第36話

34話
331
2022/10/10 15:11
 和泉 音羽
弟って… ずっと会ってないんじゃないの?
渡瀬理久
俺が2歳か3歳の頃までは一緒に暮らしてたって聞いてるけど
渡瀬理久
ちゃんと会うのは初めてかもね
へらへらと貼り付けたような笑顔でそう言った。
渡瀬理久
想空くんさ、朝比奈さんからうちに 定期的に写真と手紙送られてきてるの知ってる?
驚きのあまり固まってしまっていた想空は小さく首を振る。

顔は俯いてしまっていて、今すぐにでもこの場から離してあげたい。
 和泉 音羽
そら 、もう行こ
想空の腕を掴んでその場を後にしようとした所を低い声で遮られる。
渡瀬理久
待ちなよ
渡瀬理久
というか、誰? もしかして想空くんの彼女?
さっきまでの笑みは消えていて、冷たい目が私を見つめる。

1歩、ゆっくりと距離を詰められる。
 和泉 音羽
だったら何?
値踏みするような目が不快で睨みつけた。
渡瀬理久
ふぅん
渡瀬 想空
まっ、て …この子は関係ない、から
間に入って、震える手が私と彼を引き離す。

今にも泣き出してしまいそうな、詰まった声で。
渡瀬理久
うん、俺もこの子には興味ない
その言葉通り、それからは私に見向きもしなかった。
渡瀬理久
それより、父さんが想空くんがうちに戻ってきて欲しいって思ってるって話 朝比奈さんから聞いてる?
渡瀬 想空
嘘だ
渡瀬理久
嘘じゃないよ~
渡瀬理久
ほら、あの人ってお金欲しくてそらくんのこと朝比奈さんに売ったんでしょ?
渡瀬理久
それなのに思いのほか綺麗な顔に成長しちゃったから、朝比奈さんからお金もらうよりも
渡瀬理久
想空くんのこと、金持ちの変態に売った方が収入が増えるんじゃないかって
渡瀬 想空
……っ!?

信じ難い言葉と息を飲む音が聞こえた。

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