私立誠王高等学校。
私、葉山 茜は高校2年生の秋からここに通うことになった。
建物は大きく内装も綺麗で、学習環境も充実している、県内でも有名な高校。
また、自由な校風も相まって毎年多くの学生が、入学を希望するという。
学校自体はとても良い所だということは充分理解してるけど、転校するとなると話は別。
理由はお父さんの仕事の都合。逆らえないけど、やっぱり納得がいかない。
前の学校の友だちと離れたくなかったのは勿論だけど、それよりも問題なのがここは3年間クラス替えがないこと。
どうせ1年生の時点で大体のグループは決まっているだろうし、そこに馴染める自信なんてない。
だからといって教室で孤立なんて言うのも絶対に嫌。
新しい環境での生活が不安すぎて、昨日から胃の痛みは治まらなかった。
でも、初日から遅刻ましてや欠席なんて出来るわけなくて、いつもより早く起きた今日の朝。
先日届いた真新しい制服を身に纏って登校し、真っ先に職員室に向かった。
隣を歩くのは私が入ることになった2年4組の担任、舞原先生。
先生も気を使って言ってくれているんだろうけど、そんなのなんの慰めにもならない。
友達が出来るかどうかは、高校生活の中で最も重要と言っても過言ではない。
今日からの数日間、言ってしまえば今日この日に、私の1年と少しの高校生活がかかっているのだ。
胸に手を当てそう呟いた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。