第23話

第22章
589
2020/11/22 08:32
太陽を連れてホールの中心へ向かう。
指揮者が指揮をふり、ヴァイオリンのしなやかな旋律が会場に響く。
それに合わせて俺たちも踊る。
「なぁ、ただのパーティーなのにダンスなんてしなくちゃいけないんだか……」
俺はついため息をついてしまう。
「交流のためにやってるんじゃないか?
いい人を見つけたらここで踊って親交を深める!…みたいな」
「まぁ一理あるかもな」
そこから俺らの会話は途切れて、また音楽しか聞こえない空間になる。
「太陽…さっきは……ありがとな」
「…別にお礼を言われることはやってない
それに俺の一家を侮辱されたって感じたから少し言ってやっただけだ」
「そうか…それでも、ありがとう」
太陽はあぁやっていうけれど、本当は照れて笑っていて、それにあいつが助けてくれたのは太陽の一家について触れる前だった。
明らかに太陽の言っていることは矛盾している。まぁでも、助けてもらったのは事実だから俺はなにも言わないことにした。
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「はぁはぁ……っはぁ…」
「おい、太陽?どうしたんだ?」
踊り終わった後、太陽は尋常じゃないくらい疲れきっていた。
「はっ……少し…待ってくれ、そしたら多分大丈夫だ……」
太陽はそういうけれど…。やはり心配だ。
「待ってろ、今悠哉に迎えを頼むからな」
俺は急いで悠哉を呼びに行こうとする。
けれどドレスの裾を太陽に掴まれてしまい、立ち止まる。
「ちょつ、なにやっているんだ。
早くいいに行きたいんだが……?」
「ここに……いろ。1人にするな」
太陽はしゃがみ込み、俺と顔を合わせない。
だが声が震えていた。
「……わかった。ここにいるから電話で呼ばせてくれ。いいな?」
太陽はコクリとうなずく。
それから、すぐに悠哉を呼び車を出口まで動かしてもらい、俺と太陽は乗り込む。




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