第24話

22話
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2021/10/14 11:00
鈴野 悠叶
とにかく、なにもすんなよ
鈴野 悠叶
見て見ぬふり。 茜にできるのはそれだけ
黙ってしまった茜との通話をじゃあなと言って一方的に切り、スマホの電源を落とした。

静まり返った部屋で、どこにもぶつけられない感情を吐き出したため息が耳に残る。

“話したいことがある”なんて含みを持った言い回しに何かあるとは思っていた。
悪い予感はあたるもので、こうじゃなければいい なんて淡い期待はいつだって意味の無いものだった。
ため息は幸せを逃がすというが本当にそうなら俺の幸せはとっくに空だろう。

愛花のことも、想空のことも、事の経緯も、全部知っているが茜には何も教えなかった。

さっき想空が入ってきた時にできれば話さないでと言われたし、当事者じゃない俺が勝手に話すようなことでもないと思う。
想空が嫌がるようなことはしたくない。あいつはもうこれ以上傷つかなくていい。

俺ができるのは想空にそういう場面を見せないように連れ出すこと、それと想空の些細な願いを聞いてあげることだけ。

愛花は周りの目を気にしないし、歩夢も美鈴も言われるがまま。当の和泉だってあの調子だから止める奴は誰もいない。ここ最近これが毎日続いてる。
今日だって昼休みは想空を連れ出してわざわざ空き教室で弁当食べたし、放課後も明日は自分の家に帰らせろという愛花に、俺と出かけるから無理だと言っておいた。

それに、この間は音羽と話しているのがバレて怒られたって落ち込んでた。
その前は席替えで和泉と隣のクジ引いたのに愛花に言われて離されてた。想空は仕方ないとか言ってたけど、その日は1日ぼーっとしてた。

どんなに愛花に振り回されても想空は愛花のこと恩人だと言って離れないし、愛花の想空への執着は並のものじゃないから離れられない。

どうにかしてあげたいけど、本人が望んでないからどうにも出来ない。
茜にもどうせ何もできない。余計なことはしなくていい。

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