第8話

7話
1,406
2020/09/19 12:00
それから数時間授業を受け、掃除をし今は放課後。

教室に残るのは愛花、歩夢、優羽、悠叶、想空、私の6人だ。


職員室で先生と少し話をして、荷物を取りに教室に戻ると、5人がまだ残っていた。


「じゃあね」と言って帰ろうとしたところで愛花に声をかけられた。
朝比奈 愛花
茜の家ってどの辺?
葉山 茜
ここから歩いて20分くらいの住宅街、わかるかな?
月河 美鈴
悠叶もそっち方面じゃなかったっけ?
鈴野 悠叶
じゃあ一緒に帰ろうか
葉山 茜
そうさせてもらおうかな
こくり、と頷く。

1人寂しく帰る予定だったから誘ってもらえてよかった。

今日初めて会ったばかりだし、会話が続くか心配だけど、悠叶ならきっと大丈夫だろう。
渡瀬 想空
ほら、アユはもう5人も待たせてるんだよ?
伊崎 歩夢
急いでるってば
渡瀬 想空
急いでるならなんでそんな遅いの?
伊崎 歩夢
そんなのわかんないし…
渡瀬 想空
これもう要らないでしょ?捨ててきて
伊崎 歩夢
もー、めんどくさい!

愛花の席の前にある歩夢の席で、何かごちゃごちゃやっている2人が目に入る。
朝比奈 愛花
ちょっと遅くても大丈夫?
朝比奈 愛花
歩夢が帰る準備してなくて……もうすぐ終わると思うんだけど
葉山 茜
全然大丈夫
朝比奈 愛花
よかった
自分の席に座っている優羽と悠叶、想空の席に座る愛花、その隣が空いていたので椅子を取り腰を下ろした。


見た感じ長くなりそうだし。


机の上に積まれた教科書とプリントは今にも崩れ落ちそうで、窓枠のところにも歩夢のものと思われるペンや本がいくつも置いてある。

机の横には何が入っているのか、大きめのトートバッグ。教室後方にあるロッカーは物が溢れだしている。



その様子を見ていると愛花に声をかけられた。


朝比奈 愛花
茜、連絡先 交換しない?
葉山 茜
したい!
月河 美鈴
私もしたーい
鈴野 悠叶
んじゃ、俺も
鞄スマホを取り出しメッセージアプリをひらいた。


差し出されたQRコードを読みとる。




【新しい友達 3人】



その文字が画面に出てくる。
伊崎 歩夢
あー!ずるい!アユも!
何冊もの教科書を抱え、ロッカーに向かう途中の歩夢がこちらを見てそう言った。
月河 美鈴
歩夢は早くやっちゃいな
月河 美鈴
後で送ってあげるから
伊崎 歩夢
はぁい
葉山 茜
想空も、良ければ交換しない?
渡瀬 想空
僕 ?



歩夢の机の中から、くしゃくしゃになったプリントを引っ張り出していた想空。

声をかけると驚いた表情をする。

できればみんなと交換したい。

まだ他の人より会話をしていない想空とは特に。
葉山 茜
だめ、かな…?
渡瀬 想空
いや…えっと
問いかけるが彼の反応は曖昧で、どちらかといえばしたくない...のかな?
葉山 茜
嫌なら大丈夫!
葉山 茜
無理にとは言わないし
まあ、なんていうか、仕方ないって言ったら仕方ない。

朝だってなんか素っ気なかったから、もしかしたら私のこと苦手なのかもしれないし。
渡瀬 想空
…ちがくて

そういって視線を泳がせた後、愛花の方を見る想空。

それを見て愛花が微笑み、こくりと頷いた。

すると、ポケットからスマホを取りだし、QRコードの映る液晶をこちらに向けてきた。

恐る恐る読み取ると

【新しい友達1人】

と画面にうつる。
葉山 茜
ありがとう
歩み寄れた気がしてなんだか嬉しくて笑顔で言うと、照れたような表情で、別にと返された。

取り敢えず、嫌われてはいないってことでいいのかな。

プリ小説オーディオドラマ