3人が出て行って少しの沈黙がながれ、ふと我に返る。
目の前で起こったことに動揺していないわけじゃないけど怪我はないみたいでとりあえず良かった。
そう言って乱れた髪を手で梳いて、耳にかけた。
こんなのおかしいのに、当たり前みたいに言うから不思議でたまらない。
軽く首を振ると、美鈴が手放して行ったスマホを手に取り、
電源切っといて良かった 、と笑った。
冷たくも真剣な瞳に捕まった。
鞄を持ち、教室を去っていく姿をただ眺めて1人、取り残された私。
なんで愛花はあんなことしてたの?
歩夢も美鈴も止めようとしなかった。
音羽も、自分が望んでるって何?
何もかもが分からない。
夕焼けに染っていた空は紫色になっていた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!