵里が…いない。半分泣きそうになりながらLINEを開く。
えりりん
りょっ✨
映画が始まる少し前に、絵里から返信が来ていた。なのに…
自分
えりー?笑
えりりん
おー、終わった?
えりりん
今日これからどうする?
えりりん
あ、私予定入ったの午後。
えりりん
またいつか遊ぼ!本当ごめんねあなた!
自分
ははっ
自然と、乾いた笑いがこぼれた。そして、歩いて駅に向かう。
自分
また、絶対遊ぼうね!
えりりん
約束する!いつにするー?私が空いてるのはね
えりりん
えーっと、今わからないから、
えりりん
わかったら連絡するね♡
自分
うん!!
ほら。私が我慢すれば、世界はうまく回るもん。

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笑心
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