第13話

12話
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2020/12/24 12:00
舞原 美琴
終わった人から提出して、帰っていいよ
舞原先生のその声で大半の生徒が退室してから何分たったっけ。

教室にいるのは私ともう1人。

でも、シャーペン片付けてる音がするし、その子も もう出ていってしまうだろう。

かく言う私の答案は3分の1しかうまっていない。

そう、昼休みに2、3問解けたところで答案が全て埋まるはずがないのだ。

そんな急に頭が良くなるわけでもなければ、スラスラ解けるようになる訳でもない。
舞原 美琴
葉山~、後どのくらいかかりそう?
葉山 茜
も、もうすぐ終わります
これ以上 埋められないテストに先生を付き合わせるのも気が引ける。

教えてくれた美鈴や想空には申し訳ないけど諦めることにしよう。

むしろここまで解けたのが奇跡なんだから。
先生に答案を提出して、退室し、誰もいない静かな廊下を歩く。

結局 解けたのは1番最初の簡単な問題と昼にやった問題。

あと、最後の記述問題……はズルだけど







__昼休み
朝比奈 愛花
はい、想空 だしておいで
渡瀬 想空
ん、ありがとう
渡瀬 想空
そうだ ……この問題





愛花から書類を受け取った想空は思い出したように、問題集を数ページめくり、記述問題を指さした。

あー、問題の意味すら理解出来なくて、諦めてたところ。

渡瀬 想空
これ、そのまま出るって言ってた
渡瀬 想空
解くの無理だったら覚えるだけでもした方が
葉山 茜
ほんと!?
葉山 茜
……なんで知ってるの?
渡瀬 想空
さっき聞いたら教えてくれた
伊崎 歩夢
あの人、想空ちゃんには甘いよねえ
伊崎 歩夢
贔屓ひいきだよ、ひ!い!き!
渡瀬 想空
そんなことない
渡瀬 想空
アユは授業居眠りしてるから嫌われてるだけ
伊崎 歩夢
数学つまんないんだもん、眠くなる
バンバン、と机を叩き、苛立ちを見せる歩夢に辛辣な言葉をぶつける想空。

初めこそオドオドした控えめな子だと思ってたけど以外に正直なんだと感心してしまう。


というか、テストって聞いたら教えてもらえるものだっけ?

甘いとか贔屓とかの範疇越えてる気が……
葉山 茜
えっとー……わざわざ聞いてくれたの?
渡瀬 想空
うん、課題も補習も大変らしいし
渡瀬 想空
最近昼休みずっと勉強してたから
渡瀬 想空
あと、これとこれと…
葉山 茜
あ!待って、教えて貰えるの有難いんだけど…
葉山 茜
その、どうせなら自分の力で頑張りたいっていうか……なんていうか












葉山 茜
はぁ、こんなことなら問題 全部教えてもらえばよかったな~

明日には課題を渡され、放課後の予定が補習で埋まるんだ……

ため息をつき、重い足取りで教室に向かう。

荷物取りに行かなきゃ。

……あれ、電気ついてる。まだ誰か残ってるんだ。



教室を覗けば窓側の席に愛花、歩夢、美鈴の姿があった。



何してるの、と声をかけようとしたがそれはできなかった。




見えた光景が信じがたいものだったから

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