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音羽が制服のスカートをギュッと握る。
ぶつける先のない怒りがそこに溜まっていた。
話を続けようとしたところで、声をかけられる。
見たことのない女の子…他クラスだろうか
そう言って立ち上がり、走っていった。
音羽がいなくなって空いた1人分の幅が気まずく、流れる沈黙。
呟くように、悠叶がそれを破った。
ぽつり、ぽつりと悠叶が話し始める。
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まるで血の繋がった家族かと錯覚するような距離感で生活をおくり、母親もまるで想空が自分の息子かのように接していた。
だから想空に彼女が出来たと話すと、とても喜んでいた。
今日も音羽とデートだと話したらそれはもうニヤニヤと、質問攻めが始まる。
夕食をとっていてもその話題しか出てこず、終いには箸を置いて俺のスマホに手を伸ばす。
パスワードが分からず開かれない端末を“開けて”と向けてくるが勿論、開けてなんかやらない。
取り返して、テーブルに置いた。
喋りだしたら止まらない口を面倒に思いつつ、軽く流していると、電話がかかってきた。
何かしら要望を叶えないと収まらない好奇心。
応答の文字をタップし、渋々スピーカーにした。
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『どうした?』
『悠叶! いま、あの、想空がっ』
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何かあったことは音羽の声や慌てようからすぐにわかった。
自分が向かわなければいけないということも。
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『いま行くから位置情報送っといて』
『うんっ、』
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先程までふざけていたのが嘘みたいに、心配そうな顔が向けられる。
大丈夫かなんて俺も聞きたい。
通話は繋げたまま、準備も早々に位置情報を確認して家を出た。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。